周易上經


 乾下乾上 乾

乾、元亨。利貞。
【読み】
乾は、元[おお]いに亨[とお]る。貞[ただ]しきに利[よ]ろし。

初九、潜龍勿用。
九二、見龍在田。利見大人。
九三、君子終日乾乾、夕惕若。厲无咎。
九四、或躍在淵。无咎。
九五、飛龍在天。利見大人。
上九、亢龍有悔。
用九、見羣龍无首。吉。
【読み】
初九は、潜龍用うること勿かれ。
九二は、見龍田に在り。大人を見るに利ろし。
九三は、君子終日乾乾し、夕べに惕若たり。厲[あや]うけれども咎无[な]し。
九四は、或は躍りて淵に在り。咎无し。
九五は、飛龍天に在り。大人を見るに利ろし。
上九は、亢龍悔有り。
用九は、羣龍首无きを見る。吉なり。

〔彖傳〕大哉乾元、萬物資始。乃統天。雲行雨施、品物流形。大明終始、六位時成。時乘六龍以御天。乾道變化、各正性命、保合太和、乃利貞。首出庶物、萬國咸寧。
【読み】
〔彖傳〕大いなるかな乾元、萬物資りて始む。乃ち天を統ぶ。雲行き雨施し、品物形を流[し]く。大いに終始を明らかにし、六位時に成る。時に六龍に乘りて以て天を御す。乾道變化し、各々性命を正しくし、太和を保合するは、乃ち利貞なり。庶物に首出して、萬國咸[ことごと]く寧し。

〔象傳〕天行健。君子以自彊不息。
【読み】
〔象傳〕天行は乾なり。君子以て自ら彊めて息まず。

潛龍勿用、陽在下也。
見龍在田、德施普也。
終日乾乾、反復道也。
或躍在淵、進无咎也。
飛龍在天、大人造也。
亢龍有悔、盈不可久也。
用九、天德不可爲首也。
【読み】
潛龍用うること勿かれとは、陽下に在ればなり。
見龍田に在りとは、德の施し普[あまね]きなり。
終日乾乾すとは、道を反復するなり。
或は躍りて淵に在りとは、進むも咎无きなり。
飛龍天に在りとは、大人の造[しわざ]なるなり。
亢龍悔有りとは、盈つれば久しかる可からざるなり。
用九は、天德首爲る可からざるなり。

〔文言傳〕元者善之長也。亨者嘉之會也。利者義之和也。貞者事之幹也。君子體仁足以長人、嘉會足以合禮、利物足以和義、貞固足以幹事。君子行此四德者。故曰、乾元亨利貞。(第一節)
【読み】
〔文言傳〕元は善の長なり。亨は嘉の會なり。利は義の和なり。貞は事の幹なり。君子は仁を體すれば以て人に長たるに足り、會を嘉すれば以て禮に合するに足り、物を利すれば以て義を和するに足り、貞固なれば以て事に幹たるに足る。君子は此の四德を行う者なり。故に曰く、乾は元亨利貞、と。(第一節)

初九曰、潛龍勿用、何謂也。子曰、龍德而隱者也。不易乎世、不成乎名、遯世无悶、不見是而无悶。樂則行之、憂則違之。確乎其不可拔、潛龍也。
九二曰、見龍在田、利見大人、何謂也。子曰、龍德而正中者也。庸言之信、庸行之謹、閑邪存其誠、善世而不伐、德博而化。易曰、見龍在田、利見大人、君德也。
九三曰、君子終日乾乾、夕惕若、厲无咎、何謂也。子曰、君子進德脩業。忠信所以進德也。脩辭立其誠、所以居業也。知至至之、可與幾也。知終終之、可與存義也。是故居上位而不驕、在下位而不憂。故乾乾。因其時而惕。雖危无咎矣。
九四曰、或躍在淵、无咎、何謂也。子曰、上下无常、非爲邪也。進退无恆、非離羣也。君子進德脩業、欲及時也。故无咎。
九五曰、飛龍在天、利見大人、何謂也。子曰、同聲相應、同氣相求。水流濕、火就燥。雲從龍、風從虎、聖人作而萬物覩。本乎天者親上、本乎地者親下。則各從其類也。
上九曰、亢龍有悔、何謂也。子曰、貴而无位、高而无民、賢人在下位而无輔。是以動而有悔也。(第二節)
【読み】
初九に曰く、潛龍用うること勿かれとは、何の謂ぞや。子曰く、龍德ありて隱れたる者なり。世に易えず、名を成さず、世を遯れて悶うること无く、是とせられずして悶うること无し。樂しめば則ち之を行い、憂うれば則ち之を違[さ]る。確乎として其れ拔く可からざるは、潛龍なり。
九二に曰く、見龍田に在り、大人を見るに利ろしとは、何の謂ぞや。子曰く、龍德ありて正中ある者なり。庸言之れ信[まこと]にし、庸行之れ謹み、邪を閑[ふせ]ぎて其の誠を存し、世に善くして伐[ほこ]らず、德博くして化す。易に曰く、見龍田に在り、大人を見るに利ろしとは、君德あるなり。
九三に曰く、君子終日乾乾し、夕べに惕若たり、厲うけれども咎无しとは、何の謂ぞや。子曰く、君子は德に進み業を脩む。忠信は德に進む所以なり。辭を脩め其の誠を立つるは、業に居る所以なり。至るを知りて之に至る、與に幾をいう可きなり。終わるを知りて之を終える、與に義を存す可きなり。是の故に上位に居りて驕らず、下位に在りて憂えず。故に乾乾す。其の時に因りて惕る。危うしと雖も咎无きなり。
九四に曰く、或は躍りて淵に在り、咎无しとは、何の謂ぞや。子曰く、上下すること常无きも、邪を爲すには非ざるなり。進退すること恆无きも、羣を離るるには非ざるなり。君子德に進み業を脩むるは、時に及ばんことを欲するなり。故に咎无し。
九五に曰く、飛龍天に在り、大人を見るに利ろしとは、何の謂ぞや。子曰く、同聲相應じ、同氣相求む。水は濕[うるお]えるに流れ、火は燥[かわ]けるに就く。雲は龍に從い、風は虎に從う、聖人作りて萬物覩る。天に本づく者は上に親しみ、地に本づく者は下に親しむ。則ち各々其の類に從うなり。
上九に曰く、亢龍悔有りとは、何の謂ぞや。子曰く、貴くして位无く、高くして民无く、賢人下位に在るも輔くる无し。是を以て動きて悔有るなり。(第二節)

潛龍勿用、下也。見龍在田、時舍也。終日乾乾、行事也。或躍在淵、自試也。飛龍在天、上治也。亢龍有悔、窮之災也。乾元用九、天下治也。(第三節)
【読み】
潛龍用うること勿かれとは、下なればなり。見龍田に在りとは、時舍[す]つるなり。終日乾乾すとは、事を行うなり。或は躍りて淵に在りとは、自ら試みるなり。飛龍天に在りとは、上にして治むるなり。亢龍悔有りとは、窮まるの災いあるなり。乾元の用九は、天下治まるなり。(第三節)

潛龍勿用、陽氣潛藏。見龍在田、天下文明。終日乾乾、與時偕行。或躍在淵、乾道乃革。飛龍在天、乃位乎天德。亢龍有悔、與時偕極。乾元用九、乃見天則。(第四節)
【読み】
潛龍用うること勿かれとは、陽氣潛藏すればなり。見龍田に在りとは、天下文明なるなり。終日乾乾すとは、時と偕に行うなり。或は躍りて淵に在りとは、乾道乃ち革まるなり。飛龍天に在りとは、乃ち天德に位するなり。亢龍悔有りとは、時と偕に極まるなり。乾元の用九は、乃ち天の則を見[しめ]すなり。(第四節)

乾元者、始而亨者也。利貞者、性情也。乾始能以美利利天下、不言所利、大矣哉。大哉乾乎、剛健中正、純粹精也。六爻發揮、旁通情也。時乘六龍、以御天也。雲行雨施、天下平也。(第五節)
【読み】
乾元は、始めにして亨る者なり。利貞は、性情なり。乾始めは能く美利を以て天下を利し、利する所を言わず、大なるかな。大なるかな乾や、剛健中正、純粹にして精なり。六爻發揮して、旁く情を通ずるなり。時に六龍に乘じて、以て天を御するなり。雲行きて雨施して、天下平かなるなり。(第五節)

君子以成德爲行、日可見之行也。潛之爲言也、隱而未見、行而未成。是以君子弗用也。
君子學以聚之、問以辨之、寬以居之、仁以行之。易曰、見龍在田、利見大人、君德也。
九三、重剛而不中。上不在天、下不在田。故乾乾。因其時而惕。雖危无咎矣。
九四、重剛而不中。上不在天、下不在田、中不在人。故或之。或之者、疑之也。故无咎。
夫大人者、與天地合其德、與日月合其明、與四時合其序、與鬼神合其吉凶。先天而天弗違、後天而奉天時。天且弗違、而況於人乎、況於鬼神乎。
亢之爲言也、知進而不知退、知存而不知亡。知得而不知喪。其唯聖人乎。知進退存亡、而不失其正者、其唯聖人乎。(第六節)
【読み】
君子は成德を以て行いを爲し、日々に之を行いに見[あらわ]す可きなり。潛の言爲る、隱れて未だ見れず、行いて未だ成らざるなり。是を以て君子は用いざるなり。
君子は學以て之を聚め、問以て之を辨ち、寬以て之に居り、仁以て之を行う。易に曰く、見龍田に在り、大人を見るに利ろしとは、君德あるなり。
九三は、重剛にして中ならず。上は天に在らず、下は田に在らず。故に乾乾す。其の時に因りて惕る。危うしと雖も咎无きなり。
九四は、重剛にして中ならず。上は天に在らず、下は田に在らず、中は人に在らず。故に之を或[わく]す。之を或すとは、之を疑うなり。故に咎无し。
夫れ大人は、天地と其の德を合わせ、日月と其の明を合わせ、四時と其の序を合わせ、鬼神と其の吉凶を合わす。天に先だちて天に違わず、天に後れて天の時を奉ず。天すら且つ違わず、而るを況や人に於てをや、況や鬼神に於てをや。
亢の言爲る、進むを知って退くを知らず、存するを知って亡ぶるを知らず。得るを知って喪うを知らず。其れ唯聖人か。進退存亡を知って、其の正を失わざる者は、其れ唯聖人か。(第六節)



 坤下坤上 坤

坤、元亨。利牝馬之貞。君子有攸往、先迷、後得。主利。西南得朋、東北喪朋。安貞吉。
【読み】
坤は、元いに亨る。牝馬の貞に利ろし。君子往く攸[ところ]有るに、先んずれば迷い、後るれば得。利を主とす。西南には朋を得、東北には朋を喪う。貞に安んずれば吉なり。

初六。履霜。堅冰至。
六二、直・方・大。不習无不利。
六三、含章可貞。或從王事、无成有終。
六四、括囊。无咎无譽。
六五、黄裳。元吉。
上六、龍戰于野。其血玄黄。
用六、利永貞。
【読み】
初六は、霜を履む。堅冰至る。
六二は、直・方・大なり。習わざれども利ろしからざること无し。
六三は、章[あや]を含みて貞にす可し。或は王事に從うも、成すこと无くして終わり有り。
六四は、囊を括る。咎も无く譽れも无し。
六五は、黄裳なり。元吉なり。
上六は、龍野に戰う。其の血玄黄なり。
用六は、永く貞しきに利ろし。

〔彖傳〕至哉坤元、萬物資生。乃順承天。坤厚載物、德合无疆。含弘光大、品物咸亨。牝馬地類、行地无疆。柔順利貞、君子攸行。先迷失道、後順得常。西南得朋、乃與類行。東北喪朋、乃終有慶。安貞之吉、應地无疆。
【読み】
〔彖傳〕至れるかな坤元、萬物資りて生ず。乃ち順いて天を承く。坤は厚くして物を載せ、德は无疆に合す。含弘光大にして、品物咸く亨る。牝馬は地の類、地を行くこと疆[かぎ]り无し。柔順利貞は、君子行う攸なり。先んずれば迷いて道を失い、後るれば順いて常を得。西南には朋を得とは、乃ち類と行えばなり。東北には朋を喪うとは、乃ち終に慶び有るなり。貞に安んずれば吉とは、地の疆り无きに應ずるなり。

〔象傳〕地勢、坤。君子以厚德載物。
【読み】
〔象傳〕地勢は、坤なり。君子以て德を厚くし物を載す。

履霜堅冰、陰始凝也。馴致其道、至堅冰也。
六二之動、直以方也。不習无不利、地道光也。
含章可貞、以時發也。或從王事、知光大也。
括囊无咎、愼不害也。
黄裳元吉、文在中也。
龍戰于野、其道竆也。
用六永貞、以大終也。
【読み】
霜を履みて堅冰とは、陰始めて凝るなり。其の道を馴致すれば、堅冰に至るなり。
六二の動は、直にして以て方なり。習わざれども利ろしからざること无しとは、地道光[おお]いなればなり。
章を含みて貞にす可しとは、時を以て發するなり。或は王事に從うとは、知光大なればなり。
囊を括るも咎无しとは、愼めば害あらざるなり。
黄裳元吉とは、文中に在ればなり。
龍野に戰うとは、其の道竆まるなり。
用六の永貞とは、大を以て終わるなり。

〔文言傳〕坤至柔而動也剛。至靜而德方。後得主而有常。含萬物而化光。坤道其順乎。承天而時行。
積善之家必有餘慶。積不善之家必有餘殃。臣弑其君、子弑其父、非一朝一夕之故。其所由來者漸矣。由辯之不早辯也。易曰、履霜堅冰至。蓋言順也。
直其正也、方其義也。君子敬以直内、義以方外。敬義立而德不孤。直・方・大、不習无不利、則不疑其所行也。
陰雖有美、含之以從王事、弗敢成也。地道也、妻道也、臣道也。地道無成、而代有終也。
天地變化、草木蕃、天地閉、賢人隱。易曰、括囊、无咎无譽。蓋言謹也。
君子黄中通理、正位居體。美在其中、而暢於四支、發於事業。美之至也。
陰疑於陽必戰。爲其嫌於无陽也、故稱龍焉。猶未離其類也、故稱血焉。夫玄黄者、天地之雜也。天玄而地黄。
【読み】
〔文言傳〕坤は至柔にして動くや剛なり。至靜にして德方なり。後るれば主を得て常有り。萬物を含んで化光[おお]いなり。坤道は其れ順なるか。天を承けて時に行う。
積善の家には必ず餘慶有り。積不善の家には必ず餘殃有り。臣にして其の君を弑し、子にして其の父を弑するは、一朝一夕の故に非ず。其の由って來る所の者は漸なり。之を辯じて早く辯ぜざるに由るなり。易に曰く、霜を履んで堅冰至る、と。蓋し順なるを言うなり。
直は其れ正なり、方は其れ義なり。君子は敬以て内を直くし、義以て外を方にす。敬義立てば德孤ならず。直・方・大なり、習わざれども利ろしからざること无しとは、則ち其の行う所を疑わざるなり。
陰は美有りと雖も、之を含んで以て王事に從い、敢えて成さざるなり。地の道なり、妻の道なり、臣の道なり。地の道は成すこと無くして、代わって終わり有るなり。
天地變化して、草木蕃[しげ]く、天地閉じて、賢人隱る。易に曰く、囊を括る、咎も无く譽れも无し、と。蓋し謹むべきを言うなり。
君子は黄中にして理に通じ、正位にして體に居る。美其の中に在りて、四支に暢び、事業に發す。美の至りなり。
陰の陽に疑わしきときは必ず戰う。其の陽无きに嫌[うたが]わしきが爲に、故に龍と稱す。猶未だ其の類を離れざる、故に血と稱す。夫れ玄黄は、天地の雜わりなり。天は玄にして地は黄なり。



 震下坎上 屯

屯、元亨。利貞。勿用有攸往。利建侯。
【読み】
屯[ちゅん]は、元いに亨る。貞しきに利ろし。往く攸有るに用うること勿かれ。侯[きみ]を建つるに利ろし。

初九、磐桓。利居貞。利建侯。
六二、屯如、邅如、乘馬班如。匪寇婚媾。女子貞不字、十年乃字。
六三、卽鹿无虞。惟入于林中。君子幾不如舍。往吝。
六四、乘馬班如。求婚媾。往吉无不利。
九五、屯其膏。小貞吉、大貞凶。
上六、乘馬班如。泣血漣如。
【読み】
初九は、磐桓たり。貞に居るに利ろし。侯を建つるに利ろし。
六二は、屯如たり、邅如[てんじょ]たり、馬に乘りて班如たり。寇[あだ]するに匪[あら]ず、婚媾[こんこう]せんとす。女子貞にして字せず、十年にして乃ち字す。
六三は、鹿に卽[つ]くに虞无し。惟林中に入る。君子は幾をみて舍[や]むるに如かず。往けば吝なり。
六四は、馬に乘りて班如たり。婚媾を求む。往けば吉にして利ろしからざること无し。
九五は、其の膏[めぐみ]を屯[とどこお]らす。小貞なれば吉、大貞なれば凶なり。
上六は、馬に乘りて班如たり。泣血漣如たり。

〔彖傳〕屯、剛柔始交而難生。動乎險中。大亨貞。雷雨之動滿盈。天造草昧、宜建侯而不寧。
【読み】
〔彖傳〕屯は、剛柔始めて交わりて難[なや]み生ず。險中に動く。大いに亨りて貞し。雷雨の動き滿ち盈つ。天造草昧、宜しく侯を建つべくしていまだ寧からず。

〔象傳〕雲雷、屯。君子以經綸。
【読み】
〔象傳〕雲雷は、屯なり。君子以て經綸す。

雖磐桓、志行正也。以貴下賤。大得民也。
六二之難、乘剛也。十年乃字、反常也。
卽鹿无虞、以從禽也。君子舍之、往吝、竆也。
求而往、明也。
屯其膏、施未光也。
泣血漣如、何可長也。
【読み】
磐桓たりと雖も、志は正しきを行うなり。貴を以て賤に下る。大いに民を得るなり。
六二の難みは、剛に乘ればなり。十年にして乃ち字すとは、常に反るなり。
鹿に卽くに虞无しとは、以て禽に從うなり。君子は之を舍む、往けば吝なりとは、竆すればなり。
求めて往くは、明らかなるなり。
其の膏を屯らすとは、施すこと未だ光いならざるなり。
泣血漣如たりとは、何ぞ長かる可けんやとなり。



 坎下艮上 蒙

蒙、亨。匪我求童蒙。童蒙求我。初筮告。再三瀆。瀆則不告。利貞。
【読み】
蒙は、亨る。我より童蒙に求むるに匪ず。童蒙より我に求む。初筮は告ぐ。再三すれば瀆[けが]る。瀆るれば則ち告げず。貞しきに利ろし。

初六、發蒙。利用刑人、用說桎梏。以往吝。
九二、包蒙、吉。納婦、吉。子克家。
六三、勿用取女。見金夫、不有躳。无攸利。
六四、困蒙。吝。
六五、童蒙。吉。
上九、擊蒙。不利爲寇。利禦寇。
【読み】
初六は、蒙を發[ひら]く。用[もっ]て人を刑し、用て桎梏を說[だっ]するに利ろし。以て往けば吝なり。
九二は、蒙を包[か]ぬ、吉なり。婦[つま]を納る、吉なり。子家を克[おさ]む。
六三は、用て女を取[めと]ること勿かれ。金夫を見れば、躳を有たず。利ろしき攸无し。
六四は、蒙に困[くる]しむ。吝なり。
六五は、童蒙なり。吉なり。
上九は、蒙を擊つ。寇を爲すに利ろしからず。寇を禦[ふせ]ぐに利ろし。

〔彖傳〕蒙、山下有險。險而止、蒙。蒙亨、以亨行時中也。匪我求童蒙、童蒙求我、志應也。初筮告、以剛中也。再三瀆、瀆則不告、瀆蒙也。蒙以養正、聖功也。
【読み】
〔彖傳〕蒙は、山下に險有り。險にして止まるは、蒙なり。蒙は亨るとは、亨るべきを以て時中を行えばなり。我より童蒙に求むるに匪ず、童蒙より我に求むとは、志應ずるなり。初筮は告ぐとは、剛中を以てなり。再三すれば瀆る、瀆るれば則ち告げずとは、蒙を瀆せばなり。蒙以て正を養うは、聖の功なり。

〔象傳〕山下出泉、蒙。君子以果行育德。
【読み】
〔象傳〕山下に出づる泉は、蒙なり。君子以て行を果たし德を育[やしな]う。

利用刑人、以正法也。
子克家、剛柔接也。
勿用取女、行不順也。
困蒙之吝、獨遠實也。
童蒙之吉、順以巽也。
利用禦寇、上下順也。
【読み】
用て人を刑するに利ろしとは、以て法を正すなり。
子家を克むとは、剛柔接わるなり。
用て女を取ること勿かれとは、行い順ならざればなり。
蒙に困しむの吝とは、獨り實に遠ければなり。
童蒙の吉とは、順にして以て巽なればなり。
用て寇を禦ぐに利ろしとは、上下順なればなり。



 乾下坎上 需

需、有孚。光亨。貞吉。利渉大川。
【読み】
需は、孚[まこと]有り。光[おお]いに亨る。貞しくして吉なり。大川を渉るに利ろし。

初九、需于郊。利用恆。无咎。
九二、需于沙。小有言、終吉。
九三、需于泥。致寇至。
六四、需于血。出自穴。
九五、需于酒食。貞吉。
上六、入于穴。有不速之客三人來。敬之終吉。
【読み】
初九は、郊に需[ま]つ。恆を用うるに利ろし。咎无し。
九二は、沙[すな]に需つ。小しく言有れど、終には吉なり。
九三は、泥に需つ。寇の至ることを致す。
六四は、血に需つ。穴より出づ。
九五は、酒食に需つ。貞しくして吉なり。
上六は、穴に入る。速[まね]かざるの客三人來ること有り。之を敬すれば終には吉なり。

〔彖傳〕需、須也。險在前也。剛健而不陷、其義不困竆矣。需、有孚、光亨、貞吉、位乎天位、以正中也。利渉大川、往有功也。
【読み】
〔彖傳〕需は、須[ま]つなり。險前に在るなり。剛健にして陷らず、其の義困竆せず。需は、孚有あり、光いに亨る、貞しくして吉とは、天位に位して、正中なるを以てなり。大川を渉るに利ろしとは、往きて功有るなり。

〔象傳〕雲上於天、需。君子以飮食宴樂。
【読み】
〔象傳〕雲の天に上るは、需なり。君子以て飮食宴樂す。

需于郊、不犯難行也。利用恆、无咎、未失常也。
需于沙、衍在中也。雖小有言、以吉終也。
需于泥、災在外也。自我致寇、敬愼不敗也。
需于血、順以聽也。
酒食貞吉、以中正也。
不速之客來、敬之終吉、雖不當位、未大失也。
【読み】
郊に需つとは、難を犯して行かざるなり。恆を用うるに利ろし、咎无しとは、未だ常を失わざるなり。
沙に需つとは、衍[ゆた]かにして中に在るなり。小しく言有りと雖も、吉を以て終わるなり。
泥に需つとは、災い外に在るなり。我より寇を致すとは、敬愼すれば敗れざるとなり。
血に需つとは、順にして以て聽[したが]うなり。
酒食の貞吉とは、中正なるを以てなり。
速かざるの客來る、之を敬すれば終には吉とは、位に當たらずと雖も、未だ大いに失わざるなり。



 坎下乾上 訟

訟、有孚窒。惕中吉、終凶。利見大人。不利渉大川。
【読み】
訟は、孚[まこと]有れども窒がる。惕れて中なれば吉、終われば凶なり。大人を見るに利ろし。大川を渉るに利ろしからず。

初六、不永所事。小有言、終吉。
九二、不克訟。歸而逋。其邑人三百戶、无眚。
六三、食舊德、貞。厲終吉。或從王事、无成。
九四、不克訟。復卽命、渝安貞吉。
九五、訟、元吉。
上九、或錫之鞶帶、終朝三褫之。
【読み】
初六は、事とする所を永くせず。小しく言有れども、終には吉なり。
九二は、訟えに克たず。歸りて逋[のが]る。其の邑人三百戶なれば、眚[わざわ]い无し。
六三は、舊德を食むこと貞し。厲うけれども終には吉なり。或は王事に從うとも、成すこと无し。
九四は、訟えに克たず。復りて命に卽き、渝[か]えて、貞しきに安んずれば吉なり。
九五は、訟え、元[おお]いに吉なり。
上九は、或は之に鞶帶を錫[たま]わるも、終朝に三たび之を褫[うば]わる。

〔彖傳〕訟、上剛下險。險而健、訟。訟、有孚窒、惕中吉、剛來而得中也。終凶、訟不可成也。利見大人、尙中正也。不利渉大川、入于淵也。
【読み】
〔彖傳〕訟は、上剛にして下險なり。險にして健なるは、訟なり。訟は、孚有りて窒がる、惕れて中なれば吉とは、剛來りて中を得ればなり。終われば凶とは、訟は成す可からざればなり。大人を見るに利ろしとは、中正を尙べばなり。大川を渉るに利ろしからずとは、淵に入ればなり。

〔象傳〕天與水違行、訟。君子以作事謀始。
【読み】
〔象傳〕天と水と違い行くは、訟なり。君子以て事を作すに始めを謀る。

不永所事、訟不可長也。雖小有言、其辯明也。
不克訟、歸逋竄也。自下訟上、患至掇也。
食舊德、從上吉也。
復卽命渝、安貞、不失也。
訟元吉、以中正也。
以訟受服、亦不足敬也。
【読み】
事とする所を永くせずとは、訟は長くす可からざればなり。小しく言有りと雖も、其の辯明らかなり。
訟えに克たず、歸りて逋れ竄[かく]るるなり。下より上を訟うるは、患え至ること掇[ひろ]うがごときなり。
舊德を食むとは、上に從えば吉なるなり。
復りて命に卽き、渝えて貞しきに安んずとは、失わざるなり。
訟え元いに吉とは、中正なるを以てなり。
訟を以て服を受くるは、亦敬するに足らざるなり。



 坎下坤上 師

師、貞。丈人吉无咎。
【読み】
師は、貞なり。丈人なれば吉にして咎无し。

初六、師出以律。否臧凶。
九二、在師中。吉无咎。王三錫命。
六三、師或輿尸。凶。
六四、師左次。无咎。
六五、田有禽。利執言。无咎。長子帥師。弟子輿尸。貞凶。
上六、大君有命。開國承家。小人勿用。
【読み】
初六は、師は出づるに律を以てす。臧[よ]からざれば凶なり。
九二は、師に在りて中す。吉にして咎无し。王三たび命を錫う。
六三は、師或は尸を輿[の]す。凶なり。
六四は、師左[しりぞ]き次[やど]る。咎无し。
六五は、田[かり]して禽有り。言を執るに利ろし。咎无し。長子は師を帥ゆ。弟子は尸を輿す。貞なるとも凶なり。
上六は、大君命有り。國を開き家を承く。小人は用うること勿かれ。

〔彖傳〕師、衆也。貞、正也。能以衆正、可以王矣。剛中而應、行險而順。以此毒天下、而民從之。吉又何咎矣。
【読み】
〔彖傳〕師は、衆なり。貞は、正なり。能く衆を以[ひき]いて正しければ、以て王たる可し。剛中にして應じ、險を行いて順なり。此を以て天下を毒[くる]しめて、而も民之に從う。吉にして又何の咎かあらん。

〔象傳〕地中有水、師。君子以容民畜衆。
【読み】
〔象傳〕地中に水有るは、師なり。君子以て民を容れ衆を畜[やしな]う。

師出以律、失律凶也。
在師中、吉、承天寵也。王三錫命、懷萬邦也。
師或輿尸、大无功也。
左次、无咎、未失常也。
長子帥師、以中行也。弟子輿尸、使不當也。
大君有命、以正功也。小人勿用、必亂邦也。
【読み】
師は出づるに律を以てすとは、律を失えば凶なるなり。
師に在りて中す、吉とは、天寵を承くるなり。王三たび命を錫うとは、萬邦を懷くるなり。
師或は尸を輿すとは、大いに功无きなり。
左き次る、咎无しとは、未だ常を失わざればなり。
長子は師を帥ゆとは、中行なるを以てなり。弟子は尸を輿すとは、使うこと當たらざるなり。
大君命有りとは、以て功を正すなり。小人は用うること勿かれとは、必ず邦を亂せばなり。



 坤下坎上 比

比、吉。原筮、元永貞、无咎。不寧方來。後夫凶。
【読み】
比は、吉なり。原筮し、元永貞なれば、咎无し。寧からざるも方に來る。後るる夫は凶なり。

初六、有孚比之。无咎。有孚盈缶。終來有它吉。
六二、比之自内。貞吉。
六三、比之匪人。
六四、外比之。貞吉。
九五、顯比。王用三驅失前禽。邑人不誡。吉。
上六、比之无首。凶。
【読み】
初六は、孚有りて之に比しむ。咎无し。孚有りて缶[ほとぎ]に盈つ。終に來りて它の吉有り。
六二は、之に比しむこと内よりす。貞しくして吉なり。
六三は、之に比しまんとすれど人に匪ず。
六四は、外之に比しむ。貞しくして吉なり。
九五は、比を顯らかにす。王用て三驅して前禽を失う。邑人誡めず。吉なり。
上六は、之に比しむに首无し。凶なり。

〔彖傳〕比、吉也。比、輔也。下順從也。原筮、元永貞、无咎、以剛中也。不寧方來、上下應也。後夫凶、其道竆也。
【読み】
〔彖傳〕比は、吉なり。比は、輔くるなり。下順從するなり。原筮して、元永貞なれば、咎无しとは、剛中なるを以てなり。寧からざるも方に來るとは、上下應ずればなり。後るる夫は凶とは、其の道竆まればなり。

〔象傳〕地上有水、比。先王以建萬國、親諸侯。
【読み】
〔象傳〕地上に水有るは、比なり。先王以て萬國を建て、諸侯を親しむ。

比之初六、有它吉也。
比之自内、不自失也。
比之匪人、不亦傷乎。
外比於賢、以從上也。
顯比之吉、位正中也。舍逆取順、失前禽也。邑人不誡、上使中也。
比之无首、无所終也。
【読み】
比の初六は、它有りて吉なるなり。
之に比しむこと内よりすとは、自ら失わざるなり。
之に比しまんとすれども人に匪ずとは、亦傷ましからずや。
外賢に比しむは、以て上に從うなり。
比しむべきを顯らかにするの吉とは、位正中なればなり。逆を舍て順を取るは、前禽を失うなり。邑人誡めずとは、上中ならしむるなり。
之に比しむに首无しとは、終わる所无きなり。



 乾下巽上 小畜

小畜、亨。密雲不雨。自我西郊。
【読み】
小畜は、亨る。密雲あれど雨ふらず。我が西郊よりす。

初九、復自道。何其咎。吉。
九二、牽復。吉。
九三、輿說輻。夫妻反目。
六四、有孚。血去惕出。无咎。
九五、有孚攣如。富以其鄰。
上九、旣雨旣處。尙德載。婦貞厲。月幾望。君子征凶。
【読み】
初九は、復ること道による。何ぞ其れ咎あらん。吉なり。
九二は、牽きて復る。吉なり。
九三は、輿[くるま]輻[とこしばり]を說[だっ]す。夫妻反目す。
六四は、孚有り。血[いた]み去り惕れ出づ。咎无し。
九五は、孚有りて攣如[れんじょ]たり。富みて其の鄰を以[ひき]いる。
上九は、旣に雨ふり旣に處る。德を尙びて載[み]つ。婦は貞なれど厲[あや]うし。月望に幾[ちか]し。君子征けば凶なり。

〔彖傳〕小畜、柔得位而上下應之、曰小畜。健而巽、剛中而志行。乃亨。密雲不雨、尙往也。自我西郊、施未行也。
【読み】
〔彖傳〕小畜は、柔位を得て上下之に應ずるを、小畜と曰う。健にして巽[したが]い、剛中にして志行わる。乃ち亨る。密雲あれど雨ふらずとは、尙往くなり。我が西郊よりすとは、施し未だ行われざるなり。

〔象傳〕風行天上、小畜。君子以懿文德。
【読み】
〔象傳〕風天上を行くは、小畜なり。君子以て文德を懿[よ]くす。

復自道、其義吉也。
牽復在中。亦不自失也。
夫妻反目、不能正室也。
有孚惕出、上合志也。
有孚攣如、不獨富也。
旣雨旣處、德積載也。君子征凶、有所疑也。
【読み】
復ること道によるとは、其の義吉なるなり。
牽きて復りて中に在り。亦自ら失わざるなり。
夫妻反目すとは、室を正すこと能わざるなり。
孚有りて惕れ出づとは、上志を合すればなり。
孚有りて攣如たりとは、獨り富めりとせざるなり。
旣に雨ふり旣に處るとは、德積みて載てるなり。君子征けば凶とは、疑わしき所有ればなり。



 兌下乾上 履

履虎尾、不咥人。亨。
【読み】
虎の尾を履むも、人を咥[くら]わず。亨る。

初九、素履。往无咎。
九二、履道坦坦。幽人貞吉。
六三、眇能視、跛能履。履虎尾、咥人凶。武人爲于大君。
九四、履虎尾。愬愬終吉。
九五、夬履。貞厲。
上九、視履考祥。其旋元吉。
【読み】
初九は、素履す。往くも咎无し。
九二は、道を履むこと坦坦たり。幽人貞しくして吉なり。
六三は、眇[すがめ]にして能く視るとし、跛[あしなえ]にして能く履むとす。虎の尾を履めば、人を咥いて凶なり。武人大君と爲る。
九四は、虎の尾を履む。愬愬[さくさく]たれば終には吉なり。
九五は、履むことを夬す。貞しけれども厲[あや]うし。
上九は、履むを視て祥を考う。其れ旋[めぐ]れば元いに吉なり。

〔彖傳〕履、柔履剛也。說而應乎乾。是以履虎尾不咥人、亨。剛中正、履帝位而不疚、光明也。
【読み】
〔彖傳〕履は、柔剛を履むなり。說[よろこ]びて乾に應ず。是を以て虎の尾を履むも人を咥わず、亨るなり。剛中正にして、帝位を履みて疚[やま]しからず、光明あるなり。

〔象傳〕上天下澤、履。君子以辯上下、定民志。
【読み】
〔象傳〕上天にして下澤なるは、履なり。君子以て上下を辯かち、民の志を定む。

素履之往、獨行願也。
幽人貞吉、中不自亂也。
眇能視、不足以有明也。跛能履、不足以與行也。咥人之凶、位不當也。武人爲于大君、志剛也。
愬愬終吉、志行也。
夬履、貞厲、位正當也。
元吉在上、大有慶也。
【読み】
素履の往くは、獨り願いを行うなり。
幽人は貞しくして吉とは、中自ら亂れざればなり。
眇にして能く視るとすとは、以て明有りとするに足らざるなり。跛にして能く履むとすとは、以て與に行くに足らざるなり。人を咥うの凶は、位當たらざればなり。武人大君と爲るとは、志のみ剛なるなり。
愬愬たれば終には吉とは、志行わるるなり。
履むことを夬す、貞しけれども厲うしとは、位正しく當たればなり。
元いに吉にして上に在るは、大いに慶び有るなり。



 乾下坤上 泰

泰、小往大來。吉亨。
【読み】
泰は、小往き大來る。吉にして亨る。

初九、拔茅茹。以其彙。征吉。
九二、包荒、用馮河、不遐遺、朋亡、得尙于中行。
九三、无平不陂、无往不復。艱貞无咎。勿恤其孚。于食有福。
六四、翩翩。不富以其鄰。不戒以孚。
六五、帝乙歸妹。以祉元吉。
上六、城復于隍。勿用師。自邑告命。貞吝。
【読み】
初九は、茅[ちがや]を拔くに茹たり。其の彙[たぐい]を以[ひき]いる。征けば吉なり。
九二は、荒を包[か]ね、河を馮[かちわた]るを用い、遐[とお]きを遺[わす]れず、朋亡ぶれば、中行に尙[かな]うことを得ん。
九三は、平かなるものにして陂[かたむ]かざること无く、往くものにして復らざるは无し。艱[くる]しみて貞しければ咎无し。其の孚を恤うること勿かれ。于[ここ]に有福を食まん。
六四は、翩翩たり。富めりとせずして其の鄰を以[ひき]いる。戒めずして以て孚あり。
六五は、帝乙妹を歸[とつ]がしむ。以て祉[さいわい]ありて元いに吉なり。
上六は、城隍[ほり]に復る。師を用うること勿かれ。邑より命を告げんのみ。貞なれども吝なり。

〔彖傳〕泰、小往大來、吉亨、則是天地交、而萬物通也。上下交、而其志同也。内陽而外陰。内健而外順。内君子而外小人。君子道長、小人道消也。
【読み】
〔彖傳〕泰は、小往き大來る、吉にして亨るとは、則ち是れ天地交わりて、萬物通ずるなり。上下交わりて、其の志同じきなり。内陽にして外陰なり。内健にして外順なり。内君子にして外小人なり。君子は道長じ、小人は道消するなり。

〔象傳〕天地交、泰。后以財成天地之道、輔相天地之宜、以左右民。
【読み】
〔象傳〕天地交わるは、泰なり。后以て天地の道を財成し、天地の宜を輔相し、以て民を左右す。

拔茅、征吉、志在外也。
包荒、得尙于中行、以光大也。
无往不復、天地際也。
翩翩、不富、皆失實也。不戒以孚、中心願也。
以祉元吉、中以行願也。
城復于隍、其命亂也。
【読み】
茅を拔く、征けば吉とは、志外に在ればなり。
荒を包ぬ、中行に尙うことを得んとは、光大なるを以てなり。
往くものにして復らざるは无しとは、天地の際[あいだ]なればなり。
翩翩たり、富めりとせずとは、皆實を失えばなり。戒めずして以て孚ありとは、中心より願えばなり。
以て祉ありて元いに吉とは、中以て願いを行えばなり。
城隍に復るとは、其の命亂るるなり。



 坤下乾上 否

否之匪人。不利君子貞。大往小來。
【読み】
否は之れ人に匪ず。君子の貞に利ろしからず。大往き小來る。

初六、拔茅茹。以其彙。貞吉亨。
六二、包承。小人吉。大人否亨。
六三、包羞。
九四、有命无咎。疇離祉。
九五、休否。大人吉。其亡其亡、繫于苞桑。
上九、傾否。先否後喜。
【読み】
初六は、茅を拔くに茹たり。其の彙[たぐい]を以[ひき]いる。貞なれば吉にして亨る。
六二は、包承す。小人は吉なり。大人は否にして亨る。
六三は、羞を包む。
九四は、命有れば咎无し。疇[とも]祉[さいわい]に離[つ]く。
九五は、否を休[や]む。大人は吉なり。其れ亡びなん其れ亡びなんとて、苞桑に繫る。
上九は、否を傾く。先には否[ふさ]がり後には喜ぶ。

〔彖傳〕否之匪人、不利君子貞、大往小來、則是天地不交、而萬物不通也。上下不交、而天下无邦也。内陰而外陽。内柔而外剛。内小人而外君子。小人道長、君子道消也。
【読み】
〔彖傳〕否は之れ人に匪ず、君子の貞に利ろしからず、大往き小來るとは、則ち是れ天地交わらずして、萬物通ぜざるなり。上下交わらずして、天下に邦无きなり。内陰にして外陽なり。内柔にして外剛なり。内小人にして外君子なり。小人は道長じ、君子は道消するなり。

〔象傳〕天地不交、否。君子以儉德辟難。不可榮以祿。
【読み】
〔象傳〕天地交わらざるは、否なり。君子以て德を儉[つづま]やかにして難を辟く。榮するに祿を以てす可からず。

拔茅、貞吉、志在君也。
大人否亨、不亂羣也。
包羞、位不當也。
有命无咎、志行也。
大人之吉、位正當也。
否終則傾。何可長也。
【読み】
茅を拔く、貞なれば吉とは、志君に在ればなり。
大人は否にして亨るとは、羣に亂されざるなり。
羞を包むとは、位當たらざればなり。
命有れば咎无しとは、志行わるるなり。
大人は吉とは、位正しく當たればなり。
否終われば則ち傾く。何ぞ長かる可けんや。



 離下乾上 同人

同人于野。亨。利渉大川。利君子貞。
【読み】
人と同じくするに野に于てす。亨る。大川を渉るに利ろし。君子の貞しきに利ろし。

初九、同人于門。无咎。
六二、同人于宗。吝。
九三、伏戎于莽。升其高陵。三歳不興。
九四、乘其墉。弗克攻。吉。
九五、同人先號咷而後笑。大師克相遇。
上九、同人于郊。无悔。
【読み】
初九は、人に同じくするに門に于てす。咎无し。
六二は、人に同じくするに宗に于てす。吝なり。
九三は、戎[つわもの]を莽[くさむら]に伏す。其の高陵に升る。三歳まで興らず。
九四は、其の墉[かき]に乘る。攻むること克[あた]わず。吉なり。
九五は、人に同じくするに先には號[な]き咷[さけ]び後には笑う。大師克ちて相遇う。
上九は、人と同じくするに郊に于てす。悔无し。

〔彖傳〕同人、柔得位、得中而應乎乾、曰同人。同人曰、同人于野、亨、利渉大川、乾行也。文明以健、中正而應、君子正也。唯君子爲能通天下之志。
【読み】
〔彖傳〕同人は、柔位を得、中を得て乾に應ずるを、同人と曰う。同人に曰く、人に同じくするに野に于てす、亨る、大川を渉るに利ろしとは、乾の行なり。文明にして以て健、中正にして應ずるは、君子の正なり。唯君子のみ能く天下の志を通ずと爲す。

〔象傳〕天與火、同人。君子以類族辨物。
【読み】
〔象傳〕天と火とは、同人なり。君子以て族を類し物を辨ず。

出門同人。又誰咎也。
同人于宗、吝道也。
伏戎于莽、敵剛也。三歳不興、安行也。
乘其墉、義弗克也。其吉、則困而反則也。
同人之先、以中直也。大師相遇、言相克也。
同人于郊、志未得也。
【読み】
門を出でて人と同じくす。又誰か咎めん。
人と同じくするに宗に于てするは、吝道なり。
戎を莽に伏すとは、剛に敵すればなり。三歳まで興らずとは、安んぞ行われんやとなり。
其の墉に乘るとは、義克[あた]わざるなり。其の吉とは、則ち困しみて則に反ればなり。
同人の先とは、中直なるを以てなり。大師相遇うとは、相克つことを言うなり。
人と同じくするに郊に于てすとは、志未だ得ざるなり。



 乾下離上 大有

大有、元亨。
【読み】
大有は、元いに亨る。

初九、无交害。匪咎。艱則无咎。
九二、大車以載。有攸往无咎。
九三、公用亨于天子。小人弗克。
九四、匪其彭。无咎。
六五、厥孚交如。威如、吉。
上九、自天祐之。吉无不利。
【読み】
初九は、害に交[わた]ること无し。咎に匪ず。艱[なや]めば則ち咎无し。
九二は、大車以て載す。往く攸有るも咎无し。
九三は、公用[もっ]て天子に亨せらる。小人は克[あた]わず。
九四は、其の彭[さか]んなるに匪ず。咎无し。
六五は、厥の孚交如たり。威如たれば、吉なり。
上九は、天より之を祐[たす]く。吉にして利ろしからざること无し。

〔彖傳〕大有、柔得尊位大中、而上下應之、曰大有。其德剛健而文明、應乎天而時行。是以元亨。
【読み】
大有は、柔尊位を得て大中にして、上下之に應ずるを、大有と曰う。其の德剛健にして文明、天に應じて時に行う。是を以て元いに亨るなり。

〔象傳〕火在天上、大有。君子以遏惡揚善、順天休命。
【読み】
〔象傳〕火天上に在るは、大有なり。君子以て惡を遏[とど]め善を揚げて、天の休[おお]いなる命に順う。

大有初九、无交害也。
大車以載、積中不敗也。
公用亨于天子。小人害也。
匪其彭、无咎、明辯晳也。
厥孚交如、信以發志也。威如之吉、易而无備也。
大有上吉、自天祐也。
【読み】
大有の初九は、害に交ること无きなり。
大車以て載すとは、中に積みて敗れざるなり。
公用て天子に亨せらる。小人は害あるなり。
其の彭なるに匪ず、咎无しとは、明辯にして晳[あき]らかなればなり。
厥の孚交如たりとは、信以て志を發するなり。威如の吉とは、易[あなど]りて備うること无ければなり。
大有の上の吉とは、天より祐くればなり。



 艮下坤上 謙

謙、亨。君子有終。
【読み】
謙は、亨る。君子終わり有り。

初六、謙謙君子。用渉大川。吉。
六二、鳴謙。貞吉。
九三、勞謙。君子有終吉。
六四、无不利。撝謙。
六五、不富以其鄰。利用侵伐。无不利。
上六、鳴謙。利用行師、征邑國。
【読み】
初六は、謙謙す君子。用[もっ]て大川を渉る。吉なり。
六二は、鳴謙す。貞しくして吉なり。
九三は、勞謙す。君子終わり有りて吉なり。
六四は、利ろしからざること无し。謙を撝[ふる]う。
六五は、富めりとせずして其の鄰を以[ひき]いる。用て侵伐するに利ろし。利ろしからざること无し。
上六は、鳴謙す。用て師[いくさ]を行[や]り、邑國を征するに利ろし。

〔彖傳〕謙、亨。天道下濟而光明。地道卑而上行。天道虧盈而益謙、地道變盈而流謙、鬼神害盈而福謙、人道惡盈而好謙。謙尊而光、卑而不可踰。君子之終也。
【読み】
〔彖傳〕謙は、亨る。天道は下濟して光明なり。地道は卑くして上行す。天道は盈を虧きて謙に益し、地道は盈を變じて謙に流し、鬼神は盈を害して謙に福し、人道は盈を惡みて謙を好む。謙は尊くして光り、卑くけれども踰ゆ可からず。君子の終わりなり。

〔象傳〕地中有山、謙。君子以裒多益寡、稱物平施。
【読み】
〔象傳〕地中に山有るは、謙なり。君子以て多を裒[へ]らし寡なきを益し、物を稱り施しを平かにす。

謙謙君子、卑以自牧也。
鳴謙、貞吉、中心得也。
勞謙君子、萬民服也。
无不利、撝謙、不違則也。
利用侵伐、征不服也。
鳴謙、志未得也。可用行師、征邑國也。
【読み】
謙謙す君子とは、卑くして以て自ら牧うなり。
鳴謙す、貞しくして吉なりとは、中心より得ればなり。
勞謙す君子とは、萬民服するなり。
利ろしからざること无し、謙を撝うとは、則に違わざるなり。
用[もっ]て侵伐するに利ろしとは、服せざるを征するなり。
鳴謙すとは、志未だ得ざるなり。用て師を行り邑國を征す可きのみなるなり。



 坤下震上 豫

豫、利建侯行師。
【読み】
豫は、侯[きみ]を建て師[いくさ]を行[や]るに利ろし。

初六、鳴豫。凶。
六二、介于石。不終日。貞吉。
六三、盱豫。悔。遲有悔。
九四、由豫。大有得。勿疑。朋盍簪。
六五、貞疾。恆不死。
上六、冥豫。成有渝、无咎。
【読み】
初六は、鳴豫す。凶なり。
六二は、介[かた]きこと石の于[ごと]し。日を終えず。貞しくして吉なり。
六三は、盱豫[くよ]す。悔ゆ。遲ければ悔い有り。
九四は、由豫す。大いに得ること有り。疑うこと勿かれ。朋の盍[あい]簪[あつ]まらん。
六五は、貞疾あり。恆しくして死せず。
上六は、冥豫す。成れるも渝[か]うること有れば、咎无し。

〔彖傳〕豫、剛應而志行。順以動、豫。豫順以動。故天地如之。而況建侯行師乎。天地以順動。故日月不過、而四時不忒。聖人以順動、則刑罰淸而民服。豫之時義、大矣哉。
【読み】
〔彖傳〕豫は、剛應じて志行わる。順以て動くは、豫なり。豫は順以て動く。故に天地も之の如し。而るを況や侯を建て師を行るをや。天地は順を以て動く。故に日月過たずして、四時忒[たが]わず。聖人順を以て動けば、則ち刑罰淸くして民服す。豫の時義、大いなるかな。

〔象傳〕雷出地奮、豫。先王以作樂崇德、殷薦之上帝、以配祖考。
【読み】
〔象傳〕雷の地を出でて奮うは、豫なり。先王以て樂を作り德を崇び、殷[さか]んに之を上帝に薦め、以て祖考を配す。

初六鳴豫、志竆凶也。
不終日、貞吉、以中正也。
盱豫有悔、位不當也。
由豫、大有得、志大行也。
六五貞疾、乘剛也。恆不死、中未亡也。
冥豫在上。何可長也。
【読み】
初六の鳴豫すとは、志竆まりて凶なるなり。
日を終えず、貞しくして吉とは、中正なるを以てなり。
盱豫の悔有るは、位當たらざればなり。
由豫す、大いに得ること有りとは、志大いに行わるるなり。
六五の貞疾は、剛に乘ればなり。恆しくして死せずとは、中未だ亡わざるなり。
冥豫して上に在り。何ぞ長かる可けんや。



 震下兌上 隨

隨、元亨。利貞。无咎。
【読み】
隨は、元いに亨る。貞しきに利ろし。咎无し。

初九、官有渝。貞吉。出門交有功。
六二、係小子、失丈夫。
六三、係丈夫、失小子。隨有求得。利居貞。
九四、隨有獲。貞凶。有孚在道、以明、何咎。
九五、孚于嘉。吉。
上六、拘係之、乃從維之。王用亨于西山。
【読み】
初九は、官渝[か]わること有り。貞しければ吉なり。門を出でて交われば功有り。
六二は、小子に係れば、丈夫を失う。
六三は、丈夫に係れば、小子を失う。隨いて求むること有れば得。貞に居るに利ろし。
九四は、隨いて獲ること有り。貞しけれども凶なり。孚有り道に在りて、以て明らかなれば、何の咎かあらん。
九五は、嘉に孚あり。吉なり。
上六は、之を拘[とど]め係[つな]ぎ、乃ち從いて之を維[つな]ぐ。王用[もっ]て西山に亨す。

〔彖傳〕隨、剛來而下柔。動而說、隨。大亨貞。无咎。而天下隨時。隨時之義、大矣哉。
【読み】
〔彖傳〕隨は、剛來りて柔に下る。動きて說ぶは、隨なり。大いに亨り貞し。咎无し。而して天下時[これ]に隨う。隨の時義、大いなるかな。

〔象傳〕澤中有雷、隨。君子以嚮晦入宴息。
【読み】
〔象傳〕澤中に雷有るは、隨なり。君子以て晦[ひのくれ]に嚮[む]かいて入りて宴息す。

官有渝、從正吉也。出門交有功、不失也。
係小子、弗兼與也。
係丈夫、志舍下也。
隨有獲、其義凶也。有孚在道、明功也。
孚于嘉、吉、位正中也。
拘係之、上竆也。
【読み】
官渝わること有りとは、正しきに從えば吉なるなり。門を出でて交われば功有りとは、失なわざるなり。
小子に係るとは、兼ねて與せられざるなり。
丈夫に係るとは、志下を舍つるなり。
隨いて獲ること有りとは、其の義凶なるなり。孚有り道に在りとは、明らかなるの功なり。
嘉に孚あり、吉とは、位正中なればなり。
之を拘め係ぐとは、上竆まるなり。



 巽下艮上 蠱

蠱、元亨。利渉大川。先甲三日、後甲三日。
【読み】
蠱は、元いに亨る。大川を渉るに利ろし。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日。

初六、幹父之蠱。有子、考无咎。厲終吉。
九二、幹母之蠱。不可貞。
九三、幹父之蠱。小有悔、无大咎。
六四、裕父之蠱。往見吝。
六五、幹父之蠱。用譽。
上九、不事王侯。高尙其事。
【読み】
初六は、父の蠱[やぶれ]を幹[ただ]す。子有り、考[なきちち]も咎无し。厲[あや]うけれども終には吉なり。
九二は、母の蠱を幹す。貞にす可からず。
九三は、父の蠱を幹す。小しく悔有れども、大いなる咎无し。
六四は、父の蠱に裕[ゆる]やかにす。往けば吝を見る。
六五は、父の蠱を幹す。用[もっ]て譽れあり。
上九は、王侯に事えず。其の事を高尙にす。

〔彖傳〕蠱、剛上而柔下。巽而止、蠱。蠱、元亨而天下治也。利渉大川、往有事也。先甲三日、後甲三日、終則有始、天行也。
【読み】
〔彖傳〕蠱は、剛上りて柔下る。巽[したが]いて止まるは、蠱なり。蠱は、元いに亨りて天下治まるなり。大川を渉るに利ろしとは、往きて事有るなり。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日とは、終われば則ち始め有り、天の行なるなり。

〔象傳〕山下有風、蠱。君子以振民育德。
【読み】
〔象傳〕山下に風有るは、蠱なり。君子以て民を振[すく]い德を育う。

幹父之蠱、意承考也。
幹母之蠱、得中道也。
幹父之蠱、終无咎也。
裕父之蠱、往未得也。
幹父、用譽、承以德也。
不事王侯、志可則也。
【読み】
父の蠱を幹すとは、意考に承くるなり。
母の蠱を幹すとは、中道を得るなり。
父の蠱を幹るとは、終に咎无きなり。
父の蠱に裕やかにすとは、往くも未だ得ざるなり。
父を幹す、用て譽れありとは、承くるに德を以てすればなり。
王侯に事えずとは、志則る可きなり。



 兌下坤上 臨

臨、元亨。利貞。至于八月有凶。
【読み】
臨は、元いに亨る。貞しきに利ろし。八月に至りて凶有り。

初九、咸臨。貞吉。
九二、咸臨。吉无不利。
六三、甘臨。无攸利。旣憂之、无咎。
六四、至臨。无咎。
六五、知臨。大君之宜。吉。
上六、敦臨。吉无咎。
【読み】
初九は、咸[あまね]く臨む。貞しくして吉なり。
九二は、咸く臨む。吉にして利ろしからざること无し。
六三は、甘んじて臨む。利ろしき攸无し。旣に之を憂えば、咎无し。
六四は、至りて臨む。咎无し。
六五は、知にして臨む。大君の宜しきなり。吉なり。
上六は、敦く臨む。吉にして咎无し。

〔彖傳〕臨、剛浸而長、說而順、剛中而應。大亨以正、天之道也。至于八月有凶、消不久也。
【読み】
〔彖傳〕臨は、剛浸[ようや]くにして長じ、說びて順い、剛中にして應ず。大いに亨りて以て正しきは、天の道なり。八月に至りて凶有りとは、消すること久しからざればなり。

〔象傳〕澤上有地、臨。君子以敎思无竆、容保民无疆。
【読み】
〔象傳〕澤上に地有るは、臨なり。君子以て敎思すること竆まり无く、民を容れ保んずること疆[かぎ]り无し。

咸臨、貞吉、志行正也。
咸臨、吉无不利、未順命也。
甘臨、位不當也。旣憂之、咎不長也。
至臨、无咎、位當也。
大君之宜、行中之謂也。
敦臨之吉、志在内也。
【読み】
咸じて臨む、貞しくして吉とは、志正しきを行えばなり。
咸じて臨む、吉にして利ろしからざること无しとは、未だ命に順わざればなり。
甘んじて臨むとは、位當たらざればなり。旣に之を憂えば、咎は長からざるなり。
至りて臨む、咎无しとは、位當たればなり。
大君の宜しきとは、中を行うの謂なり。
敦く臨むの吉とは、志内に在ればなり。



 坤下巽上 觀

觀、盥而不薦。有孚顒若。
【読み】
觀は、盥[てあら]いて薦めず。孚有りて顒若[ぎょうじゃく]たり。

初六、童觀。小人无咎。君子吝。
六二、闚觀。利女貞。
六三、觀我生進退。
六四、觀國之光。利用賓于王。
九五、觀我生。君子无咎。
上九、觀其生。君子无咎。
【読み】
初六は、童觀す。小人は咎无し。君子は吝なり。
六二は、闚い觀る。女の貞に利ろし。
六三は、我が生を觀て進退す。
六四は、國の光を觀る。用[もっ]て王に賓たるに利ろし。
九五は、我が生を觀る。君子なれば咎无し。
上九は、其の生を觀る。君子なれば咎无し。

〔彖傳〕大觀在上、順而巽、中正以觀天下。觀、盥而不薦、有孚顒若、下觀而化也。觀天之神道、而四時不忒。聖人以神道設敎、而天下服矣。
【読み】
〔彖傳〕大觀上に在り、順にして巽い、中正にして以て天下に觀[しめ]すなり。觀は、盥いて薦めず、孚有りて顒若たりとは、下觀て化するなり。天の神道を觀るに、四時忒[たが]わず。聖人神道を以て敎を設けて、天下服す。

〔象傳〕風行地上、觀。先王以省方觀民設敎。
【読み】
〔象傳〕風の地上を行くは、觀なり。先王以て方を省み民を觀て敎を設く。

初六童觀、小人道也。
闚觀、女貞、亦可醜也。
觀我生進退、未失道也。
觀國之光、尙賓也。
觀我生、觀民也。
觀其生、志未平也。
【読み】
初六の童觀すとは、小人の道なり。
闚い觀る、女の貞とは、亦醜ず可きなり。
我が生を觀て進退すとは、未だ道を失わざるなり。
國の光を觀るとは、賓たらんことを尙[こいねが]うなり。
我が生を觀るとは、民を觀るなり。
其の生を觀るとは、志未だ平かならざるなり。



 震下離上 噬嗑

噬嗑、亨。利用獄。
【読み】
噬嗑[ぜいこう]は、亨る。獄を用うるに利ろし。

初九、屨校滅趾。无咎。
六二、噬膚滅鼻。无咎。
六三、噬腊肉遇毒。小吝、无咎。
九四、噬乾胏、得金矢。利艱貞。吉。
六五、噬乾肉、得黄金。貞厲、无咎。
上九、何校滅耳。凶。
【読み】
初九は、校[あしかせ]を屨いて趾[あし]を滅[やぶ]る。咎无し。
六二は、膚を噬[か]みて鼻を滅る。咎无し。
六三は、腊肉[せきにく]を噬みて毒に遇う。小しく吝なれども、咎无し。
九四は、乾胏[かんし]を噬み、金矢を得。艱[くる]しんで貞なるに利ろし。吉なり。
六五は、乾肉を噬み、黄金を得。貞厲なれば、咎无し。
上九は、校を何[にな]いて耳を滅る。凶なり。

〔彖傳〕頤中有物、曰噬嗑。噬嗑而亨。剛柔分、動而明、雷電合而章。柔得中而上行。雖不當位、利用獄也。
【読み】
〔彖傳〕頤中に物有るを、噬嗑と曰う。噬み嗑わせて亨るなり。剛柔分かれ、動きて明らかに、雷電合して章[あき]らかなり。柔中を得て上行す。位に當たらずと雖も、獄を用うるに利ろしきなり。

〔象傳〕雷電、噬嗑。先王以明罰勅法。
【読み】
〔象傳〕雷電は、噬嗑なり。先王以て罰を明らかにして法を勅[ととの]う。

屨校滅趾、不行也。
噬膚滅鼻、乘剛也。
遇毒、位不當也。
利艱貞、吉、未光也。
貞厲无咎、得當也。
何校滅耳、聰不明也。
【読み】
校を屨いて趾を滅るとは、行かしめざるなり。
膚を噬みて鼻を滅るとは、剛に乘ればなり。
毒に遇うとは、位當たらざればなり。
艱しんで貞なるに利ろし、吉とは、未だ光[おお]いならざるなり。
貞厲なれば咎无しとは、當を得ればなり。
校を何いて耳を滅るとは、聰明らかならざればなり。



 離下艮上 賁

賁、亨。小利有攸往。
【読み】
賁[ひ]は、亨る。小しく往く攸有るに利ろし。

初九、賁其趾。舍車而徒。
六二、賁其須。
九三、賁如濡如。永貞吉。
六四、賁如皤如。白馬翰如。匪寇。婚媾。
六五、賁于邱園。束帛戔戔。吝終吉。
上九、白賁。无咎。
【読み】
初九は、其の趾[あし]を賁[かざ]る。車を舍てて徒[かち]す。
六二は、其の須[ひげ]を賁る。
九三は、賁如たり濡如たり。永貞なれば吉なり。
六四は、賁如たり皤如[はじょ]たり。白馬翰如たり。寇するに匪ず。婚媾せんとす。
六五は、邱園を賁る。束帛戔戔[せんせん]たり。吝なれども終には吉なり。
上九は、白き賁り。咎无し。

〔彖傳〕賁、亨。柔來而文剛。故亨。分剛上而文柔。故小利有攸往。天文也。文明以止、人文也。觀乎天文、以察時變、觀乎人文、以化成天下。
【読み】
〔彖傳〕賁は、亨る。柔來りて剛を文[かざ]る。故に亨るなり。剛を分かち上りて柔を文る。故に小しく往く攸有るに利ろしきなり。天文なり。文明にして以て止まるは、人文なり。天文を觀て、以て時變を察し、人文を觀て、以て天下を化成す。

〔象傳〕山下有火、賁。君子以明庶政、无敢折獄。
【読み】
〔象傳〕山下に火有るは、賁なり。君子以て庶政を明らかにし、敢えて獄を折[さだ]むること无し。

舍車而徒、義弗乘也。
賁其須、與上興也。
永貞之吉、終莫之陵也。
六四、當位疑也。匪寇、婚媾、終无尤也。
六五之吉、有喜也。
白賁、无咎、上得志也。
【読み】
車を舍てて徒すとは、義として乘らざるなり。
其の須を賁るとは、上と與に興るなり。
永貞の吉とは、終に之を陵ぐもの莫きなり。
六四は、位に當たりて疑うなり。寇するに匪ず、婚媾せんとすとは、終に尤[とが]无きなり。
六五の吉は、喜び有るなり。
白き賁り、咎无しとは、上志を得ればなり。



 坤下艮上 剥

剥、不利有攸往。
【読み】
剥[はく]は、往く攸有るに利ろしからず。

初六、剥牀以足。蔑貞凶。
六二、剥牀以辨。蔑貞凶。
六三、剥之。无咎。
六四、剥牀以膚。凶。
六五、貫魚。以宮人寵。无不利。
上九、碩果不食。君子得輿、小人剥廬。
【読み】
初六は、牀を剥するに足を以てす。貞を蔑[ほろ]ぼせば凶なり。
六二は、牀を剥するに辨を以てす。貞を蔑ぼせば凶なり。
六三は、之を剥す。咎无し。
六四は、牀を剥するに膚を以てす。凶なり。
六五は、魚を貫く。宮人を以て寵せらる。利ろしからざること无し。
上九は、碩[おお]いなる果食らわれず。君子は輿を得、小人は廬を剥す。

〔彖傳〕剥、剥也。柔變剛也。不利有攸往、小人長也。順而止之、觀象也。君子尙消息盈虛、天行也。
【読み】
〔彖傳〕剥は、剥ぐなり。柔剛を變ずるなり。往く攸有るに利ろしからずとは、小人長ずればなり。順にして之に止まるは、象を觀ればなり。君子の消息盈虛を尙ぶは、天の行なればなり。

〔象傳〕山附於地、剥。上以厚下安宅。
【読み】
〔象傳〕山の地に附くは、剥なり。上以て下を厚くして宅を安んず。

剥牀以足、以滅下也。
剥牀以辨、未有與也。
剥之、无咎、失上下也。
剥牀以膚、切近災也。
以宮人寵、終无尤也。
君子得輿、民所載也。小人剥廬、終不可用也。
【読み】
牀を剥するに足を以てすとは、以て下を滅ぼすなり。
牀を剥するに辨を以てすとは、未だ與するもの有らざるなり。
之を剥す、咎无しとは、上下を失えばなり。
牀を剥するに膚を以てすとは、切に災いに近きなり。
宮人を以て寵せらるとは、終に尤无きなり。
君子は輿を得とは、民の載する所なればなり。小人は廬を剥すとは、終に用う可からざるなり。



 震下坤上 復

復、亨。出入无疾、朋來无咎。反復其道。七日來復。利有攸往。
【読み】
復は、亨る。出入疾无く、朋來りて咎无し。其の道を反復す。七日にして來復す。往く攸有るに利ろし。

初九、不遠復。无祇悔。元吉。
六二、休復。吉。
六三、頻復。厲无咎。
六四、中行獨復。
六五、敦復。无悔。
上六、迷復。凶。有災眚。用行師、終有大敗。以其國君、凶。至于十年不克征。
【読み】
初九は、遠からずして復る。悔に祇[いた]ること无し。元いに吉なり。
六二は、休[よ]く復る。吉なり。
六三は、頻りに復る。厲[あや]うけれども咎无し。
六四は、中行にして獨り復る。
六五は、敦く復る。悔无し。
上六は、復るに迷う。凶なり。災眚[さいせい]有り。用[もっ]て師を行[や]れば、終に大敗有り。其の國君に以[およ]び、凶なり。十年に至るも征すること克わず。

〔彖傳〕復、亨、剛反。動而以順行。是以出入无疾、朋來无咎。反復其道、七日來復、天行也。利有攸往、剛長也。復、其見天地之心乎。
【読み】
〔彖傳〕復は、亨るとは、剛反ればなり。動きて順を以て行く。是を以て出入疾无く、朋來りて咎无きなり。其の道を反復す、七日にして來復すとは、天の行なり。往く攸有るに利ろしとは、剛長ずればなり。復は、其れ天地の心を見るか。

〔象傳〕雷在地中、復。先王以至日閉關、商旅不行、后不省方。
【読み】
〔象傳〕雷の地中に在るは、復なり。先王以て至日に關を閉ざし、商旅行かず、后は方を省みず。

不遠之復、以脩身也。
休復之吉、以下仁也。
頻復之厲、義无咎也。
中行獨復、以從道也。
敦復、无悔、中以自考也。
迷復之凶、反君道也。
【読み】
遠からずの復とは、以て身を脩むるなり。
休く復るの吉とは、仁に下るを以てなり。
頻りに復るの厲うきは、義として咎无きなり。
中行にして獨り復るとは、以て道に從うなり。
敦く復る、悔无しとは、中以て自ら考[な]せばなり。
復に迷うの凶とは、君道に反すればなり。



 震下乾上 无妄

无妄、元亨。利貞。其匪正有眚、不利有攸往。
【読み】
无妄[むぼう]は、元いに亨る。貞しきに利ろし。其れ正しきに匪ざれば眚[わざわ]い有りて、往く攸有るに利ろしからず。

初九、无妄。往吉。
六二、不耕穫、不菑畬、則利有攸往。
六三、无妄之災。或繫之牛。行人之得、邑人之災。
九四、可貞。无咎。
九五、无妄之疾。勿藥有喜。
上九、无妄。行有眚。无攸利。
【読み】
初九は、无妄なり。往けば吉なり。
六二は、耕穫せず、菑畬[しよ]せざれば、則ち往く攸有るに利ろし。
六三は、无妄の災いあり。或ひと之が牛を繫ぐ。行人の得るは、邑人の災いなり。
九四は、貞にす可し。咎无し。
九五は、无妄の疾あり。藥すること勿くして喜び有り。
上九は、无妄なり。行けば眚い有り。利ろしき攸无し。

〔彖傳〕无妄、剛自外來而爲主於内。動而健。剛中而應。大亨以正、天之命也。其匪正有眚、不利有攸往。无妄之往、何之矣。天命不祐、行矣哉。
【読み】
〔彖傳〕无妄は、剛外より來りて内に主と爲る。動きて健なり。剛中にして應ず。大いに亨りて以て正しきは、天の命なればなり。其れ正しきに匪ざれば眚い有り、往く攸有るに利ろしからず。无妄の往くは、何くにか之かん。天命祐けず、行かんや。

〔象傳〕天下雷行、物與无妄。先王以茂對時育萬物。
【読み】
〔象傳〕天の下に雷行き、物ごとに无妄を與う。先王以て茂[さか]んに時に對して萬物を育う。

无妄之往、得志也。
不耕獲、未富也。
行人得牛、邑人災也。
可貞、无咎、固有之也。
无妄之藥、不可試也。
无妄之行、竆之災也。
【読み】
无妄の往くは、志を得るなり。
耕獲せずとは、未だ富まんとせざるなり。
行人の牛を得るは、邑人の災いなるなり。
貞にす可し、咎无しとは、固く之を有つなり。
无妄の藥は、試[もち]う可からざるなり。
无妄の行くは、竆まるの災いあるなり。



 乾下艮上 大畜

大畜、利貞。不家食吉。利渉大川。
【読み】
大畜は、貞しきに利ろし。家食せずして吉なり。大川を渉るに利ろし。

初九、有厲。利已。
九二、輿說輹。
九三、良馬逐。利艱貞。日閑輿衛、利有攸往。
六四、童牛之牿。元吉。
六五、豶豕之牙。吉。
上九、何天之衢。亨。
【読み】
初九は、厲[あや]うきこと有り。已むに利ろし。
九二は、輿[くるま]輹[とこしばり]を說[だっ]す。
九三は、良馬逐う。艱[くる]しんで貞なるに利ろし。日々に輿衛を閑[なら]えば、往く攸有るに利ろし。
六四は、童牛の牿[つのぎ]なり。元いに吉なり。
六五は、豶豕[ふんし]の牙なり。吉なり。
上九は、何ぞ天の衢[ちまた]なる。亨る。

〔彖傳〕大畜、剛健篤實輝光、日新其德。剛上而尙賢。能止健、大正也。不家食吉、養賢也。利渉大川、應乎天也。
【読み】
〔彖傳〕大畜は、剛健篤實にして輝光あり、日に其の德を新たにす。剛上りて賢を尙ぶ。能く健を止むるは、大いに正しきなり。家食せずして吉なりとは、賢を養えばなり。大川を渉るに利ろしとは、天に應ずればなり。

〔象傳〕天在山中、大畜。君子以多識前言往行、以畜其德。
【読み】
〔象傳〕天の山中に在るは、大畜なり。君子以て多く前言往行を識して、以て其の德を畜むる。

有厲、利已、不犯災也。
輿說輹、中无尤也。
利有攸往、上合志也。
六四元吉、有喜也。
六五之吉、有慶也。
何天之衢、道大行也。
【読み】
厲うきこと有り、已むに利ろしとは、災いを犯さざるなり。
輿輹を說すとは、中にして尤无きなり。
往く攸有るに利ろしとは、上と志を合すればなり。
六四の元いに吉とは、喜び有るなり。
六五の吉とは、慶び有るなり。
何ぞ天の衢なるとは、道大いに行わるるなり。



 震下艮上 頤

頤、貞吉。觀頤、自求口實。
【読み】
頤[い]は、貞しければ吉なり。頤を觀て、自ら口實を求む。

初九、舎爾靈龜、觀我朶頤。凶。
六二、顚頤。拂經。于丘頤。征凶。
六三、拂頤。貞凶。十年勿用。无攸利。
六四、顚頤。吉。虎視眈眈、其欲逐逐、无咎。
六五、拂經。居貞吉。不可渉大川。
上九、由頤。厲吉。利渉大川。
【読み】
初九は、爾の靈龜を舎て、我を觀て頤[おとがい]を朶[た]る。凶なり。
六二は、顚[さかしま]に頤[やしな]わる。經[つね]に拂[もと]れり。丘に于[おい]て頤わる。征けば凶なり。
六三は、頤に拂る。貞なれども凶なり。十年用うること勿かれ。利ろしき攸无し。
六四は、顚に頤わる。吉なり。虎視眈眈、其の欲逐逐たれば、咎无し。
六五は、經に拂る。貞に居れば吉なり。大川を渉る可からず。
上九は、由りて頤わる。厲[あや]うけれども吉なり。大川を渉るに利ろし。

〔彖傳〕頤、貞吉、養正則吉也。觀頤、觀其所養也。自求口實、觀其自養也。天地養萬物、聖人養賢以及萬民。頤之時、大矣哉。
【読み】
〔彖傳〕頤は、貞しければ吉なりとは、正しきを養えば則ち吉なるなり。頤を觀るとは、其の養う所を觀るなり。自ら口實を求むとは、其の自ら養うことを觀るなり。天地は萬物を養い、聖人は賢を養いて以て萬民に及ぼす。頤の時、大いなるかな。

〔象傳〕山下有雷、頤。君子以愼言語、節飮食。
【読み】
〔象傳〕山下に雷有るは、頤なり。君子以て言語を愼み、飮食を節す。

觀我朶頤、亦不足貴也。
六二征凶、行失類也。
十年勿用、道大悖也。
顚頤之吉、上施光也。
居貞之吉、順以從上也。
由頤、厲吉、大有慶也。
【読み】
我を觀て頤を朶るとは、亦貴ぶに足らざるなり。
六二の征けば凶とは、行きて類を失えばなり。
十年用うること勿かれとは、道大いに悖ればなり。
顚に頤わるるの吉とは、上の施し光[おお]いなればなり。
貞に居るの吉とは、順にして以て上に從えばなり。
由りて頤わる、厲うけれども吉とは、大いに慶び有るなり。



 巽下兌上 大過

大過、棟橈。利有攸往。亨。
【読み】
大過は、棟[むなぎ]橈[たわ]む。往く攸有るに利ろし。亨る。

初六、藉用白茅。无咎。
九二、枯楊生稊。老夫得其女妻。无不利。
九三、棟橈。凶。
九四、棟隆。吉。有它吝。
九五、枯楊生華。老婦得其士夫。无咎无譽。
上六、過渉滅頂。凶。无咎。
【読み】
初六は、藉[し]くに白茅[はくぼう]を用う。咎无し。
九二は、枯楊稊[ひこばえ]を生ず。老夫其の女妻を得。利ろしからざること无し。
九三は、棟橈む。凶なり。
九四は、棟隆し。吉なり。它[た]有れば吝なり。
九五は、枯楊華を生ず。老婦其の士夫を得。咎も无く譽れも无し。
上六は、渉るに過ぎて頂を滅す。凶なり。咎无し。

〔彖傳〕大過、大者過也。棟橈、本末弱也。剛過而中、巽而說行。利有攸往、乃亨。大過之時、大矣哉。
【読み】
〔彖傳〕大過は、大なる者の過ぎたるなり。棟橈むとは、本末の弱きなり。剛過ぎたれども中し、巽[したが]いて說び行く。往く攸有るに利ろしく、乃ち亨るなり。大過の時、大いなるかな。

〔象傳〕澤滅木、大過。君子以獨立不懼。遯世无悶。
【読み】
〔象傳〕澤の木を滅[つ]くすは、大過なり。君子以て獨立して懼れず。世を遯[のが]れて悶うること无し。

藉用白茅、柔在下也。
老夫女妻、過以相與也。
棟橈之凶、不可以有輔也。
棟隆之吉、不橈乎下也。
枯楊生華、何可久也。老婦士夫、亦可醜也。
過渉之凶、不可咎也。
【読み】
藉くに白茅を用うとは、柔にして下に在ればなり。
老夫女妻とは、過ぎて以て相與するなり。
棟橈むの凶とは、以て輔くること有る可からざればなり。
棟隆きの吉とは、下に橈まざればなり。
枯楊華を生ずとは、何ぞ久しかる可けんや。老婦士夫とは、亦醜ず可きなり。
渉るに過ぐの凶は、咎む可からざるなり。



 坎下坎上 坎

習坎、有孚。維心亨。行有尙。
【読み】
習坎[しゅうかん]は、孚有り。維れ心亨る。行けば尙ばるること有り。

初六、習坎、入于坎窞。凶。
九二、坎有險。求小得。
六三、來之坎坎。險且枕。入于坎窞。勿用。
六四、樽酒簋、貳用缶。納約自牖。終无咎。
九五、坎不盈。祇旣平、无咎。
上六、係用徽纆、寘于叢棘。三歳不得。凶。
【読み】
初六は、坎を習[かさ]ねて、坎窞[かんたん]に入る。凶なり。
九二は、坎に險有り。求めば小しく得。
六三は、來るも之くも坎坎たり。險且つ枕。坎窞に入る。用うること勿かれ。
六四は、樽酒簋、貳[くわ]うるに缶[ほとぎ]を用う。約を納るるに牖よりす。終に咎无きなり。
九五は、坎盈たず。旣に平かなるに祇[いた]らば、咎无し。
上六は、係ぐに徽纆[きぼく]を用い、叢棘[そうきょく]に寘[お]く。三歳まで得ず。凶なり。

〔彖傳〕習坎、重險也。水流而不盈、行險而不失其信。維心亨、乃以剛中也。行有尙、往有功也。天險、不可升也。地險、山川丘陵也。王公設險、以守其國。險之時用、大矣哉。
【読み】
〔彖傳〕習坎は、重險なり。水流れて盈たず、險を行きて其の信を失わざるなり。維れ心亨るとは、乃ち剛中なるを以てなり。行けば尙ばるること有りとは、往きて功有るなり。天險は、升る可からざるなり。地險は、山川丘陵なり。王公は險を設けて、以て其の國を守る。險の時用、大いなるかな。

〔象傳〕水洊至、習坎。君子以常德行、習敎事。
【読み】
〔象傳〕水洊[しき]りに至るは、習坎なり。君子以て德行を常にし、敎事を習[かさ]ぬ。

習坎入坎、失道凶也。
求小得、未出中也。
來之坎坎、終无功也。
樽酒簋貳、剛柔際也。
坎不盈、中未大也。
上六失道。凶三歳也。
【読み】
坎を習ねて坎に入るとは、道を失いて凶なるなり。
求めば小しく得とは、未だ中を出でざればなり。
來るも之くも坎坎たりとは、終に功无きなり。
樽酒簋貳とは、剛柔の際[あいだ]なればなり。
坎盈たずとは、中未だ大ならざればなり。
上六は道を失う。凶なること三歳なるなり。



 離下離上 離

離、利貞。亨。畜牝牛、吉。
【読み】
離は、貞しきに利ろし。亨る。牝牛を畜えば、吉なり。

初九、履錯然。敬之无咎。
六二、黄離、元吉。
九三、日昃之離。不鼓缶而歌、則大耋之嗟。凶。
九四、突如其來如。焚如、死如、棄如。
六五、出涕沱若。戚嗟若。吉。
上九、王用出征。有嘉折首。獲匪其醜。无咎。
【読み】
初九は、履むこと錯然たり。之を敬すれば咎无し。
六二は、黄離、元いに吉なり。
九三は、日昃[かたむ]くの離なり。缶[ほとぎ]を鼓ちて歌わざれば、則ち大耋[だいてつ]の嗟[なげ]きあらん。凶なり。
九四は、突如として其れ來如たり。焚如たり、死如たり、棄如たり。
六五は、涕を出だすこと沱若[たじゃく]たり。戚[うれ]うこと嗟若たり。吉なり。
上九は、王用[もっ]て出で征せしむ。嘉きこと有りて首を折[た]つ。獲るもの其の醜[たぐい]に匪ず。咎无し。

〔彖傳〕離、麗也。日月麗乎天、百穀草木麗乎土。重明以麗乎正、乃化成天下。柔麗乎中正。故亨。是以畜牝牛吉也。
【読み】
〔彖傳〕離は、麗なり。日月は天に麗[つ]き、百穀草木は土に麗く。重明以て正に麗けば、乃ち天下を化成す。柔中正に麗く。故に亨る。是を以て牝牛を畜えば吉なるなり。

〔象傳〕明兩作、離。大人以繼明照于四方。
【読み】
〔象傳〕明兩[ふたた]び作るは、離なり。大人以て明を繼ぎ四方を照らす。

履錯之敬、以辟咎也。
黄離、元吉、得中道也。
日昃之離、何可久也。
突如其來如、无所容也。
六五之吉、離王公也。
王用出征、以正邦也。
【読み】
履むこと錯たるの敬は、以て咎を辟くるなり。
黄離、元いに吉とは、中道を得ればなり。
日昃くの離は、何ぞ久しかる可けんや。
突如として其れ來如たりとは、容れらるる所无きなり。
六五の吉とは、王公に離[つ]けばなり。
王用て出で征せしむとは、以て邦を正すなり。


周易下經


 艮下兌上 咸

咸、亨。利貞。取女吉。
【読み】
咸[かん]は、亨る。貞しきに利ろし。女を取[めと]るは吉なり。

初六、咸其拇。
六二、咸其腓。凶。居吉。
九三、咸其股。執其隨。往吝。
九四、貞吉悔亡。憧憧往來、朋從爾思。
九五、咸其脢。无悔。
上六、咸其輔頬舌。
【読み】
初六は、其の拇[おやゆび]に咸ず。
六二は、其の腓[こむら]咸ず。凶なり。居れば吉なり。
九三は、其の股[もも]に咸ず。執[まも]るも其れ隨う。往けば吝なり。
九四は、貞しければ吉にして悔亡ぶ。憧憧として往來すれば、朋のみ爾が思いに從う。
九五は、其の脢[ばい]に咸ず。悔无し。
上六は、其の輔頬舌に咸ず。

〔彖傳〕咸、感也。柔上而剛下、二氣感應以相與。止而說、男下女。是以亨、利貞、取女吉也。天地感而萬物化生、聖人感人心、而天下和平。觀其所感、而天地萬物之情可見矣。
【読み】
〔彖傳〕咸は、感なり。柔上りて剛下り、二氣感應して以て相與す。止まりて說び、男は女に下る。是を以て亨り、貞しきに利ろしく、女を取るは吉なるなり。天地感じて萬物化生し、聖人人心を感ぜしめて、天下和平なり。其の感ずる所を觀て、天地萬物の情見る可し。

〔象傳〕山上有澤、咸。君子以虛受人。
【読み】
〔象傳〕山上に澤有るは、咸なり。君子以て虛にして人を受く。

咸其拇、志在外也。
雖凶居吉、順不害也。
咸其股、亦不處也。志在隨人。所執下也。
貞吉悔亡、未感害也。憧憧往來、未光大也。
咸其脢、志末也。
咸其輔頬舌、滕口說也。
【読み】
其の拇に咸ずとは、志外に在るなり。
凶と雖も居れば吉とは、順えば害あらざるなり。
其の股に咸ずとは、亦處[とど]まらざるなり。志人に隨うに在り。執る所下きなり。
貞しければ吉にして悔亡ぶとは、未だ感に害せられざるなり。憧憧として往來すとは、未だ光大ならざるなり。
其の脢に咸ずとは、志末なるなり。
其の輔頬舌に咸ずとは、口說を滕[あ]ぐるなり。



 巽下震上 恆

恆、亨。无咎。利貞。利有攸往。
【読み】
恆は、亨る。咎无し。貞しきに利ろし。往く攸有るに利ろし。

初六、浚恆。貞凶。无攸利。
九二、悔亡。
九三、不恆其德。或承之羞。貞吝。
九四、田无禽。
六五、恆其德貞。婦人吉、夫子凶。
上六、振恆。凶。
【読み】
初六は、浚[ふか]くするを恆とす。貞しけれども凶なり。利ろしき攸无し。
九二は、悔亡ぶ。
九三は、其の德を恆にせず。或は之に羞を承[すす]む。貞しけれども吝なり。
九四は、田[かり]して禽无し。
六五は、其の德を恆にして貞し。婦人は吉なれども、夫子は凶なり。
上六は、振うを恆とす。凶なり。

〔彖傳〕恆、久也。剛上而柔下、雷風相與、巽而動、剛柔皆應、恆。恆亨、无咎、利貞、久於其道也。天地之道、恆久而不已也。利有攸往、終則有始也。日月得天而能久照、四時變化而能久成、聖人久於其道而天下化成。觀其所恆、而天地萬物之情可見矣。
【読み】
〔彖傳〕恆は、久なり。剛上りて柔下り、雷風相與し、巽[したが]いて動き、剛柔皆應ずるは、恆なり。恆は亨る、咎无し、貞しきに利ろしとは、其の道に久しければなり。天地の道は、恆久にして已まざるなり。往く攸有るに利ろしとは、終われば則ち始め有るなり。日月は天を得て能く久しく照らし、四時は變化して能く久しく成し、聖人は其の道に久しくして天下化成す。其の恆にする所を觀て、天地萬物の情見る可し。

〔象傳〕雷風、恆。君子以立不易方。
【読み】
〔象傳〕雷風は、恆なり。君子以て立ちて方を易えず。

浚恆之凶、始求深也。
九二悔亡、能久中也。
不恆其德、无所容也。
久非其位、安得禽也。
婦人貞吉、從一而終也。夫子制義。從婦凶也。
振恆在上、大无功也。
【読み】
浚くするを恆とすの凶とは、始めに深きを求むればなり。
九二の悔亡ぶとは、能く中に久しければなり。
其の德を恆にせずとは、容れらるる所无きなり。
久しきも其の位に非ず、安んぞ禽を得んや。
婦人は貞しければ吉とは、一に從いて終わればなり。夫子は義を制す。婦に從えば凶なるなり。
振うを恆とし上に在り、大いに功无きなり。



 艮下乾上 遯

遯、亨。小利貞。
【読み】
遯[とん]は、亨る。小なれば貞しきに利ろし。

初六、遯尾。厲。勿用有攸往。
六二、執之用黄牛之革。莫之勝說。
九三、係遯。有疾厲。畜臣妾、吉。
九四、好遯。君子吉、小人否。
九五、嘉遯。貞吉。
上九、肥遯。无不利。
【読み】
初六は、遯尾。厲[あや]うし。往く攸有るに用うること勿かれ。
六二は、之を執[とら]うるに黄牛の革を用う。之を勝[よ]く說[だっ]するもの莫し。
九三は、遯[のが]るべきに係[つな]がる。疾有りて厲うし。臣妾を畜うには、吉なり。
九四は、好く遯る。君子は吉なり。小人は否[しか]らず。
九五は、嘉く遯る。貞しくして吉なり。
上九は、肥かに遯る。利ろしからざること无し。

〔彖傳〕遯、亨、遯而亨也。剛當位而應、與時行也。小利貞、浸而長也。遯之時義、大矣哉。
【読み】
〔彖傳〕遯は、亨るとは、遯れて亨るなり。剛位に當たりて應じ、時と與に行うなり。小なれば貞しきに利ろしとは、浸[ようや]くにして長ずればなり。遯の時義、大いなるかな。

〔象傳〕天下有山、遯。君子以遠小人、不惡而嚴。
【読み】
〔象傳〕天の下に山有るは、遯なり。君子以て小人を遠ざけ、惡まずして嚴しくす。

遯尾之厲、不往何災也。
執用黄牛、固志也。
係遯之厲、有疾憊也。畜臣妾吉、不可大事也。
君子好遯。小人否也。
嘉遯、貞吉、以正志也。
肥遯、无不利、无所疑也。
【読み】
遯尾の厲うきは、往かざれば何の災いかあらん。
執うるに黄牛を用うとは、志を固くするなり。
遯るべきに係がるの厲うきは、疾有りて憊[つか]るるなり。臣妾を畜うには吉とは、大事には可ならざるなり。
君子は好く遯る。小人は否らざるなり。
嘉く遯る、貞しくして吉とは、志を正しくするを以てなり。
肥かに遯る、利ろしからざること无しとは、疑う所无ければなり。



 乾下震上 大壯

大壯、利貞。
【読み】
大壯は、貞しきに利ろし。

初九、壯于趾。征凶、有孚。
九二、貞吉。
九三、小人用壯、君子用罔。貞厲。羝羊觸藩、羸其角。
九四、貞吉悔亡。藩決不羸。壯于大輿之輹。
六五、喪羊于易。无悔。
上六、羝羊觸藩、不能退、不能遂。无攸利。艱則吉。
【読み】
初九は、趾[あし]に壯んなり。征けば凶なること、孚有り。
九二は、貞しければ吉なり。
九三は、小人は壯を用い、君子は罔を用う。貞しけれども厲[あや]うし。羝羊[ていよう]藩[かき]に觸れて、其の角を羸[くる]しましむ。
九四は、貞しければ吉にして悔亡ぶ。藩決[ひら]けて羸しまず。大輿の輹[とこしばり]に壯んなり。
六五は、羊を易に喪う。悔无し。
上六は、羝羊藩に觸れ、退くこと能わず、遂[すす]むこと能わず。利ろしき攸无し。艱[くる]しめば則ち吉なり。

〔彖傳〕大壯、大者壯也。剛以動。故壯。大壯利貞、大者正也。正大而天地之情可見矣。
【読み】
〔彖傳〕大壯は、大なる者の壯んなるなり。剛にして以て動く。故に壯んなり。大壯は貞しきに利ろしとは、大なる者正しきなり。正大にして天地の情見る可し。

〔象傳〕雷在天上、大壯。君子以非禮弗履。
【読み】
〔象傳〕雷の天上に在るは、大壯なり。君子以て禮に非ざれば履まず。

壯于趾、其孚竆也。
九二貞吉、以中也。
小人用壯、君子罔也。
藩決不羸、尙往也。
喪羊于易、位不當也。
不能退、不能遂、不詳也。艱則吉、咎不長也。
【読み】
趾に壯んなりとは、其れ孚に竆するなり。
九二の貞しければ吉とは、中を以てなり。
小人は壯を用うれど、君子は罔きなり。
藩決けて羸しまずとは、往くを尙ぶなり。
羊を易に喪うとは、位當たらざればなり。
退くこと能わず、遂むこと能わずとは、詳らかならざればなり。艱しめば則ち吉とは、咎長からざるなり。



 坤下離上 晉

晉、康侯用錫馬蕃庶、晝日三接。
【読み】
晉は、康侯用[もっ]て馬を錫うこと蕃庶にして、晝日に三たび接せらる。

初六、晉如摧如。貞吉。罔孚、裕无咎。
六二、晉如愁如。貞吉。受玆介福于其王母。
六三、衆允。悔亡。
九四、晉如鼫鼠。貞厲。
六五、悔亡。失得勿恤。往吉、无不利。
上九、晉其角。維用伐邑、厲吉无咎。貞吝。
【読み】
初六は、晉如たり摧如たり。貞しければ吉なり。孚とせらるること罔けれども、裕かなれば咎无し。
六二は、晉如たり愁如たり。貞しければ吉なり。玆の介[おお]いなる福[さいわい]を其の王母に受く。
六三は、衆允[まこと]とす。悔亡ぶ。
九四は、晉如たる鼫鼠[せきそ]。貞しけれども厲[あや]うし。
六五は、悔亡ぶ。失得恤うること勿かれ。往けば吉にして、利ろしからざること无し。
上九は、其の角に晉[すす]む。維れ用て邑を伐てば、厲うけれども吉にして咎无し。貞しけれども吝なり。

〔彖傳〕晉、進也。明出地上、順而麗乎大明、柔進而上行。是以康侯錫馬蕃庶、晝日三接也。
【読み】
〔彖傳〕晉は、進なり。明地上に出で、順にして大明に麗[つ]き、柔進みて上行す。是を以て康侯馬を錫わること蕃庶にして、晝日に三たび接せらるるなり。

〔象傳〕明出地上、晉。君子以自昭明德。
【読み】
〔象傳〕明地上に出づるは、晉なり。君子以て自ら明德を昭らかにす。
晉如、摧如、獨行正也。裕无咎、未受命也。
受玆介福、以中正也。
衆允之、志上行也。
鼫鼠貞厲、位不當也。
失得勿恤、往有慶也。
維用伐邑、道未光也。
【読み】
晉如たり、摧如たりとは、獨り正しきを行うなり。裕かなれば咎无しとは、未だ命を受けざればなり。
玆の介いなる福を受くとは、中正なるを以てなり。
衆之を允とすとは、志上行すればなり。
鼫鼠貞しけれども厲うしとは、位當たらざればなり。
失得恤うること勿かれとは、往きて慶び有るなり。
維れ用て邑を伐つとは、道未だ光[おお]いならざるなり。



 離下坤上 明夷

明夷、利艱貞。
【読み】
明夷は、艱[くる]しみて貞しきに利ろし。

初九、明夷于飛、埀其翼。君子于行、三日不食。有攸往、主人有言。
六二、明夷。夷于左股。用拯馬壯、吉。
九三、明夷于南狩、得其大首。不可疾貞。
六四、入于左腹、獲明夷之心、于出門庭。
六五、箕子之明夷。利貞。
上六、不明晦。初登于天、後入于地。
【読み】
初九は、明夷[やぶ]れて于[ここ]に飛び、其の翼を埀る。君子于に行きて、三日食らわず。往く攸有れば、主人言有り。
六二は、明夷る。左股を夷る。用[もっ]て拯[すく]うに馬壯んなれば、吉なり。
九三は、明夷れて于に南狩して、其の大首を得。疾く貞しくす可からず。
六四は、左腹に入り、明夷の心を獲て、于に門庭を出づ。
六五は、箕子の明夷る。貞しきに利ろし。
上六は、明らかならずして晦し。初めは天に登り、後には地に入る。

〔彖傳〕明入地中、明夷。内文明而外柔順、以蒙大難。文王以之。利艱貞、晦其明也。内難而能正其志。箕子以之。
【読み】
〔彖傳〕明の地中に入るは、明夷なり。内文明にして外柔順、以て大難を蒙る。文王之を以[もち]う。艱しみて貞しきに利ろしとは、其の明を晦ますなり。内難にして能く其の志を正しくす。箕子之を以う。

〔象傳〕明入地中、明夷。君子以莅衆、用晦而明。
【読み】
〔象傳〕明の地中に入るは、明夷なり。君子以て衆に莅[のぞ]み、晦きを用いて而も明なり。

君子于行、義不食也。
六二之吉、順以則也。
南狩之志、乃大得也。
入于左腹、獲心意也。
箕子之貞、明不可息也。
初登于天、照四國也。後入于地、失則也。
【読み】
君子于に行くとは、義として食まざるなり。
六二の吉とは、順にして以て則あればなり。
南狩の志とは、乃ち大いに得るなり。
左腹に入るとは、心意を獲るなり。
箕子の貞とは、明息む可からざるなり。
初めは天に登るとは、四國を照らすなり。後には地に入るとは、則を失うなり。



 離下巽上 家人

家人、利女貞。
【読み】
家人は、女の貞しきに利ろし。

初九、閑有家。悔亡。
六二、无攸遂。在中饋。貞吉。
九三、家人嗃嗃。悔厲吉。婦子嘻嘻、終吝。
六四、富家。大吉。
九五、王假有家。勿恤吉。
上九、有孚威如、終吉。
【読み】
初九は、有家を閑[ふせ]ぐ。悔亡ぶ。
六二は、遂ぐる攸无し。中饋に在り。貞しくして吉なり。
九三は、家人嗃嗃[かくかく]たり。厲しきを悔ゆれば吉なり。婦子嘻嘻たれば、終には吝なり。
六四は、家を富ます。大吉なり。
九五は、王有家に假[いた]る。恤うること勿くして吉なり。
上九は、孚有りて威如たれば、終に吉なり。

〔彖傳〕家人、女正位乎内、男正位乎外。男女正、天地之大義也。家人有嚴君焉、父母之謂也。父父、子子、兄兄、弟弟、夫夫、婦婦。而家道正。正家而天下定矣。
【読み】
〔彖傳〕家人は、女位を内に正しくし、男位を外に正しくす。男女正しきは、天地の大義なり。家人に嚴君有りとは、父母の謂なり。父は父たり、子は子たり、兄は兄たり、弟は弟たり、夫は夫たり、婦[つま]は婦たり。而して家道正し。家を正しくして天下定まる。

〔象傳〕風自火出、家人。君子以言有物、而行有恆。
【読み】
〔象傳〕風の火より出づるは、家人なり。君子以て言に物有りて、行いに恆有り。

閑有家、志未變也。
六二之吉、順以巽也。
家人嗃嗃、未失也。婦子嘻嘻、失家節也。
富家、大吉、順在位也。
王假有家、交相愛也。
威如之吉、反身之謂也。
【読み】
有家を閑ぐとは、志未だ變ぜざるなり。
六二の吉とは、順にして以て巽なればなり。
家人嗃嗃たりとは、未だ失なわざるなり。婦子嘻嘻たりとは、家節を失うなり。
家を富ます、大吉とは、順にして位に在ればなり。
王有家に假るとは、交々相愛するなり。
威如たるの吉とは、身に反るの謂なり。



 兌下離上 睽

睽、小事吉。
【読み】
睽[けい]は、小事に吉なり。

初九、悔亡。喪馬勿逐自復。見惡人、无咎。
九二、遇主于巷。无咎。
六三、見輿曳。其牛掣。其人天且劓。无初有終。
九四、睽孤。遇元夫。交孚。厲无咎。
六五、悔亡。厥宗噬膚。往何咎。
上九、睽孤。見豕負塗、載鬼一車。先張之弧、後說之弧。匪寇、婚媾。往遇雨則吉。
【読み】
初九は、悔亡ぶ。馬を喪うも逐うこと勿くして自ら復る。惡人を見るも、咎无し。
九二は、主に巷に遇う。咎无し。
六三は、輿の曳かるるを見る。其の牛掣[ひきとど]めらる。其の人天[かみき]られ且つ劓[はなき]らる。初め无くして終わり有り。
九四は、睽きて孤なり。元夫に遇う。交々孚あり。厲[あや]うけれども咎无し。
六五は、悔亡ぶ。厥の宗膚を噬[か]む。往くも何の咎かあらん。
上九は、睽[そむ]きて孤なり。豕の塗を負い、鬼を載すること一車なるを見る。先には之が弧[ゆみ]を張り、後には之が弧を說[と]く。寇するに匪ず、婚媾せんとす。往きて雨に遇えば則ち吉なり。

〔彖傳〕睽、火動而上、澤動而下。二女同居、其志不同行。說而麗乎明、柔進而上行、得中而應乎剛。是以小事吉。天地睽而其事同也。男女睽而其志通也。萬物睽而其事類也。睽之時用、大矣哉。
【読み】
〔彖傳〕睽は、火動いて上り、澤動いて下る。二女同居して、其の志は行いを同じくせず。說びて明に麗[つ]き、柔進みて上行し、中を得て剛に應ず。是を以て小事には吉なるなり。天地睽けども其の事同じきなり。男女睽けども其の志通ずるなり。萬物睽けども其の事類するなり。睽の時用、大いなるかな。

〔象傳〕上火下澤、睽。君子以同而異。
【読み】
〔象傳〕上に火あり下に澤あるは、睽なり。君子以て同じくして異なる。

見惡人、以辟咎也。
遇主于巷、未失道也。
見輿曳、位不當也。无初有終、遇剛也。
交孚、无咎、志行也。
厥宗噬膚、往有慶也。
遇雨之吉、羣疑亡也。
【読み】
惡人を見るとは、以て咎を辟くるなり。
主に巷に遇うとは、未だ道を失わざればなり。
輿の曳かるるを見るとは、位當たらざればなり。初め无くして終わり有りとは、剛に遇えばなり。
交々孚あり、咎无しとは、志行わるるなり。
厥の宗膚を噬むとは、往きて慶び有るなり。
雨に遇うの吉とは、羣疑亡ぶればなり。



 艮下坎上 蹇

蹇、利西南。不利東北。利見大人。貞吉。
【読み】
蹇[けん]は、西南に利ろし。東北に利ろしからず。大人を見るに利ろし。貞しければ吉なり。

初六、往蹇、來譽。
六二、王臣蹇蹇。匪躳之故。
九三、往蹇、來反。
六四、往蹇、來連。
九五、大蹇、朋來。
上六、往蹇、來碩。吉。利見大人。
【読み】
初六は、往けば蹇[なや]み、來れば譽れあり。
六二は、王臣蹇蹇たり。躳の故に匪ず。
九三は、往けば蹇み、來れば反る。
六四は、往けば蹇み、來れば連なる。
九五は、大いに蹇むも、朋來る。
上六は、往けば蹇み、來れば碩[おお]いなり。吉なり。大人を見るに利ろし。

〔彖傳〕蹇、難也。險在前也。見險而能止。知矣哉。蹇、利西南、往得中也。不利東北、其道竆也。利見大人、往有功也。當位貞吉、以正邦也。蹇之時用、大矣哉。
【読み】
〔彖傳〕蹇は、難なり。險前に在るなり。險を見て能く止まる。知なるかな。蹇は、西南に利ろしとは、往きて中を得ればなり。東北に利ろしからずとは、其の道竆すればなり。大人を見るに利ろしとは、往きて功有るなり。位に當たり貞しければ吉なりとは、以て邦を正しくするなり。蹇の時用、大いなるかな。

〔象傳〕山上有水、蹇。君子以反身脩德。
【読み】
〔象傳〕山上に水有るは、蹇なり。君子以て身に反りて德を脩む。

往蹇、來譽、宜待也。
王臣蹇蹇、終无尤也。
往蹇、來反、内喜之也。
往蹇、來連、當位實也。
大蹇、朋來、以中節也。
往蹇、來碩、志在内也。利見大人、以從貴也。
【読み】
往けば蹇み、來れば譽れありとは、宜しく待つべしとなり。
王臣蹇蹇たりとは、終に尤无きなり。
往けば蹇み、來れば反るとは、内之を喜ぶとなり。
往けば蹇み、來れば連なるとは、位に當たりて實なればなり。
大いに蹇むも、朋來るとは、中節なるを以てなり。
往けば蹇み、來れば碩いなりとは、志内に在るなり。大人を見るに利ろしとは、以て貴きに從うなり。



 坎下震上 解

解、利西南。无所往、其來復、吉。有攸往、夙吉。
【読み】
解は、西南に利ろし。往く所无ければ、其れ來り復り、吉なり。往く攸有れば、夙[はや]くして吉なり。

初六、无咎。
九二、田獲三狐、得黄矢。貞吉。
六三、負且乘、致寇至。貞吝。
九四、解而拇。朋至斯孚。
六五、君子維有解、吉。有孚于小人。
上六、公用射隼于高墉之上。獲之。无不利。
【読み】
初六は、咎无し。
九二は、田[かり]に三狐を獲、黄矢を得たり。貞しければ吉なり。
六三は、負い且つ乘り、寇の至ることを致す。貞しけれども吝なり。
九四は、而[なんじ]が拇[おやゆび]を解く。朋至りて斯に孚あり。
六五は、君子維れ解くこと有らば、吉なり。小人に孚有り。
上六は、公用[もっ]て隼を高墉[こうよう]の上に射る。之を獲。利ろしからざること无し。

〔彖傳〕解、險以動。動而免乎險、解。解利西南、往得衆也。其來復吉、乃得中也。有攸往、夙吉、往有功也。天地解而雷雨作。雷雨作百果草木皆甲坼。解之時、大矣哉。
【読み】
〔彖傳〕解は、險にして以て動く。動きて而して險より免るるは、解なり。解は西南に利ろしとは、往きて衆を得るなり。其れ來り復りて吉とは、乃ち中を得ればなり。往く攸有れば、夙くして吉とは、往きて功有るなり。天地解けて雷雨作り、雷雨作りて百果草木皆甲坼[こうたく]す。解の時、大いなるかな。

〔象傳〕雷雨作、解。君子以赦過宥罪。
【読み】
〔象傳〕雷雨作るは、解なり。君子以て過を赦して罪を宥[なだ]む。

剛柔之際、義无咎也。
九二貞吉、得中道也。
負且乘、亦可醜也。自我致戎、又誰咎也。
解而拇、未當位也。
君子有解、小人退也。
公用射隼、以解悖也。
【読み】
剛柔の際[まじわ]りは、義として咎无きなり。
九二の貞しければ吉とは、中道を得ればなり。
負い且つ乘るとは、亦醜ず可きなり。我より戎を致せば、又誰をか咎めん。
而の拇を解くとは、未だ位に當たらざればなり。
君子解くこと有りとは、小人退くなり。
公用て隼を射るとは、以て悖れるを解くなり。



 兌下艮上 損

損、有孚、元吉。无咎。可貞。利有攸往。曷之用。二簋可用享。
【読み】
損は、孚有れば、元いに吉。咎无し。貞しくす可し。往く攸有るに利ろし。曷[なに]をか之れ用いん。二簋[き]用[もっ]て享[まつ]る可し。

初九、已事遄往、无咎。酌損之。
九二、利貞。征凶。弗損益之。
六三、三人行則損一人。一人行則得其友。
六四、損其疾。使遄有喜。无咎。
六五、或益之、十朋之龜。弗克違。元吉。
上九、弗損益之。无咎。貞吉。利有攸往。得臣无家。
【読み】
初九は、事を已めて遄[すみ]やかに往けば、咎无し。酌みて之を損らすべし。
九二は、貞しきに利ろし。征けば凶なり。損らさずして之を益す。
六三は、三人行けば則ち一人を損らす。一人行けば則ち其の友を得。
六四は、其の疾を損らす。遄やかならしめば喜び有り。咎无し。
六五は、或は之を益すこと、十朋の龜なり。違うこと克[あた]わず。元いに吉なり。
上九は、損らさずして之を益す。咎无し。貞しければ吉なり。往く攸有るに利ろし。臣を得て家无し。

〔彖傳〕損、損下益上、其道上行。損而有孚、元吉、无咎、可貞、利有攸往。曷之用、二簋可用享。二簋應有時。損剛益柔有時。損益盈虛、與時偕行。
【読み】
〔彖傳〕損は、下を損らして上に益し、其の道上行す。損らして孚有れば、元いに吉、咎无し、貞しくす可し、往る攸有るに利ろし。曷をか之れ用いん、二簋[き]用て享る可し。二簋もてするは應[まさ]に時有るべし。剛を損らして柔を益すに時有り。損益盈虛は、時と偕[とも]に行わる。

〔象傳〕山下有澤、損。君子以懲忿窒欲。
【読み】
〔象傳〕山下に澤有るは、損なり。君子以て忿りを懲らし欲を窒ぐ。

已事遄往、尙合志也。
九二利貞、中以爲志也。
一人行、三則疑也。
損其疾、亦可喜也。
六五元吉、自上祐也。
弗損益之、大得志也。
【読み】
事を已めて遄やかに往くとは、尙[かみ]と志を合すればなり。
九二の貞しきに利ろしとは、中以て志と爲せばなり。
一人行くとは、三なれば則ち疑うなり。
其の疾を損らすとは、亦喜ぶ可きなり。
六五の元いに吉とは、上より祐くればなり。
損らさずして之を益すとは、大いに志を得るなり。



 震下巽上 益

益、利有攸往。利渉大川。
【読み】
益は、往く攸有るに利ろし。大川を渉るに利ろし。

初九、利用爲大作。元吉。无咎。
六二、或益之、十朋之龜。弗克違。永貞吉。王用享于帝。吉。
六三、益之用凶事、无咎。有孚中行、告公用圭。
六四、中行。告公從。利用爲依遷國。
九五、有孚惠心。勿問元吉。有孚惠我德。
上九、莫益之。或擊之。立心勿恆。凶。
【読み】
初九は、用[もっ]て大作を爲すに利ろし。元いに吉なり。咎无し。
六二は、或は之を益すこと、十朋の龜なり。違うこと克[あた]わず。永貞なれば吉なり。王用て帝に享す。吉なり。
六三は、之を益すに凶事を用うれば、咎无し。孚有り中行にして、公に告ぐるに圭を用うべし。
六四は、中行なり。公に告げて從わる。用て依ることを爲し國を遷すに利ろし。
九五は、孚有りて惠心あり。問うこと勿くして元いに吉なり。孚有りて我が德を惠とす。
上九は、之を益すこと莫し。或は之を擊つ。心を立つること恆勿し。凶なり。

〔彖傳〕益、損上益下。民說无疆。自上下下、其道大光。利有攸往、中正有慶。利渉大川、木道乃行。益動而巽、日進无疆。天施地生、其益无方。凡益之道、與時偕行。
【読み】
〔彖傳〕益は、上を損らして下に益す。民說ぶこと疆[かぎ]り无し。上より下に下る、其の道大いに光[あき]らかなり。往く攸有るに利ろしとは、中正にして慶び有るなり。大川を渉るに利ろしとは、木道乃ち行わるるなり。益は動きて巽[したが]い、日に進むこと疆り无し。天は施し地は生じ、其の益すこと方无し。凡そ益の道は、時と偕[とも]に行わる。

〔象傳〕風雷、益。君子以見善則遷、有過則改。
【読み】
〔象傳〕風雷は、益なり。君子以て善を見れば則ち遷り、過有れば則ち改む。

元吉无咎、下不厚事也。
或益之、自外來也。
益用凶事、固有之也。
告公從、以益志也。
有孚惠心、勿問之矣。惠我德、大得志也。
莫益之、偏辭也。或擊之、自外來也。
【読み】
元いに吉にして咎无しとは、下事を厚くせざればなり。
或は之を益すとは、外より來るなり。
益すに凶事を用うとは、固く之を有するなり。
公に告げて從わるとは、益さんとするの志あるを以てなり。
孚有りて惠心ありとは、之を問うこと勿きなり。我が德を惠とすとは、大いに志を得るなり。
之を益すこと莫しとは、偏辭なり。或は之を擊つとは、外より來るなり。



 乾下兌上 夬

夬、揚于王庭。孚號、有厲。告自邑。不利卽戎。利有攸往。
【読み】
夬[かい:けつ]は、王庭に揚ぐ。孚ありて號び、厲[あや]うきこと有り。告ぐること邑よりす。戎に卽くに利ろしからず。往く攸有るに利ろし。

初九、壯于前趾。往不勝。爲咎。
九二、惕號。莫夜有戎勿恤。
九三、壯于頄。有凶。君子夬夬。獨行遇雨。若濡有慍、无咎。
九四、臀无膚。其行次且。牽羊悔亡。聞言不信。
九五、莧陸。夬夬。中行无咎。
上六、无號。終有凶。
【読み】
初九は、趾[あし]を前[すす]むるに壯んなり。往きて勝たず。咎を爲す。
九二は、惕れて號ぶ。莫夜に戎有れども恤うること勿かれ。
九三は、頄[つらぼね]に壯んなり。凶有り。君子は夬[さ]るべきを夬る。獨り行きて雨に遇う。濡るるが若くにして慍[いか]らるること有れども、咎无し。
九四は、臀に膚无し。其の行くこと次且[ししょ]たり。羊を牽けば悔亡ぶ。言を聞くも信ぜず。
九五は、莧陸[けんりく]なり。夬るべきを夬る。中行なれば咎无し。
上六は、號ぶこと无かれ。終に凶有り。

〔彖傳〕夬、決也。剛決柔也。健而說、決而和。揚于王庭、柔乘五剛也。孚號、有厲、其危乃光也。告自邑、不利卽戎、所尙乃竆也。利有攸往、剛長乃終也。
【読み】
〔彖傳〕夬は、決なり。剛の柔を決するなり。健にして說び、決して和す。王庭に揚ぐとは、柔五剛に乘ればなり。孚ありて號び、厲うきこと有りとは、其れ危ぶめば乃ち光[おお]いなるなり。告ぐること邑よりす、戎に卽くに利ろしからずとは、尙ぶ所乃ち竆するなり。往く攸有るに利ろしとは、剛長ずれば乃ち終わればなり。

〔象傳〕澤上於天、夬。君子以施祿及下、居德則忌。
【読み】
〔象傳〕澤の天に上るは、夬なり。君子以て祿を施して下に及ぼし、德に居ること則ち忌む。

不勝而往、咎也。
有戎勿恤、得中道也。
君子夬夬、終无咎也。
其行次且、位不當也。聞言不信、聰不明也。
中行无咎、中未光也。
无號之凶、終不可長也。
【読み】
勝たずして往くは、咎なり。
戎有れども恤うること勿かれとは、中道を得ればなり。
君子は夬るべきを夬るとは、終に咎无きなり。
其の行くこと次且たりとは、位當たらざればなり。言を聞くも信ぜずとは、聰くこと明らかならざればなり。
中行なれば咎无しとは、中未だ光[おお]いならざるなり。
號ぶこと无きの凶とは、終に長かる可からざるなり。



 巽下乾上 姤

姤、女壯。勿用取女。
【読み】
姤[こう]は、女壯んなり。用[もっ]て女を取[めと]ること勿かれ。

初六、繫于金柅。貞吉。有攸往、見凶。羸豕孚蹢躅。
九二、包有魚。无咎。不利賓。
九三、臀无膚。其行次且。厲无大咎。
九四、包无魚。起凶。
九五、以杞包瓜。含章。有隕自天。
上九、姤其角。吝无咎。
【読み】
初六は、金柅[きんじ]に繫ぐ。貞しくして吉なり。往く攸有れば、凶を見る。羸豕[るいし]孚に蹢躅[てきちょく]たり。
九二は、包[つと]に魚有り。咎无し。賓に利ろしからず。
九三は、臀に膚无し。其の行くこと次且[ししょ]たり。厲[あや]うけれども大いなる咎は无し。
九四は、包に魚无し。起てば凶なり。
九五は、杞を以て瓜を包む。章[あや]を含む。天より隕[お]つること有り。
上九は、其の角に姤[あ]う。吝なれども咎无し。

〔彖傳〕姤、遇也。柔遇剛也。勿用取女、不可與長也。天地相遇、品物咸章也。剛遇中正、天下大行也。姤之時義、大矣哉。
【読み】
〔彖傳〕姤は、遇うなり。柔剛に遇うなり。用て女を取ること勿かれとは、與に長かる可からざればなり。天地相遇いて、品物咸[ことごと]く章[あき]らかなり。剛中正に遇いて、天下大いに行わるるなり。姤の時義、大いなるかな。

〔象傳〕天下有風、姤。后以施命誥四方。
【読み】
〔象傳〕天の下に風有るは、姤なり。后以て命を施し四方に誥[つ]ぐ。

繫于金柅、柔道牽也。
包有魚、義不及賓也。
其行次且、行未牽也。
无魚之凶、遠民也。
九五含章、中正也。有隕自天、志不舍命也。
姤其角、上竆吝也。
【読み】
金柅に繫ぐとは、柔道牽けばなり。
包に魚有りとは、義として賓に及ばざるなり。
其の行くこと次且たりとは、行きて未だ牽かれざるなり。
魚无きの凶とは、民に遠ざかればなり。
九五の章を含むとは、中正なればなり。天より隕つること有りとは、志命を舍てざるなり。
其の角に姤うとは、上竆まりて吝なるなり。



 坤下兌上 萃

萃、亨。王假有廟。利見大人。亨。利貞。用大牲吉。利有攸往。
【読み】
萃[すい]は、亨る。王有廟に假[いた]る。大人を見るに利ろし。亨る。貞しきに利ろし。大牲を用いて吉なり。往く攸有るに利ろし。

初六、有孚不終。乃亂乃萃。若號、一握爲笑。勿恤。往无咎。
六二、引吉。无咎。孚乃利用禴。
六三、萃如、嗟如。无攸利。往无咎。小吝。
九四、大吉。无咎。
九五、萃有位。无咎。匪孚、元永貞、悔亡。
上六、齎咨涕洟。无咎。
【読み】
初六は、孚有るも終わらず。乃ち亂れ乃ち萃[あつ]まる。若し號べば、一握して笑いを爲さん。恤うること勿かれ。往けば咎无し。
六二は、引かれて吉なり。咎无し。孚あれば乃ち禴[やく]を用うるに利ろし。
六三は、萃如たり、嗟如たり。利ろしき攸无し。往けば咎无し。小しく吝なり。
九四は、大吉なり。咎无し。
九五は、萃めて位を有つ。咎无し。孚とせられざれども、元永貞なれば、悔亡ぶ。
上六は、齎咨[せいし]涕洟[ていい]す。咎无し。

〔彖傳〕萃、聚也。順以說、剛中而應。故聚也。王假有廟、致孝享也。利見大人、亨、聚以正也。用大牲吉、利有攸往、順天命也。觀其所聚、而天地萬物之情可見矣。
【読み】
〔彖傳〕萃は、聚まるなり。順にして以て說び、剛中にして應ず。故に聚まるなり。王有廟に假るとは、孝享を致すなり。大人を見るに利ろし、亨るとは、聚まるに正を以てすればなり。大牲を用いて吉なり、往く攸有るに利ろしとは、天命に順うなり。其の聚まる所を觀て、天地萬物の情見る可し。

〔象傳〕澤上于地、萃。君子以除戎器、戒不虞。
【読み】
〔象傳〕澤の地に上るは、萃なり。君子以て戎器を除[おさ]め、不虞を戒む。

乃亂乃萃、其志亂也。
引吉、无咎、中未變也。
往无咎、上巽也。
大吉、无咎、位不當也。
萃有位、志未光也。
齎咨涕洟、未安上也。
【読み】
乃ち亂れ乃ち萃まるとは、其の志亂るるなり。
引かれて吉なり、咎无しとは、中未だ變ぜざればなり。
往けば咎无しとは、上巽[したが]えばなり。
大吉にして、咎无しとは、位當たらざればなり。
萃めて位を有つとも、志未だ光[おお]いならざるなり。
齎咨涕洟すとは、未だ上に安んぜざるなり。



 巽下坤上 升

升、元亨。用見大人。勿恤。南征吉。
【読み】
升は、元いに亨る。用[もっ]て大人を見る。恤うること勿かれ。南征すれば吉なり。

初六、允升。大吉。
九二、孚乃利用禴。无咎。
九三、升虛邑。
六四、王用亨于岐山。吉无咎。
六五、貞吉。升階。
上六、冥升。利于不息之貞。
【読み】
初六は、允に升る。大吉なり。
九二は、孚あれば乃ち禴[やく]を用うるに利ろし。咎无し。
九三は、虛邑に升る。
六四は、王用て岐山に亨す。吉にして咎无し。
六五は、貞しければ吉なり。階[きざはし]に升る。
上六は、冥[くら]くして升る。息まざるの貞に利ろし。

〔彖傳〕柔以時升。巽而順、剛中而應。是以大亨。用見大人、勿恤、有慶也。南征吉、志行也。
【読み】
〔彖傳〕柔時を以て升る。巽にして順、剛中にして應ず。是を以て大いに亨る。用て大人を見る、恤うること勿かれとは、慶び有るなり。南征すれば吉なりとは、志行わるるなり。

〔象傳〕地中生木、升。君子以順德、積小以高大。
【読み】
〔象傳〕地中に木を生ずるは、升なり。君子以て德に順い、小を積みて以て高大なり。

允升、大吉、上合志也。
九二之孚、有喜也。
升虛邑、无所疑也。
王用亨于岐山、順事也。
貞吉、升階、大得志也。
冥升在上、消不富也。
【読み】
允に升る、大吉とは、上と志を合すればなり。
九二の孚ありとは、喜び有るなり。
虛邑に升るとは、疑う所无きなり。
王用て岐山に亨すとは、順いて事るなり。
貞しければ吉なり、階に升るとは、大いに志を得るなり。
冥くして升りて上に在るは、消して富まざるなり。



 坎下兌上 困

困、亨。貞。大人吉。无咎。有言不信。
【読み】
困は、亨る。貞し。大人は吉なり。咎无し。言うこと有るも信ぜられず。

初六、臀困于株木。入于幽谷、三歳不覿。
九二、困于酒食。朱紱方來。利用亨祀。征凶。无咎。
六三、困于石、據于蒺藜。入于其宮、不見其妻。凶。
九四、來徐徐。困于金車。吝、有終。
九五、劓刖、困于赤紱。乃徐有說。利用祭祀。
上六、困于葛藟于臲卼。曰動悔。有悔征吉。
【読み】
初六は、臀株木に困しむ。幽谷に入りて、三歳まで覿[み]ず。
九二は、酒食に困しむ。朱紱[しゅふつ]方に來らんとす。用[もっ]て亨祀するに利ろし。征けば凶なり。咎无し。
六三は、石に困しみ、蒺藜[しつれい]に據る。其の宮に入りて、其の妻を見ず。凶なり。
九四は、來ること徐徐たり。金車に困しむ。吝なれども、終わり有り。
九五は、劓[はなき]られ刖[あしき]られ、赤紱[せきふつ]に困しむ。乃ち徐[おもむ]ろに說び有り。用て祭祀するに利ろし。
上六は、葛藟[かつるい]に臲卼[げつこつ]に困しむ。曰[ここ]に動けば悔あり。悔ゆること有れば征きて吉なり。

〔彖傳〕困、剛揜也。險以說。困而不失其所亨、其唯君子乎。貞、大人吉、以剛中也。有言不信、尙口乃竆也。
【読み】
〔彖傳〕困は、剛揜わるるなり。險にして以て說ぶ。困しみて其の亨る所を失わざるは、其れ唯君子のみか。貞し、大人は吉とは、剛中なるを以てなり。言うこと有るも信ぜられずとは、口を尙べば乃ち竆するなり。

〔象傳〕澤无水、困。君子以致命遂志。
【読み】
〔象傳〕澤に水无きは、困なり。君子以て命を致し志を遂ぐ。

入于幽谷、幽不明也。
困于酒食、中有慶也。
據于蒺藜、乘剛也。入于其宮、不見其妻、不祥也。
來徐徐、志在下也。雖不當位、有與也。
劓刖、志未得也。乃徐有說、以中直也。利用祭祀、受福也。
困于葛藟、未當也。動悔、有悔吉、行也。
【読み】
幽谷に入るとは、幽にして明らかならざるなり。
酒食に困しむとは、中にして慶び有るなり。
蒺藜に據るとは、剛に乘ればなり。其の宮に入りて、其の妻を見ずとは、不祥なるなり。
來ること徐徐たりとは、志下に在ればなり。位に當たらずと雖も、與するもの有るなり。
劓られ刖らるとは、志未だ得ざるなり。乃ち徐ろに說び有りとは、中直なるを以てなり。用て祭祀するに利ろしとは、福を受くるなり。
葛藟に困しむとは、未だ當たらざるなり。動けば悔あり、悔ゆること有れば吉とは、行けばなり。



 巽下坎上 井

井、改邑不改井。无喪无得。往來井井。汔至亦未繘井。羸其瓶。凶。
【読み】
井は、邑を改むるも井を改めず。喪うこと无く得ること无し。往くも來るも井を井とす。汔[ほとん]ど至らんとして、亦未だ井に繘[つりいと]せず。其の瓶[つるべ]を羸[やぶ]る。凶なり。

初六、井泥不食。舊井无禽。
九二、井谷射鮒。甕敝漏。
九三、井渫不食。爲我心惻。可用汲。王明竝受其福。
六四、井甃。无咎。
九五、井冽、寒泉食。
上六、井收勿幕。有孚元吉。
【読み】
初六は、井泥して食らわれず。舊井に禽无し。
九二は、井谷鮒に射[そそ]ぐ。甕敝[やぶ]れて漏る。
九三は、井渫[さら]えたれども食らわれず。我が心の惻[いた]みを爲す。用[もっ]て汲む可し。王明らかなれば竝[とも]に其の福を受けん。
六四は、井甃[いしだたみ]す。咎无し。
九五は、井冽[きよ]くして、寒泉食らわる。
上六は、井收[く]みて幕[おお]うこと勿かれ。孚有れば元いに吉なり。

〔彖傳〕巽乎水而上水、井。井、養而不竆也。改邑不改井、乃以剛中也。汔至亦未繘井、未有功也。羸其瓶。是以凶也。
【読み】
〔彖傳〕水に巽[い]れて水を上ぐるは、井なり。井は、養いて竆まらざるなり。邑を改むるも井を改めずとは、乃ち剛中なるを以てなり。汔ど至らんとして亦未だ井に繘せずとは、未だ功有ざるなり。其の瓶を羸る。是を以て凶なるなり。

〔象傳〕木上有水、井。君子以勞民勸相。
【読み】
〔象傳〕木の上に水有るは、井なり。君子以て民を勞い勸めて相[たす]けしむ。

井泥不食、下也。舊井无禽、時舍也。
井谷射鮒、无與也。
井渫不食、行惻也。求王明、受福也。
井甃、无咎、脩井也。
寒泉之食、中正也。
元吉在上、大成也。
【読み】
井泥して食らわれずとは、下なればなり。舊井に禽无しとは、時舍つるなり。
井谷鮒に射ぐとは、與するもの无ければなり。
井渫えたれども食らわれずとは、行くもの惻むなり。王の明らかならんことを求むるは、福を受けんとてなり。
井甃す、咎无しとは、井を脩むるなり。
寒泉の食らわるるは、中正なればなり。
元いに吉にして上に在るは、大いに成れるなり。



 離下兌上 革

革、已日乃孚。元亨。利貞。悔亡。
【読み】
革は、已日にして乃ち孚とせらる。元いに亨る。貞しきに利ろし。悔亡ぶ。

初九、鞏用黄牛之革。
六二、已日乃革之。征吉、无咎。
九三、征凶。貞厲。革言三就、有孚。
九四、悔亡。有孚改命、吉。
九五、大人虎變。未占有孚。
上六、君子豹變。小人革面。征凶。居貞吉。
【読み】
初九は、鞏[かた]むるに黄牛の革を用う。
六二は、已日にして乃ち之を革む。征けば吉にして、咎无し。
九三は、征けば凶なり。貞しけれども厲[あや]うし。革言三たび就[な]れば、孚有り。
九四は、悔亡ぶ。孚有りて命を改むれば、吉なり。
九五は、大人虎變す。未だ占わずして孚有り。
上六は、君子は豹變す。小人は面を革む。征けば凶なり。貞しきに居れば吉なり。

〔彖傳〕革、水火相息、二女同居、其志不相得、曰革。已日乃孚、革而信之、文明以說。大亨以正、革而當、其悔乃亡。天地革而四時成。湯武革命、順乎天而應乎人。革之時、大矣哉。
【読み】
〔彖傳〕革は、水火相息し、二女同居して、其の志相得ざるを、革と曰う。已日にして乃ち孚とせらるとは、革めて之を信じ、文明にして以て說ぶなり。大いに亨りて以て正しくして、革めて當たれば、其の悔乃ち亡ぶ。天地革まりて四時成る。湯武命を革めて、天に順い人に應ず。革の時、大いなるかな。

〔象傳〕澤中有火、革。君子以治厤明時。
【読み】
〔象傳〕澤の中に火有るは、革なり。君子以て厤[こよみ]を治め時を明らかにす。

鞏用黄牛、不可以有爲也。
已日革之、行有嘉也。
革言三就、又何之矣。
改命之吉、信志也。
大人虎變、其文炳也。
君子豹變、其文蔚也。小人革面、順以從君也。
【読み】
鞏むるに黄牛を用うとは、以て爲すこと有る可からざるなり。
已日にして之を革むとは、行きて嘉きこと有るなり。
革言三たび就れば、又何くにか之かん。
命を改むるの吉とは、志を信ずればなり。
大人は虎變すとは、其の文炳[へい]たるなり。
君子は豹變すとは、其の文蔚[うつ]たるなり。小人は面を革むとは、順にして以て君に從うなり。



 巽下離上 鼎

鼎、元吉亨。
【読み】
鼎[てい]は、元いに吉にして亨る。

初六、鼎顚趾。利出否。得妾以其子。无咎。
九二、鼎有實。我仇有疾。不我能卽。吉。
九三、鼎耳革、其行塞。雉膏不食。方雨虧悔。終吉。
九四、鼎折足、覆公餗。其形渥。凶。
六五、鼎黄耳金鉉。利貞。
上九、鼎玉鉉。大吉、无不利。
【読み】
初六は、鼎[かなえ]趾[あし]を顚[さかしま]にす。否を出だすに利ろし。妾を得て以て其の子あり。咎无し。
九二は、鼎に實有り。我が仇に疾有り。我に卽くこと能わず。吉なり。
九三は、鼎の耳革まり、其の行塞がる。雉の膏食らわれず。方に雨ふらんとして悔を虧[か]く。終には吉なり。
九四は、鼎足を折り、公の餗[あつもの]を覆す。其の形渥[あく]たり。凶なり。
六五は、鼎黄耳金鉉あり。貞しきに利ろし。
上九は、鼎玉鉉あり。大吉にして利ろしからざること无し。

〔彖傳〕鼎、象也。以木巽火、亨飪也。聖人亨以享上帝、而大亨以養聖賢。巽而耳目聰明、柔進而上行、得中而應乎剛。是以元亨。
【読み】
〔彖傳〕鼎は、象なり。木を以て火に巽[い]れて、亨飪[ほうじん]するなり。聖人は亨して以て上帝を享[まつ]り、大いに亨して以て聖賢を養う。巽にして耳目聰明、柔進みて上行し、中を得て剛に應ず。是を以て元いに亨るなり。

〔象傳〕木上有火、鼎。君子以正位凝命。
【読み】
〔象傳〕木の上に火有るは、鼎なり。君子以て位を正し命を凝[な]す。

鼎顚趾、未悖也。利出否、以從貴也。
鼎有實、愼所之也。我仇有疾、終无尤也。
鼎耳革、失其義也。
覆公餗。信如何也。
鼎黄耳、中以爲實也。
玉鉉在上、剛柔節也。
【読み】
鼎趾を顚にすとは、未だ悖らざるなり。否を出だすに利ろしとは、以て貴きに從うなり。
鼎に實有りとは、之く所を愼むなり。我が仇に疾有るも、終に尤无きなり。
鼎の耳革まるとは、其の義を失うなり。
公の餗を覆す。信[まこと]に如何せん。
鼎に黄耳ありとは、中以て實と爲すなり。
玉鉉上に在りとは、剛柔節あるなり。



 震下震上 震

震、亨。震來虩虩。笑言啞啞。震驚百里、不喪匕鬯。
【読み】
震は、亨る。震の來るとき虩虩[げきげき]たり。笑言啞啞[あくあく]たり。震は百里を驚かせども、匕鬯[ひちょう]を喪わず。

初九、震來虩虩。後笑言啞啞。吉。
六二、震來厲。億喪貝、躋于九陵。勿逐。七日得。
六三、震蘇蘇。震行无眚。
九四、震遂泥。
六五、震往來厲。意无喪有事。
上六、震索索。視矍矍。征凶。震不于其躳、于其鄰、无咎。婚媾有言。
【読み】
初九は、震の來るとき虩虩たり。後には笑言啞啞たり。吉なり。
六二は、震の來るとき厲[あや]うし。億[ああ]貝を喪い、九陵に躋[のぼ]る。逐うこと勿かれ。七日にして得ん。
六三は、震いて蘇蘇たり。震いて行けば眚[わざわ]い无し。
九四は、震いて遂に泥む。
六五は、震いて往くも來るも厲うし。意[ああ]有事を喪うこと无し。
上六は、震いて索索たり。視ること矍矍[かくかく]たり。征けば凶なり。震うこと其の躳に于[おい]てせず、其の鄰に于てすれば、咎无し。婚媾言有り。

〔彖傳〕震、亨。震來虩虩、恐致福也。笑言啞啞、後有則也。震驚百里、驚遠而懼邇也。出可以守宗廟社稷、以爲祭主也。
【読み】
〔彖傳〕震は、亨る。震の來るとき虩虩たりとは、恐れて福を致すなり。笑言啞啞たりとは、後には則有るなり。震は百里を驚かすとは、遠きを驚かして邇[ちか]きを懼れしむるなり。出でては以て宗廟社稷を守り、以て祭主と爲る可きなり。

〔象傳〕洊雷、震。君子以恐懼脩省。
【読み】
〔象傳〕洊[しき]りに雷あるは、震なり。君子以て恐懼脩省す。

震來虩虩、恐致福也。笑言啞啞、後有則也。
震來厲、乘剛也。
震蘇蘇、位不當也。
震遂泥、未光也。
震往來厲、危行也。其事在中、大无喪也。
震索索、中未得也。雖凶无咎、畏鄰戒也。
【読み】
震の來るとき虩虩たりとは、恐れて福を致すなり。笑言啞啞たりとは、後には則有るなり。
震の來るとき厲うしとは、剛に乘ればなり。
震いて蘇蘇たりとは、位當たらざればなり。
震いて遂に泥むとは、未だ光[おお]いならざればなり。
震いて往くも來るも厲うしとは、危行なり。其の事中に在り、大いに喪うこと无きなり。
震いて索索たりとは、中未だ得ざればなり。凶なりと雖も咎无しとは、鄰を畏れて戒むればなり。



 艮下艮上 艮

艮其背、不獲其身。行其庭、不見其人。无咎。
【読み】
其の背に艮[とど]まりて、其の身を獲ず。其の庭に行きて、其の人を見ず。咎无し。

初六、艮其趾。无咎。利永貞。
六二、艮其腓。不拯其隨。其心不快。
九三、艮其限。列其夤。厲薫心。
六四、艮其身。无咎。
六五、艮其輔。言有序。悔亡。
上九、敦艮。吉。
【読み】
初六は、其の趾[あし]に艮まる。咎无し。永貞に利ろし。
六二は、其の腓[こむら]に艮まる。其の隨うところを拯[すく]わず。其の心は快からず。
九三は、其の限[こしぼね]に艮まる。其の夤[せぼね]を列[さ]く。厲[あや]うきこと心を薫[や]く。
六四は、其の身に艮まる。咎无し。
六五は、其の輔[ほほぼね]に艮まる。言に序有り。悔亡ぶ。
上九は、艮まるに敦し。吉なり。

〔彖傳〕艮、止也。時止則止、時行則行、動靜不失其時。其道光明。艮其止、止其所也。上下敵應、不相與也。是以不獲其身、行其庭、不見其人、无咎也。
【読み】
〔彖傳〕艮[ごん]は、止まるなり。時止まるべくば則ち止まり、時行うべくば則ち行き、動靜其の時を失わず。其の道光明なり。其の止に艮まるとは、其の所に止まるなり。上下敵應して、相與せず。是を以て其の身を獲ず、其の庭に行きて、其の人を見ず、咎无きなり。

〔象傳〕兼山、艮。君子以思不出其位。
【読み】
〔象傳〕兼ねて山あるは、艮なり。君子以て思うこと其の位を出でず。

艮其趾、未失正也。
不拯其隨、未退聽也。
艮其限、危薫心也。
艮其身、止諸躳也。
艮其輔、以中正也。
敦艮之吉、以厚終也。
【読み】
其の趾に艮まるとは、未だ正しきを失わざるなり。
其の隨うところを拯わずとは、未だ退きて聽かざればなり。
其の限に艮まるとは、危うきこと心を薫くなり。
其の身に艮まるとは、諸を躳に止むるなり。
其の輔に艮まるとは、中正なるを以てなり。
艮まるに敦きの吉とは、厚きを以て終わればなり。



 艮下巽上 漸

漸、女歸吉。利貞。
【読み】
漸[ぜん]は、女歸[とつ]ぐに吉なり。貞しきに利ろし。

初六、鴻漸于干。小子厲。有言、无咎。
六二、鴻漸于磐。飮食衎衎。吉。
九三、鴻漸于陸。夫征不復、婦孕不育。凶。利禦寇。
六四、鴻漸于木。或得其桷。无咎。
九五、鴻漸于陵。婦三歳不孕。終莫之勝。吉。
上九、鴻漸于陸。其羽可用爲儀。吉。
【読み】
初六は、鴻[かり]干[みぎわ]に漸[すす]む。小子は厲[あや]うし。言有れども、咎无し。
六二は、鴻磐[いわ]に漸む。飮食衎衎[かんかん]たり。吉なり。
九三は、鴻陸[くが]に漸む。夫征きて復らず、婦孕みて育わず。凶なり。寇を禦ぐに利ろし。
六四は、鴻木に漸む。或は其の桷[たるき]を得。咎无し。
九五は、鴻陵[おか]に漸む。婦三歳まで孕まず。終に之に勝つこと莫し。吉なり。
上九は、鴻陸[くもじ]に漸む。其の羽用[もっ]て儀と爲す可し。吉なり。

〔彖傳〕漸之進也、女歸吉也。進得位、往有功也。進以正、可以正邦也。其位剛得中也。止而巽、動不竆也。
【読み】
〔彖傳〕漸の進むや、女の歸ぐに吉なり。進みて位を得、往きて功有るなり。進むに正しきを以てし、以て邦を正す可きなり。其の位剛にして中を得るなり。止まりて巽[したが]い、動いて竆まらざるなり。

〔象傳〕山上有木、漸。君子以居賢德善俗。
【読み】
〔象傳〕山上に木有るは、漸なり。君子以て賢德に居りて俗を善くす。

小子之厲、義无咎也。
飮食衎衎、不素飽也。
夫征不復、離羣醜也。婦孕不育、失其道也。利用禦寇、順相保也。
或得其桷、順以巽也。
終莫之勝、吉、得所願也。
其羽可用爲儀、吉、不可亂也。
【読み】
小子の厲うしとは、義として咎无きなり。
飮食衎衎たりとは、素飽せざるなり。
夫征きて復らずとは、羣醜を離るるなり。婦孕みて育わずとは、其の道を失えばなり。用て寇を禦ぐに利ろしとは、順にして相保てばなり。
或は其の桷を得とは、順にして以て巽なればなり。
終に之に勝つこと莫し、吉とは、願う所を得るなり。
其の羽用て儀と爲す可し、吉とは、亂る可からざればなり。



 兌下震上 歸妹

歸妹、征凶。无攸利。
【読み】
歸妹[きまい]は、征けば凶なり。利ろしき攸无し。

初九、歸妹以娣。跛能履。征吉。
九二、眇能視。利幽人之貞。
六三、歸妹以須。反歸以娣。
九四、歸妹愆期。遲歸有時。
六五、帝乙歸妹。其君之袂、不如其娣之袂良。月幾望。吉。
上六、女承筐无實、士刲羊无血。无攸利。
【読み】
初九は、妹を歸がしむるに娣を以てす。跛[あしなえ]能く履む。征けば吉なり。
九二は、眇[すがめ]能く視る。幽人の貞に利ろし。
六三は、妹を歸がしむるに須を以てす。反歸して娣を以てす。
九四は、妹を歸がしむるに期を愆[すご]す。歸ぐを遲[ま]つこと時有り。
六五は、帝乙[ていいつ]妹を歸がしむ。其の君の袂は、其の娣の袂の良きに如かず。月望に幾し。吉なり。
上六は、女筐を承くるに實无く、士羊を刲[さ]くに血无し。利ろしき攸无し。

〔彖傳〕歸妹、天地之大義也。天地不交而萬物不興。歸妹、人之終始也。說以動。所歸妹也。征凶、位不當也。无攸利、柔乘剛也。
【読み】
〔彖傳〕歸妹は、天地の大義なり。天地交わらざれば萬物興らず。歸妹は、人の終始なり。說びて以て動く。歸ぐ所のものは妹なり。征けば凶とは、位當たらざればなり。利ろしき攸无しとは、柔剛に乘ればなり。

〔象傳〕澤上有雷、歸妹。君子以永終知敝。
【読み】
〔象傳〕澤上に雷有るは、歸妹なり。君子以て終わりを永くし敝[やぶ]るるを知る。

歸妹以娣、以恆也。跛能履吉、相承也。
利幽人之貞、未變常也。
歸妹以須、未當也。
愆期之志、有待而行也。
帝乙歸妹、不如其娣之袂良也、其位在中、以貴行也。
上六无實、承虛筐也。
【読み】
妹を歸がしむるに娣を以てすとは、恆を以てするなり。跛能く履むの吉とは、相承くればなり。
幽人の貞に利ろしとは、未だ常を變ぜざるなり。
妹を歸がしむるに須を以てすとは、未だ當たらざればなり。
期を愆すの志とは、待つこと有りて行くなり。
帝乙妹を歸がしむ、其の娣の袂の良きに如かずとは、其の位中に在り、貴きを以て行けばなり。
上六の實无きは、虛筐を承くるなり。



 離下震上 豐

豐、亨。王假之。勿憂。宜日中。
【読み】
豐は、亨る。王之に假[いた]る。憂うること勿かれ。日中に宜し。

初九、遇其配主。雖旬无咎。往有尙。
六二、豐其蔀。日中見斗。往得疑疾。有孚發若、吉。
九三、豐其沛。日中見沬。折其右肱。无咎。
九四、豐其蔀。日中見斗。遇其夷主、吉。
六五、來章、有慶譽。吉。
上六、豐其屋、蔀其家。闚其戶、闃其无人。三歳不覿。凶。
【読み】
初九は、其の配主に遇う。旬[ひと]しと雖も咎无し。往けば尙ばるること有り。
六二は、其の蔀[しとみ]を豐[おお]いにす。日中に斗を見る。往けば疑い疾[にく]まるることを得ん。孚有りて發若たれば、吉なり。
九三は、其の沛を豐いにす。日中に沬[ばい]を見る。其の右肱を折る。咎无し。
九四は、其の蔀を豐いにす。日中に斗を見る。其の夷主に遇えば、吉なり。
六五は、章を來せば、慶譽有り。吉なり。
上六は、其の屋を豐いにし、其の家に蔀す。其の戶を闚[うかが]うに、闃[げき]として其れ人无し。三歳まで覿[み]ず。凶なり。

〔彖傳〕豐、大也。明以動。故豐也。王假之、尙大也。勿憂、宜日中、宜照天下也。日中則昃、月盈則食。天地盈虛、與時消息。而況於人乎。況於鬼神乎。
【読み】
〔彖傳〕豐は、大なり。明にして以て動く。故に豐かなり。王之に假るとは、大を尙ぶなり。憂うること勿かれ、日中に宜しとは、宜しく天下を照らすべしとなり。日中すれば則ち昃[かたむ]き、月盈つれば則ち食[か]く。天地の盈虛は、時と消息す。而るを況や人に於てをや。況や鬼神に於てをや。

〔象傳〕雷電皆至、豐。君子以折獄致刑。
【読み】
〔象傳〕雷電皆至るは、豐なり。君子以て獄を折[さだ]め刑を致す。

雖旬无咎、過旬災也。
有孚發若、信以發志也。
豐其沛、不可大事也。折其右肱、終不可用也。
豐其蔀、位不當也。日中見斗、幽不明也。遇其夷主吉、行也。
六五之吉、有慶也。
豐其屋、天際翔也。闚其戶、闃其无人、自藏也。
【読み】
旬[ひと]しと雖も咎无しとは、旬しきを過ぐれば災いあるなり。
孚有りて發若たりとは、信[まこと]以て志を發するなり。
其の沛を豐いにすとは、大事に可ならざるなり。其の右肱を折るとは、終に用う可からざるなり。
其の蔀を豐いにすとは、位當たらざればなり。日中に斗を見るとは、幽[くら]くして明ならざるなり。其の夷主に遇えば吉とは、行けばなり。
六五の吉とは、慶び有るなり。
其の屋を豐いにすとは、天際に翔るなり。其の戶を闚うに、闃として其れ人无しとは、自ら藏[かく]るるなり。



 艮下離上 旅

旅、小亨。旅貞吉。
【読み】
旅は、小しく亨る。旅にては貞しければ吉なり。

初六、旅瑣瑣。斯其所取災。
六二、旅卽次。懷其資、得童僕貞。
九三、旅焚其次。喪其童僕。貞厲。
九四、旅于處。得其資斧。我心不快。
六五、射雉、一矢亡。終以譽命。
上九、鳥焚其巣。旅人先笑、後號咷。喪牛于易。凶。
【読み】
初六は、旅して瑣瑣たり。斯れ其の災いを取る所なり。
六二は、旅して次[やどり]に卽く。其の資[かね]を懷き、童僕の貞を得。
九三は、旅して其の次を焚かる。其の童僕を喪う。貞しけれども厲[あや]うし。
九四は、旅して于[ここ]に處る。其の資斧を得。我が心快からず。
六五は、雉を射て、一矢亡う。終に以て譽命あり。
上九は、鳥其の巣を焚かる。旅人先ず笑い、後には號き咷ぶ。牛を易に喪う。凶なり。

〔彖傳〕旅、小亨。柔得中乎外、而順乎剛、止而麗乎明。是以小亨。旅、貞吉也。旅之時義、大矣哉。
【読み】
〔彖傳〕旅は、小しく亨る。柔中を外に得て、剛に順い、止まりて明に麗[つ]く。是を以て小しく亨る。旅は、貞しければ吉なるなり。旅の時義、大いなるかな。

〔象傳〕山上有火、旅。君子以明愼用刑而不留獄。
【読み】
〔象傳〕山上に火有るは、旅なり。君子以て明らかに愼みて刑を用いて獄を留めず。

旅瑣瑣、志竆災也。
得童僕貞、終无尤也。
旅焚其次、亦以傷矣。以旅與下、其義喪也。
旅于處、未得位也。得其資斧、心未快也。
終以譽命、上逮也。
以旅在上。其義焚也。喪牛于易、終莫之聞也。
【読み】
旅して瑣瑣たりとは、志竆して災いあるなり。
童僕の貞を得とは、終に尤无きなり。
旅して其の次を焚かるとは、亦以て傷まし。旅を以て下に與すれば、其の義喪うなり。
旅して于に處るとは、未だ位を得ざるなり。其の資斧を得とは、未だ心快からざるなり。
終に以て譽命ありとは、上に逮べばなり。
旅を以て上に在り。其の義焚かるるなり。牛を易に喪うとは、終に之を聞くこと莫きなり。



 巽下巽上 巽

巽、小亨。利有攸往。利見大人。
【読み】
巽[そん]は、小しく亨る。往く攸有るに利ろし。大人を見るに利ろし。

初六、進退。利武人之貞。
九二、巽在牀下。用史巫紛若。吉、无咎。
九三、頻巽。吝。
六四、悔亡。田獲三品。
九五、貞吉悔亡。无不利。无初有終。先庚三日、後庚三日。吉。
上九、巽在牀下。喪其資斧。貞凶。
【読み】
初六は、進み退く。武人の貞に利ろし。
九二は、巽いて牀下に在り。史巫を用うること紛若たり。吉にして、咎无し。
九三は、頻りに巽[したが]う。吝なり。
六四は、悔亡ぶ。田[かり]して三品を獲。
九五は、貞しければ吉にして悔亡ぶ。利ろしからざること无し。初め无くして終わり有り。庚に先だつこと三日、庚に後るること三日。吉なり。
上九は、巽いて牀下に在り。其の資斧を喪う。貞しけれども凶なり。

〔彖傳〕重巽以申命。剛巽乎中正而志行、柔皆順乎剛。是以小亨。利有攸往、利見大人。
【読み】
〔彖傳〕重巽以て命を申[かさ]ぬ。剛は中正に巽いて志行われ、柔は皆剛に順う。是を以て小しく亨る。往く攸有るに利ろしく、大人を見るに利ろし。

〔象傳〕隨風、巽。君子以申命行事。
【読み】
〔象傳〕隨風は、巽なり。君子以て命を申ね事を行う。

進退、志疑也。利武人之貞、志治也。
紛若之吉、得中也。
頻巽之吝、志竆也。
田獲三品、有功也。
九五之吉、位正中也。
巽在牀下、上竆也。喪其資斧、正乎凶也。
【読み】
進み退くとは、志疑うなり。武人の貞に利ろしとは、志治まるなり。
紛若たるの吉とは、中を得ればなり。
頻りに巽うの吝とは、志竆すればなり。
田して三品を獲とは、功有るなり。
九五の吉とは、位正中なればなり。
巽いて牀下に在りとは、上竆まるなり。其の資斧を喪うとは、正しく凶なるなり。



 兌下兌上 兌

兌、亨。利貞。
【読み】
兌[だ:えつ]は、亨る。貞しきに利ろし。

初九、和兌。吉。
九二、孚兌。吉、悔亡。
六三、來兌。凶。
九四、商兌未寧。介疾有喜。
九五、孚于剥。有厲。
上六、引兌。
【読み】
初九は、和して兌[よろこ]ぶ。吉なり。
九二は、孚[まこと]ありて兌ぶ。吉にして、悔亡ぶ。
六三は、來りて兌ぶ。凶なり。
九四は、商[はか]りて兌ぶも、未だ寧からず。介[かた]く疾[にく]めば喜び有り。
九五は、剥に孚あり。厲[あや]うきこと有り。
上六は、引きて兌ぶ。

〔彖傳〕兌、說也。剛中而柔外。說以利貞。是以順乎天而應乎人。說以先民、民忘其勞。說以犯難、民忘其死。說之大、民勸矣哉。
【読み】
〔彖傳〕兌は、說ぶなり。剛中にして柔外なり。說びて以て貞しきに利ろし。是を以て天に順いて人に應ずるなり。說びて以て民に先だてば、民其の勞を忘る。說びて以て難を犯せば、民其の死を忘る。說びの大いなる、民勸むかな。

〔象傳〕麗澤、兌。君子以朋友講習。
【読み】
〔象傳〕麗澤は、兌なり。君子以て朋友講習す。

和兌之吉、行未疑也。
孚兌之吉、信志也。
來兌之凶、位不當也。
九四之喜、有慶也。
孚于剥、位正當也。
上六引兌、未光也。
【読み】
和して兌ぶの吉とは、行いて未だ疑われざるなり。
孚ありて兌ぶの吉とは、志を信にすればなり。
來りて兌ぶの凶とは、位當たらざればなり。
九四の喜びとは、慶び有るなり。
剥に孚ありとは、位正しく當たればなり。
上六は引きて兌ぶとは、未だ光[おお]いならざるなり。



 坎下巽上 渙

渙、亨。王假有廟。利渉大川。利貞。
【読み】
渙は、亨る。王有廟に假[いた]る。大川を渉るに利ろし。貞しきに利ろし。

初六、用拯馬壯。吉。
九二、渙奔其机。悔亡。
六三、渙其躳。无悔。
六四、渙其羣。元吉。渙有丘。匪夷所思。
九五、渙汗其大號。渙王居、无咎。
上九、渙其血去。逖出。无咎。
【読み】
初六は、用[もっ]て拯[すく]うに馬壯んなり。吉なり。
九二は、渙のとき其の机に奔る。悔亡ぶ。
六三は、其の躳を渙[ち]らす。悔无し。
六四は、其の羣を渙らす。元いに吉なり。渙るときは丘[あつ]まること有り。夷[つね]の思う所に匪ず。
九五は、渙のとき其の大號を汗す。渙のとき王として居るも、咎无し。
上九は、其の血[いた]みを渙らせば去る。逖[おそ]れ出づ。咎无し。

〔彖傳〕渙、亨、剛來而不竆、柔得位乎外而上同。王假有廟、王乃在中也。利渉大川、乘木有功也。
【読み】
〔彖傳〕渙は、亨るとは、剛來りて竆まらず、柔位を外に得て上同すればなり。王有廟に假るとは、王乃ち中に在るなり。大川を渉るに利ろしとは、木に乘りて功有るなり。

〔象傳〕風行水上、渙。先王以享于帝立廟。
【読み】
〔象傳〕風の水上に行くは、渙なり。先王以て帝を享り廟を立つ。

初六之吉、順也。
渙奔其机、得願也。
渙其躳、志在外也。
渙其羣、元吉、光大也。
王居无咎、正位也。
渙其血、遠害也。
【読み】
初六の吉とは、順なればなり。
渙のとき其の机に奔るとは、願いを得るなり。
其の躳を渙らすとは、志外に在るなり。
其の羣を渙らす、元いに吉とは、光大なればなり。
王として居るも咎无しとは、位を正しくすればなり。
其の血を渙らすとは、害に遠ざかるなり。



 兌下坎上 節

節、亨。苦節不可貞。
【読み】
節は、亨る。節に苦しむは貞くす可からず。

初九、不出戶庭。无咎。
九二、不出門庭。凶。
六三、不節若則嗟若。无咎。
六四、安節。亨。
九五、甘節。吉。往有尙。
上六、苦節。貞凶。悔亡。
【読み】
初九は、戶庭を出でず。咎无し。
九二は、門庭を出でず。凶なり。
六三は、節若たらざれば則ち嗟若たり。咎无し。
六四は、節に安んず。亨る。
九五は、節に甘んず。吉なり。往けば尙ばるること有り。
上六は、節に苦しむ。貞しけれども凶なり。悔亡ぶ。

〔彖傳〕節、亨、剛柔分而剛得中。苦節不可貞、其道竆也。說以行險、當位以節、中正以通。天地節而四時成。節以制度、不傷財、不害民。
【読み】
〔彖傳〕節は、亨るとは、剛柔分かれて剛中を得ればなり。節に苦しむは貞くす可からずとは、其の道竆まればなり。說びて以て險を行い、位に當たりて以て節あり、中正にして以て通ず。天地は節ありて四時成る。節して以て度を制すれば、財を傷らず、民を害せず。

〔象傳〕澤上有水、節。君子以制數度議德行。
【読み】
〔象傳〕澤の上に水有るは、節なり。君子以て數度を制し德行を議す。

不出戶庭、知通塞也。
不出門庭、凶、失時極也。
不節之嗟、又誰咎也。
安節之亨、承上道也。
甘節之吉、居位中也。
苦節、貞凶、其道竆也。
【読み】
戶庭を出でずとは、通塞を知ればなり。
門庭を出でず、凶とは、時を失すること極まるなり。
節せざるの嗟きとは、又誰をか咎めん。
節に安んずるの亨るは、上の道を承くればなり。
節を甘んずるの吉とは、位に居て中なればなり。
節に苦しむ、貞くすれば凶とは、其の道竆まればなり。



 兌下巽上 中孚

中孚、豚魚吉。利渉大川。利貞。
【読み】
中孚[ちゅうふ]は、豚魚も吉なり。大川を渉るに利ろし。貞しきに利ろし。

初九、虞吉。有它不燕。
九二、鳴鶴在陰、其子和之。我有好爵。吾與爾靡之。
六三、得敵。或鼓、或罷、或泣、或歌。
六四、月幾望。馬匹亡。无咎。
九五、有孚攣如。无咎。
上九、翰音登于天。貞凶。
【読み】
初九は、虞[やす]んずれば吉なり。它[た]有れば燕[やす]からず。
九二は、鳴鶴陰に在り、其の子之に和す。我に好き爵有り。吾爾と之を靡[とも]にせん。
六三は、敵を得たり。或は鼓ち、或は罷め、或は泣き、或は歌う。
六四は、月望に幾[ちか]し。馬匹亡う。咎无し。
九五は、孚有りて攣如[れんじょ]たり。咎无し。
上九は、翰音天に登る。貞しけれども凶なり。

〔彖傳〕中孚、柔在内而剛得中。說而巽、孚乃化邦也。豚魚吉、信及豚魚也。利渉大川、乘木舟虛也。中孚以利貞、乃應乎天也。
【読み】
〔彖傳〕中孚は、柔内に在りて剛中を得たり。說びて巽[したが]い、孚ありて乃ち邦を化するなり。豚魚も吉とは、信豚魚に及ぶなり。大川を渉るに利ろしとは、木に乘りて舟虛なればなり。中孚にして以て貞しきに利ろしとは、乃ち天に應ずるなり。

〔象傳〕澤上有風、中孚。君子以議獄緩死。
【読み】
〔象傳〕澤の上に風有るは、中孚なり。君子以て獄を議し死を緩くす。

初九虞吉、志未變也。
其子和之、中心願也。
或鼓或罷、位不當也。
馬匹亡、絶類上也。
有孚攣如、位正當也。
翰音登于天、何可長也。
【読み】
初九の虞んずれば吉とは、志未だ變ぜざるなり。
其の子之に和すとは、中心より願うなり。
或は鼓し或は罷むとは、位當たらざればなり。
馬匹亡うとは、類を絶ちて上るなり。
孚有りて攣如たりとは、位正に當たればなり。
翰音天に登る、何ぞ長かる可けんや。



 艮下震上 小過

小過、亨。利貞。可小事。不可大事。飛鳥遺之音。不宜上、宜下。大吉。
【読み】
小過は、亨る。貞しきに利ろし。小事には可なり。大事には可ならず。飛鳥之が音を遺す。上るに宜しからず、下るに宜し。大いに吉なり。

初六、飛鳥以凶。
六二、過其祖、遇其妣。不及其君、遇其臣。无咎。
九三、弗過防之、從或戕之。凶。
九四、无咎。弗過遇之。往厲必戒。勿用永貞。
六五、密雲不雨。自我西郊。公弋取彼在穴。
上六、弗遇過之。飛鳥離之。凶。是謂災眚。
【読み】
初六は、飛鳥以て凶なり。
六二は、其の祖を過ぎ、其の妣に遇う。其の君に及ばずして、其の臣に遇う。咎无し。
九三は、過ぎて之を防がざれば、從いて或は之を戕[そこな]う。凶なり。
九四は、咎无し。過ぎずして之に遇う。往けば厲[あや]うくして必ず戒むべし。永貞を用うること勿かれ。
六五は、密雲あれども雨ふらず。我が西郊よりす。公弋[いぐるみ]して彼の穴に在るを取る。
上六は、遇わずして之を過ぐ。飛鳥之に離[かか]る。凶なり。是を災眚[さいせい]と謂う。

〔彖傳〕小過、小者過而亨也。過以利貞、與時行也。柔得中。是以小事吉也。剛失位而不中。是以不可大事也。有飛鳥之象焉。飛鳥遺之音、不宜上、宜下、大吉、上逆而下順也。
【読み】
〔彖傳〕小過は、小なる者の過ぎて亨るなり。過ぎて以て貞しきに利ろしとは、時と與に行うなり。柔中を得。是を以て小事には吉なるなり。剛位を失いて中ならず。是を以て大事には可ならざるなり。飛鳥の象有り。飛鳥之が音を遺す、上るに宜しからず、下るに宜し、大いに吉とは、上るは逆にして下るは順なればなり。

〔象傳〕山上有雷、小過。君子以行過乎恭、喪過乎哀、用過乎儉。
【読み】
〔象傳〕山上に雷有るは、小過なり。君子以て行いは恭に過ぎ、喪は哀に過ぎ、用は儉に過ぐ。

飛鳥以凶、不可如何也。
不及其君、臣不可過也。
從或戕之、凶如何也。
弗過遇之、位不當也。往厲、必戒、終不可長也。
密雲不雨、已上也。
弗遇過之、已亢也。
【読み】
飛鳥以て凶とは、如何ともす可からざるなり。
其の君に及ばずとは、臣は過ぐ可からざるなり。
從いて或いは之を戕うとは、凶なること如何せん。
過ぎずして之に遇うとは、位當たらざればなり。往けば厲うくして、必ず戒めむべしとは、終に長かるべからざればなり。
密雲あれども雨ふらずとは、已[はなは]だ上ればなり。
遇わずして之に過ぐとは、已だ亢[たがぶ]れるなり。



 離下坎上 旣濟

旣濟、亨小。利貞。初吉、終亂。
【読み】
旣濟[きせい]は、亨ること小なり。貞しきに利ろし。初めは吉にして、終わりは亂る。

初九、曳其輪、濡其尾。无咎。
六二、婦喪其茀。勿逐。七日得。
九三、高宗伐鬼方、三年克之。小人勿用。
六四、繻有衣袽。終日戒。
九五、東鄰殺牛、不如西鄰之禴祭。實受其福。
上六、濡其首。厲。
【読み】
初九は、其の輪を曳き、其の尾を濡らす。咎无し。
六二は、婦其の茀[ふつ]を喪う。逐うこと勿かれ。七日にして得ん。
九三は、高宗鬼方を伐ち、三年にして之に克つ。小人は用うること勿かれ。
六四は、繻[ぬ]るるに衣袽[いじょ]有り。終日戒む。
九五は、東鄰に牛を殺すは、西鄰の禴祭[やくさい]如かず。實に其の福を受く。
上六は、其の首を濡らす。厲[あや]うし。

〔彖傳〕旣濟、亨、小者亨也。利貞、剛柔正而位當也。初吉、柔得中也。終止則亂、其道竆也。
【読み】
〔彖傳〕旣濟は、亨るとは、小なる者の亨るなり。貞しきに利ろしとは、剛柔正しくして位當たればなり。初めは吉とは、柔中を得ればなり。終わり止まれば則ち亂るとは、其の道竆まるなり。

〔象傳〕水在火上、旣濟。君子以思患而豫防之。
【読み】
〔象傳〕水の火の上に在るは、旣濟なり。君子以て患えを思いて豫め之を防ぐ。

曳其輪、義无咎也。
七日得、以中道也。
三年克之、憊也。
終日戒、有所疑也。
東鄰殺牛、不如西鄰之時也、實受其福、吉大來也。
濡其首、厲、何可久也。
【読み】
其の輪を曳くとは、義として咎无きなり。
七日にして得んとは、中の道を以てなり。
三年にして之に克つとは、憊[つか]るるなり。
終日に戒むとは、疑う所有ればなり。
東鄰の牛を殺すは、西鄰の時なるに如かず、實に其の福を受くとは、吉大いに來るなり。
其の首を濡らす、厲うしとは、何ぞ久しかる可けんや。



 坎下離上 未濟

未濟、亨。小狐汔濟、濡其尾。无攸利。
【読み】
未濟[びせい]は、亨る。小狐汔[ほとん]ど濟[わた]らんとして、其の尾を濡らす。利ろしき攸无し。

初六、濡其尾。吝。
九二、曳其輪。貞吉。
六三、未濟。征凶。利渉大川。
九四、貞吉、悔亡。震用伐鬼方、三年有賞于大國。
六五、貞吉无悔。君子之光。有孚吉。
上九、有孚于飮酒。无咎。濡其首、有孚失是。
【読み】
初六は、其の尾を濡らす。吝なり。
九二は、其の輪を曳く。貞しければ吉なり。
六三は、未だ濟[な]らず。征けば凶なり。大川を渉るに利ろし。
九四は、貞しければ吉にして、悔亡ぶ。震[うご]いて用[もっ]て鬼方を伐てば、三年にして大國に賞せらるること有り。
六五は、貞しければ吉にして悔无し。君子の光あり。孚有りて吉なり。
上九は、飮酒に孚有り。咎无し。其の首を濡らすときは、孚有れども是を失う。

〔彖傳〕未濟、亨、柔得中也。小狐汔濟、未出中也。濡其尾、无攸利、不續終也。雖不當位、剛柔應也。
【読み】
〔彖傳〕未濟は、亨るとは、柔中を得ればなり。小狐汔ど濟らんとすとは、未だ中を出でざるなり。其の尾を濡らす、利ろしき攸无しとは、續いて終えざればなり。位に當たらずと雖も、剛柔應ずるなり。

〔象傳〕火在水上、未濟。君子以愼辨物居方。
【読み】
〔象傳〕火の水の上に在るは、未濟なり。君子以て愼んで物を辨じ方に居く。

濡其尾、亦不知極也。
九二貞吉、中以行正也。
未濟、征凶、位不當也。
貞吉悔亡、志行也。
君子之光、其暉吉也。
飮酒濡首、亦不知節也。
【読み】
其の尾を濡らすとは、亦極を知らざるなり。
九二の貞しければ吉とは、中以て正を行えばなり。
未だ濟らず、征けば凶とは、位當たらざればなり。
貞しければ吉にして悔亡ぶとは、志行わるるなり。
君子の光ありとは、其の暉[かがや]き吉なるなり。
酒を飮みて首を濡らすとは、亦節を知らざるなり。


周易繋辭上傳

天尊地卑、乾坤定矣。卑高以陳、貴賤位矣。動靜有常、剛柔斷矣。方以類聚、物以羣分、吉凶生矣。在天成象、在地成形、變化見矣。
【読み】
天は尊く地は卑くして、乾坤定まる。卑高以て陳[つら]なりて、貴賤位す。動靜常有りて、剛柔斷[わか]る。方は類を以て聚まり、物は羣を以て分かれて、吉凶生ず。天に在りては象を成し、地に在りては形を成して、變化見[あらわ]る。

是故剛柔相摩、八卦相蕩。鼓之以雷霆、潤之以風雨、日月運行、一寒一暑。
【読み】
是の故に剛柔相摩し、八卦相蕩[うご]かす。之を鼓するに雷霆を以てし、之を潤すに風雨を以てし、日月運行して、一たびは寒く一たびは暑し。

乾道成男、坤道成女。乾知大始、坤作成物。乾以易知、坤以簡能。易則易知、簡則易從。易知則有親、易從則有功。有親則可久、有功則可大。可久則賢人之德、可大則賢人之業。易簡而天下之理得矣。天下之理得、而成位乎其中矣。(第一章)
【読み】
乾道は男を成し、坤道は女を成す。乾は大始を知[つかさど]り、坤は成物を作す。乾は易を以て知り、坤は簡を以て能くす。易なれば則ち知り易く、簡なれば則ち從い易し。知り易ければ則ち親しみ有り、從い易ければ則ち功有り。親しみ有れば則ち久しかる可く、功有れば則ち大いなる可し。久しかる可きは則ち賢人の德、大いなる可きは則ち賢人の業なり。易簡にして天下の理得。天下の理得て、位を其の中に成す。(第一章)

聖人設卦觀象、繫辭焉而明吉凶。剛柔相推而生變化。是故吉凶者失得之象也。悔吝者憂虞之象也。變化者進退之象也。剛柔者晝夜之象也。六爻之動、三極之道也。
【読み】
聖人卦を設けて象を觀、辭を繫けて吉凶を明らかにす。剛柔相推して變化生ず。是の故に吉凶とは失得の象なり。悔吝とは憂虞の象なり。變化とは進退の象なり。剛柔とは晝夜の象なり。六爻の動きは、三極の道なり。

是故君子所居而安者、易之序也。所樂而玩者、爻之辭也。是故君子居則觀其象而玩其辭、動則觀其變而玩其占。是以自天祐之、吉无不利。(第二章)
【読み】
是の故に君子の居りて安んずる所の者は、易の序なり。樂んで玩ぶ所の者は、爻の辭なり。是の故に君子は居れば則ち其の象を觀て其の辭を玩び、動けば則ち其の變を觀て其の占を玩ぶ。是を以て天より之を祐け、吉にして利ろしからざること无し。(第二章)

彖者言乎象者也。爻者言乎變者也。吉凶者言乎其失得也。悔吝者言乎其小疵也。无咎者善補過也。是故列貴賤者存乎位、齊小大者存乎卦、辯吉凶者存乎辭、憂悔吝者存乎介、震无咎者存乎悔。是故卦有小大、辭有險易。辭也者各指其所之。(第三章)
【読み】
彖とは象を言う者なり。爻とは變を言う者なり。吉凶とは其の失得を言うなり。悔吝とは其の小疵を言うなり。咎无しとは善く過を補うなり。是の故に貴賤を列ぬる者は位に存し、小大を齊[さだ]むる者は卦に存し、吉凶を辯ずる者は辭に存し、悔吝を憂うる者は介に存し、震[うご]きて咎无き者は悔に存す。是の故に卦に小大有り、辭に險易有り。辭なる者は各々其の之く所を指す。(第三章)

易與天地準。故能彌綸天地之道。
【読み】
易は天地と準[なぞら]う。故に能く天地の道を彌綸[びりん]す。

仰以觀於天文、俯以察於地理。是故知幽明之故。原始反終。故知死生之說。精氣爲物、遊魂爲變。是故知鬼神之情状。
【読み】
仰いで以て天文を觀、俯して以て地理を察す。是の故に幽明の故を知る。始めを原[たず]ねて終わりに反る。故に死生の說を知る。精氣物を爲し、遊魂變を爲す。是の故に鬼神の情状を知る。

與天地相似。故不違。知周乎萬物而道濟天下。故不過。旁行而不流、樂天知命。故不憂。安土敦乎仁。故能愛。
【読み】
天地と相似たり。故に違わず。知萬物に周くして道天下を濟[すく]う。故に過たず。旁[あまね]く行きて流れず、天を樂しみ命を知る。故に憂えず。土に安んじ仁に敦し。故に能く愛す。

範圍天地之化而不過、曲成萬物而不遺、通乎晝夜之道而知。故神无方而易无體。(第四章)
【読み】
天地の化を範圍して過ぎしめず、萬物を曲成して遺さず、晝夜の道を通じて知る。故に神は方无くして易は體无し。(第四章)

一陰一陽之謂道。繼之者善也。成之者性也。仁者見之謂之仁、知者見之謂之知、百姓日用而不知。故君子之道鮮矣。顯諸仁、藏諸用、鼓萬物而不與聖人同憂。盛德大業至矣哉。富有之謂大業、日新之謂盛德。
【読み】
一陰一陽之を道と謂う。之を繼ぐ者は善なり。之を成す者は性なり。仁者は之を見て之を仁と謂い、知者は之を見て之を知と謂い、百姓は日に用いて知らず。故に君子の道は鮮し。諸を仁に顯[あらわ]し、諸を用に藏し、萬物を鼓して聖人と憂えを同じくせず。盛德大業至れるかな。富有之を大業と謂い、日新之を盛德と謂う。

生生之謂易、成象之謂乾、效法之謂坤。極數知來之謂占、通變之謂事、陰陽不測之謂神。(第五章)
【読み】
生生之を易と謂い、象を成す之を乾と謂い、法を效[いた]す之を坤と謂う。數を極め來るを知る之を占と謂い、變に通ずる之を事と謂い、陰陽測られざる之を神と謂う。(第五章)

夫易廣矣大矣。以言乎遠則不禦、以言乎邇則靜而正、以言乎天地之間則備矣。
【読み】
夫れ易は廣し大いなり。以て遠きを言えば則ち禦[とど]まらず、以て邇きを言えば則ち靜かにして正しく、以て天地の間を言えば則ち備わる。

夫乾其靜也專、其動也直。是以大生焉。夫坤其靜也翕、其動也闢。是以廣生焉。
【読み】
夫れ乾は其の靜かなるや專らにして、其の動くや直し。是を以て大いに生ず。夫れ坤は其の靜かなるや翕[あ]い、其の動くや闢く。是を以て廣く生ず。

廣大配天地、變通配四時、陰陽之義配日月、易簡之善配至德。(第六章)
【読み】
廣大は天に配し、變通は四時に配し、陰陽の義は日月に配し、易簡の善は至德に配す。(第六章)

子曰、易其至矣乎。夫易、聖人所以崇德而廣業也。知崇禮卑。崇效天、卑法地。天地設位、而易行乎其中矣。成性存存、道義之門。(第七章)
【読み】
子曰く、易は其れ至れるかな。夫れ易は、聖人の德を崇くし業を廣むる所以なり。知は崇く禮は卑し。崇きは天に效[なら]い、卑きは地に法る。天地位を設けて、易其の中に行わる。性を成し存すべきを存するは、道義の門なり。(第七章)

聖人有以見天下之賾、而擬諸其形容、象其物宜。是故謂之象。
【読み】
聖人以て天下の賾[さく]を見ること有りて、諸を其の形容に擬[なぞら]え、其の物宜に象る。是の故に之を象と謂う。

聖人有以見天下之動、而觀其會通、以行其典禮、繫辭焉以斷其吉凶。是故謂之爻。
【読み】
聖人以て天下の動を見ること有りて、其の會通を觀、以て其の典禮を行い、辭を繫けて以て其の吉凶を斷ず。是の故に之を爻と謂う。

言天下之至賾而不可惡也。言天下之至動而不可亂也。擬之而後言、議之而後動、擬議以成其變化。
【読み】
天下の至賾を言えども惡む可からざるなり。天下の至動を言えども亂る可からざるなり。之を擬えて後に言い、之を議りて後に動き、擬議して以て其の變化を成す。

鳴鶴在陰、其子和之。我有好爵、吾與爾靡之。子曰、君子居其室出其言善、則千里之外應之。況其邇者乎。居其室出其言不善、則千里之外違之。況其邇者乎。言出乎身加乎民、行發乎邇見乎遠。言行君子之樞機。樞機之發、榮辱之主也。言行、君子之所以動天地也。可不愼乎。
【読み】
鳴鶴陰に在り、其の子之に和す。我に好爵有り、吾爾と之に靡[よ]わん。子曰く、君子其の室に居りて其の言を出だすこと善ければ、則ち千里の外も之に應ず。況や其の邇き者をや。其の室に居りて其の言を出だすこと善からざれば、則ち千里の外も之に違う。況や其の邇き者をや。言は身に出でて民に加わり、行いは邇きに發して遠きに見る。言行は君子の樞機なり。樞機の發は、榮辱の主なり。言行は、君子の天地を動かす所以なり。愼まざる可けんや。

同人先號咷而後笑。子曰、君子之道、或出或處、或默或語。二人同心、其利斷金。同心之言、其臭如蘭。
【読み】
人に同じくするに先には號き咷びて後には笑う。子曰く、君子の道、或は出で或は處り、或は默し或は語る。二人心を同じくすれば、其の利きこと金を斷つ。同心の言は、其の臭蘭の如し。

初六、藉用白茅。无咎。子曰、苟錯諸地而可矣。藉之用茅。何咎之有。愼之至也。夫茅之爲物薄、而用可重也。愼斯術也以往、其无所失矣。
【読み】
初六、藉[し]くに白茅を用う。咎无し。子曰く、苟も諸を地に錯きて可なり。之を藉くに茅を用う。何の咎か之れ有らん。愼むの至りなり。夫れ茅の物爲る薄けれど、用は重かる可きなり。斯の術を愼みて以て往けば、其れ失する所无からん。

勞謙。君子有終吉。子曰、勞而不伐、有功而不德、厚之至也。語以其功下人者也。德言盛、禮言恭。謙也者致恭以存其位者也。
【読み】
勞謙す。君子終わり有りて吉なり。子曰く、勞して伐[ほこ]らず、功有りて德とせず、厚きの至りなり。其の功を以て人に下る者を語[い]えるなり。德には盛を言い、禮には恭を言う。謙とは恭を致して以て其の位を存する者なり。

亢龍有悔。子曰、貴而无位、高而无民、賢人在下位而无輔。是以動而有悔也。
【読み】
亢龍悔有り。子曰く、貴くして位无く、高くして民无く、賢人下位に在りて輔くる无し。是を以て動きて悔有るなり。

不出戶庭。无咎。子曰、亂之所生也、則言語以爲階。君不密則失臣、臣不密則失身、幾事不密則害成。是以君子愼密而不出也。
【読み】
戶庭を出です。咎无し。子曰く、亂の生ずる所は、則ち言語以て階を爲す。君密ならざれば則ち臣を失い、臣密ならざれば則ち身を失い、幾事密ならざれば則ち害成る。是を以て君子は愼密にして出さざるなり。

子曰、作易者、其知盗乎。易曰、負且乘、致寇至。負也者、小人之事也。乘也者、君子之器也。小人而乘君子之器、盗思奪之矣。上慢下暴、盗思伐之矣。慢藏誨盗、冶容誨淫。易曰、負且乘、致寇至、盗之招也。(第八章)
【読み】
子曰く、易を作る者は、其れ盗を知れるか。易に曰く、負い且つ乘り、寇の至るを致す、と。負うとは、小人の事なり。乘るとは、君子の器なり。小人にして君子の器に乘れば、盗之を奪わんことを思う。上慢にして下暴なれば、盗之を伐たんことを思う。藏[おさ]むることを慢かにすれば盗を誨え、冶[あで]やかなる容は淫を誨う。易に曰く、負い且つ乘り、寇の至るを致すとは、盗を之れ招くなり。(第八章)

天一地二。天三地四。天五地六。天七地八。天九地十。天數五、地數五。五位相得而各有合。天數二十有五。地數三十。凡天地之數五十有五。此所以成變化而行鬼神也。
【読み】
天一地二。天三地四。天五地六。天七地八。天九地十。天の數五、地の數五。五位相得て各々合うこと有り。天の數二十有五。地の數三十。凡そ天地の數五十有五。此れ變化を成して鬼神を行う所以なり。

大衍之數五十、其用四十有九。分而爲二以象兩、掛一以象三、揲之以四、以象四時。歸奇於扐以象閏。五歳有再閏。故再扐而後掛。乾之策二百一十有六、坤之策百四十有四、凡三百有六十、當期之日。二篇之策萬有一千五百二十、當萬物之數也。是故四營而成易、十有八變而成卦、八卦而小成。引而伸之、觸類而長之、天下之能事畢矣。
【読み】
大衍の數五十、其の用四十有九。分かちて二と爲し以て兩に象り、一を掛けて以て三に象り、之を揲[かぞ]うるに四を以てし、以て四時に象り、奇を扐[ろく]に歸して以て閏[じゅん]に象る。五歳にして再閏有り。故に再扐して後に掛く。乾の策二百一十有六、坤の策百四十有四、凡そ三百有六十、期の日に當たる。二篇の策は萬有一千五百二十、萬物の數に當たる。是の故に四營して易を成し、十有八變にして卦を成し、八卦にして小成す。引きて之を伸べ、類に觸れて之を長くすれば、天下の能事畢わる。

顯道神德行。是故可與酬酢、可與祐神矣。子曰、知變化之道者、其知神之所爲乎。(第九章)
【読み】
道を顯らかにして德行を神にす。是の故に與に酬酢す可く、與に神を祐く可し。子曰く、變化の道を知る者は、其れ神の爲す所を知るか。(第九章)

易有聖人之道四焉。以言者尙其辭、以動者尙其變、以制器者尙其象、以卜筮者尙其占。
【読み】
易に聖人の道四つ有り。以て言う者は其の辭を尙び、以て動く者は其の變を尙び、以て器を制する者は其の象を尙び、以て卜筮する者は其の占を尙ぶ。

是以君子將有爲也、將有行也、問焉而以言。其受命也如響、无有遠近幽深、遂知來物。非天下之至精、其孰能與於此。
【読み】
是を以て君子將に爲すこと有らんとし、將に行うこと有らんとするや、焉に問いて以て言う。其の命を受くるや響きの如く、遠近幽深有ること无く、遂に來物を知る。天下の至精に非ざれば、其れ孰か能く此に與らん。

參伍以變、錯綜其數。通其變、遂成天地之文、極其數、遂定天下之象。非天下之至變、其孰能與於此。
【読み】
參伍して以て變じ、其の數を錯綜す。其の變に通じて、遂に天地の文を成し、其の數を極めて、遂に天下の象を定む。天下の至變に非ざれば、其れ孰か能く此に與らん。

易无思也、无爲也。寂然不動、感而遂通天下之故。非天下之至神、其孰能與於此。
【読み】
易は思うこと无きなり、爲すこと无きなり。寂然として動かず、感じて遂に天下の故に通ず。天下の至神に非ざれば、其れ孰か能く此に與らん。

夫易聖人之所以極深而研幾也。唯深也。故能通天下之志。唯幾也。故能成天下之務。唯神也。故不疾而速、不行而至。
【読み】
夫れ易は聖人の深きを極めて幾を研く所以なり。唯深きなり。故に能く天下の志に通ず。唯幾なり。故に能く天下の務めを成す。唯神なり。故に疾からずして速やかに、行かずして至る。

子曰、易有聖人之道四焉者、此之謂也。(第十章)
【読み】
子曰く、易に聖人の道四つ有りとは、此れを之れ謂うなり。(第十章)

子曰、夫易何爲者也。夫易開物成務、冒天下之道。如斯而巳者也。是故聖人以通天下之志、以定天下之業、以斷天下之疑。
【読み】
子曰く、夫れ易は何する者ぞ。夫れ易は物を開き務めを成し、天下の道を冒[おお]う。斯の如きのみなる者なり。是の故に聖人は以て天下の志に通じ、以て天下の業を定め、以て天下の疑いを斷ず。

是故蓍之德、圓而神。卦之德、方以知。六爻之義、易以貢。聖人以此洗心、退藏於密、吉凶與民同患。神以知來、知以藏往。其孰能與於此哉。古之聰明睿知、神武而不殺者夫。
【読み】
是の故に蓍の德は、圓にして神なり。卦の德は、方にして以て知なり。六爻の義は、易わりて以て貢[つ]ぐ。聖人此を以て心を洗い、退きて密に藏れ、吉凶民と患えを同じくす。神は以て來を知り、知は以て往を藏[おさ]む。其れ孰か能く此に與らんや。古の聰明睿知、神武にして殺さざる者か。

是以明於天之道、而察於民之故、是興神物以前民用。聖人以此齊戒、以神明其德夫。
【読み】
是を以て天の道を明らかにして、民の故を察し、是に神物を興して以て民用に前[さき]だつ。聖人は此を以て齊戒し、以て其の德を神明にす。

是故闔戶謂之坤、闢戶謂之乾、一闔一闢謂之變、往來不窮謂之通、見乃謂之象、形乃謂之器、制而用之謂之法、利用出入民咸用之謂之神。
【読み】
是の故に戶を闔[とざ]す、之を坤と謂い、戶を闢[ひら]く、之を乾と謂い、一闔一闢、之を變と謂い、往來窮まらざる、之を通と謂い、見[あらわ]るる、乃ち之を象と謂い、形ある、乃ち之を器と謂い、制して之を用うる、之を法と謂い、利用出入して民咸之を用う、之を神と謂う。

是故易有太極。是生兩儀。兩儀生四象、四象生八卦。八卦定吉凶、吉凶生大業。
【読み】
是の故に易に太極有り。是れ兩儀を生ず。兩儀四象を生じ、四象八卦を生ず。八卦は吉凶を定め、吉凶は大業を生ず。

是故法象莫大乎天地、變通莫大乎四時、縣象著明莫大乎日月、崇高莫大乎富貴。備物致用、立成器以爲天下利、莫大乎聖人。探賾索隱、鉤深致遠、以定天下之吉凶、成天下之亹亹者、莫大乎蓍龜。
【読み】
是の故に法象は天地より大なるは莫く、變通は四時より大なるは莫く、縣象の著明なるは日月より大なるは莫く、崇高は富貴より大なるは莫し。物を備え用を致し、成器を立てて以て天下の利を爲すは、聖人より大なるは莫し。賾[さく]を探り隱を索め、深きを鉤[と]り遠きを致し、以て天下の吉凶を定め、天下の亹亹[びび]を成す者は、蓍龜より大なるは莫し。

是故天生神物、聖人則之、天地變化、聖人效之、天垂象見吉凶、聖人象之、河出圖、洛出書、聖人則之。
【読み】
是の故に天神物を生じて、聖人之に則り、天地變化して、聖人之に效い、天象を垂れ吉凶を見[しめ]して、聖人之に象り、河圖を出し、洛書を出して、聖人之に則る。

易有四象、所以示也。繫辭焉、所以告也。定之以吉凶、所以斷也。(第十一章)
【読み】
易に四象有るは、示す所以なり。辭を繫くるは、告ぐる所以なり。之を定むるに吉凶を以てするは、斷ずる所以なり。(第十一章)

易曰、自天祐之、吉无不利。子曰、祐者助也。天之所助者順也。人之所助者信也。履信思乎順、又以尙賢也。是以自天祐之、吉无不利也。
【読み】
易に曰く、天より之を祐く、吉にして利ろしからざること无し、と。子曰く、祐は助なり。天の助くる所の者は順なり。人の助くる所の者は信なり。信を履み順を思い、又以て賢を尙ぶなり。是を以て天より之を祐く、吉にして利ろしからざること无きなり。

子曰、書不盡言、言不盡意。然則聖人之意、其不可見乎。子曰、聖人立象以盡意、設卦以盡情僞、繫辭焉以盡其言、變而通之以盡利、鼓之舞之以盡神。
【読み】
子曰く、書は言を盡くさず、言は意を盡くさず、と。然れば則ち聖人の意は、其れ見る可からざるか。子曰く、聖人は象を立てて以て意を盡くし、卦を設けて以て情僞を盡くし、辭を繫けて以て其の言を盡くし、變じて之を通じ以て利を盡くし、之を鼓し之を舞し以て神を盡くす。

乾坤其易之縕耶。乾坤成列、而易立乎其中矣。乾坤毀則无以見易。易不可見、則乾坤或幾乎息矣。
【読み】
乾坤は其れ易の縕か。乾坤列を成して、易其の中に立つ。乾坤毀るれば則ち以て易を見ること无し。易見る可からざれば、則ち乾坤或は息むに幾し。

是故形而上者謂之道、形而下者謂之器。化而裁之謂之變、推而行之謂之通、舉而錯之天下之民謂之事業。
【読み】
是の故に形よりして上なる者、之を道と謂い、形よりして下なる者、之を器と謂う。化して之を裁する、之を變と謂い、推して之を行う、之を通と謂い、舉げて之を天下の民に錯く、之を事業と謂う。

是故夫象、聖人有以見天下之賾、而擬諸其形容、象其物宜。是故謂之象。聖人有以見天下之動、而觀其會通、以行其典禮、繫辭焉以斷其吉凶。是故謂之爻。
【読み】
是の故に夫れ象は、聖人以て天下の賾を見ること有りて、諸を其の形容に擬え、其の物宜に象る。是の故に之を象と謂う。聖人以て天下の動を見ること有りて、其の會通を觀、以て其の典禮を行い、辭を繫けて以て其の吉凶を斷ず。是の故に之を爻と謂う。

極天下之賾者存乎卦、鼓天下之動者存乎辭、化而裁之存乎變、推而行之存乎通、神而明之存乎其人、默而成之不言而信、存乎德行。(第十二章)
【読み】
天下の賾を極むる者は卦に存し、天下の動を鼓する者は辭に存し、化して之を裁するは變に存し、推して之を行うは通に存し、神にして之を明らかにするは其の人に存し、默して之を成し言わずして信あるは、德行に存す。(第十二章)


周易繋辭下傳

八卦成列、象在其中矣。因而重之、爻在其中矣。剛柔相推、變在其中矣。繫辭焉而命之、動在其中矣。吉凶悔吝者、生乎動者也。剛柔者立本者也。變通者趣時者也。吉凶者貞勝者也。天地之道貞觀者也。日月之道貞明者也。天下之動貞夫一者也。
【読み】
八卦列を成して、象其の中に在り。因りて之を重ねて、爻其の中に在り。剛柔相推して、變其の中に在り。辭を繫けて之に命じ、動其の中に在り。吉凶悔吝は、動に生ずる者なり。剛柔は本を立つる者なり。變通は時に趣く者なり。吉凶は貞にして勝つ者なり。天地の道は貞にして觀[しめ]す者なり。日月の道は貞にして明らかなる者なり。天下の動は夫の一に貞なる者なり。

夫乾確然示人易矣。夫坤隤然示人簡矣。爻也者效此者也。象也者像此者也。爻象動乎内、吉凶見乎外、功業見乎變、聖人之情見乎辭。
【読み】
夫れ乾は確然として人に易を示す。夫れ坤は隤然[たいぜん]として人に簡を示す。爻とは此に效う者なり。象とは此に像[かたど]る者なり。爻象内に動いて、吉凶外に見れ、功業變に見れ、聖人の情は辭に見る。

天地之大德曰生、聖人之大寶曰位。何以守位。曰仁。何以聚人。曰財。理財正辭、禁民爲非、曰義。(第一章)
【読み】
天地の大德を生と曰い、聖人の大寶を位と曰う。何を以てか位を守る。曰く仁。何を以てか人を聚むる。曰く財。財を理め辭を正しくし、民の非と爲すを禁ずるを、義と曰う。(第一章)

古者包犧氏之王天下也、仰則觀象於天、俯則觀法於地、觀鳥獸之文與地之宜、近取諸身、遠取諸物。於是始作八卦、以通神明之德、以類萬物之情。作結繩而爲網罟、以佃以漁、蓋取諸離。
【読み】
古者[いにしえ]包犧氏の天下に王たるや、仰げば則ち象を天に觀、俯しては則ち法を地に觀、鳥獸の文と地の宜とを觀、近くは諸を身に取り、遠くは諸を物に取る。是に於て始めて八卦を作り、以て神明の德を通じ、以て萬物の情を類す。結繩を作して網罟[もうこ]を爲り、以て佃[かり]し以て漁[すなど]るは、蓋し諸を離に取る。

包犧氏沒、神農氏作。斲木爲耜、揉木爲耒、耒耨之利、以敎天下、蓋取諸益。日中爲市、致天下之民、聚天下之貨、交易而退、各得其所、蓋取諸噬嗑。
【読み】
包犧氏沒して、神農氏作る。木を斲[き]りて耜[し]と爲し、木を揉[た]めて耒[らい]と爲し、耒耨[らいどう]の利、以て天下に敎うるは、蓋し諸を益に取る。日中に市を爲して、天下の民を致し、天下の貨を聚め、交易して退き、各々其の所を得るは、蓋し諸を噬嗑に取る。

神農氏沒、黄帝堯舜氏作。通其變、使民不倦、神而化之、使民宜之。易窮則變、變則通、通則久。是以自天祐之、吉无不利。
【読み】
神農氏沒して、黄帝堯舜氏作る。其の變を通じ、民をして倦まざらしめ、神にして之を化し、民をして之を宜しくせしむ。易は窮まれば則ち變じ、變ずれば則ち通じ、通ずれば則ち久し。是を以て天より之を祐け、吉にして利ろしからざること无し。

黄帝堯舜垂衣裳而天下治、蓋取諸乾坤。刳木爲舟、剡木爲楫、舟楫之利、以濟不通、致遠以利天下、蓋取諸渙。服牛乘馬、引重致遠、以利天下、蓋取諸隨。重門擊柝、以待暴客、蓋取諸豫。斷木爲杵、掘地爲臼、臼杵之利、萬民以濟、蓋取諸小過。弦木爲弧、剡木爲矢、弧矢之利、以威天下、蓋取諸睽。
【読み】
黄帝堯舜衣裳を垂れて天下治まるは、蓋し諸を乾坤に取る。木を刳[く]りて舟と爲し、木を剡[けず]りて楫と爲し、舟楫の利、以て通ぜざるを濟[わた]し、遠きを致して以て天下を利するは、蓋し諸を渙に取る。牛を服し馬に乘り、重きを引き遠きを致して、以て天下を利するは、蓋し諸を隨に取る。重門擊柝、以て暴客を待つは、蓋し諸を豫に取る。木を斷[き]りて杵と爲し、地を掘りて臼と爲し、臼杵[きゅうしょ]の利、萬民以て濟[すく]うは、蓋し諸を小過に取る。木に弦[つる]して弧[ゆみ]と爲し、木を剡りて矢と爲し、弧矢の利、以て天下を威すは、蓋し諸を睽に取る。

上古穴居而野處。後世聖人易之以宮室、上棟下宇、以待風雨、蓋取諸大壯。古之葬者、厚衣之以薪、葬之中野、不封不樹、喪期无數。後世聖人易之以棺槨、蓋取諸大過。上古結繩而治。後世聖人易之以書契、百官以治、萬民以察、蓋取諸夬。(第二章)
【読み】
上古は穴居して野處す。後世の聖人之を易うるに宮室を以てし、棟を上にし宇[のき]を下にし、以て風雨を待つは、蓋し諸を大壯に取る。古の葬る者は、厚く之に衣するに薪を以てし、之を中野に葬り、封ぜず樹せず、喪期數无し。後世の聖人之を易うるに棺槨を以てするは、蓋し諸を大過に取る。上古は結繩して治まる。後世の聖人之を易うるに書契を以てし、百官以て治め、萬民以て察らかなるは、蓋し諸を夬に取る。(第二章)

是故易者象也。象也者像也。彖者材也。爻也者效天下之動者也。是故吉凶生而悔吝著也。(第三章)
【読み】
是の故に易は象なり。象とは像なり。彖は材なり。爻とは天下の動に效う者なり。是の故に吉凶生じて悔吝著るるなり。(第三章)

陽卦多陰、陰卦多陽。其故何也。陽卦奇、陰卦偶。其德行何也。陽一君而二民、君子之道也。陰二君而一民、小人之道也。(第四章)
【読み】
陽卦は陰多く、陰卦は陽多し。其の故は何ぞや。陽卦は奇にして、陰卦は偶なればなり。其の德行は何ぞや。陽は一君にして二民、君子の道なり。陰は二君にして一民、小人の道なり。(第四章)

易曰、憧憧往來、朋從爾思。子曰、天下何思何慮。天下同歸而殊塗、一致而百慮。天下何思何慮。日往則月來、月往則日來、日月相推而明生焉。寒往則暑來、暑往則寒來、寒暑相推而歳成焉。往者屈也。來者信也。屈信相感而利生焉。尺蠖之屈、以求信也。龍蛇之蟄、以存身也。精義入神、以致用也。利用安身、以崇德也。過此以往、未之或知也。窮神知化、德之盛也。
【読み】
易に曰く、憧憧として往來すれば、朋爾の思いに從う、と。子曰く、天下何をか思い何をか慮らん。天下歸を同じくして塗を殊にし、致を一にして慮を百にす。天下何をか思い何をか慮らん。日往けば則ち月來り、月往けば則ち日來り、日月相推して明生ず。寒往けば則ち暑來り、暑往けば則ち寒來り、寒暑相推して歳成る。往くとは屈するなり。來るとは信[の]ぶるなり。屈信相感じて利生ず。尺蠖[せきかく]の屈するは、以て信びんことを求むるなり。龍蛇の蟄[かく]るるは、以て身を存するなり。義を精しくし神に入るは、以て用を致すなり。用を利し身を安んずるは、以て德を崇くするなり。此を過ぐる以往は、未だ之れ知ること或らず。神を窮め化を知るは、德の盛んなるなり。

易曰、困于石、據于蒺蔾、入于其宮、不見其妻、凶。子曰、非所困而困焉、名必辱。非所據而據焉、身必危。旣辱且危、死期將至。妻其可得見耶。
【読み】
易に曰く、石に困しみ、蒺蔾[しつり]に據る、其の宮に入りて、其の妻を見ず、凶なり、と。子曰く、困しむべき所に非ずして困しめば、名必ず辱しめらる。據るべき所に非ずして據れば、身必ず危うし。旣に辱ずかしめられ且つ危うければ、死期將に至らんとす。妻其れ見ることを得可けんや。

易曰、公用射隼于高墉之上、獲之无不利。子曰、隼者禽也。弓矢者器也。射之者人也。君子藏器於身、待時而動。何不利之有。動而不括、是以出而有獲。語成器而動者也。
【読み】
易に曰く、公用[もっ]て隼を高墉[こうよう]の上に射る、之を獲て利ろしからざること无し、と。子曰く、隼は禽なり。弓矢は器なり。之を射る者は人なり。君子は器を身に藏し、時を待ちて動く。何の不利か之れ有らん。動きて括ばれず、是を以て出でて獲ること有り。器を成して動く者を語うなり。

子曰、小人不恥不仁、不畏不義、不見利不勸、不威不懲。小懲而大誡、此小人之福也。易曰、履校滅趾、无咎、此之謂也。
【読み】
子曰く、小人は不仁を恥じず、不義を畏れず、利を見ざれば勸まず、威さざれば懲りず。小しく懲らして大いに誡むるは、此れ小人の福なり。易に曰く、校[あしかせ]を履いて趾[あし]を滅[やぶ]る、咎无しとは、此を之れ謂うなり。

善不積不足以成名。惡不積不足以滅身。小人以小善爲无益而弗爲也。以小惡爲无傷而弗去也。故惡積而不可揜、罪大而不可解。易曰、何校滅耳、凶。
【読み】
善積まざれば以て名を成すに足らず。惡積まざれば以て身を滅すに足らず。小人は小善を以て益无しと爲して爲さざるなり。小惡を以て傷うこと无しと爲して去らざるなり。故に惡積みて揜う可からず、罪大にして解く可からず。易に曰く、校[くびかせ]を何[にな]いて耳を滅る、凶なり、と。

子曰、危者、安其位者也。亡者、保其存者也。亂者、有其治者也。是故君子安而不忘危、存而不忘亡、治而不忘亂。是以身安而國家可保也。易曰、其亡其亡、繫于苞桑。
【読み】
子曰く、危うしとする者は、其の位に安んずる者なり。亡びんとする者は、其の存を保つ者なり。亂るとする者は、其の治を有つ者なり。是の故に君子は安くして危うきを忘れず、存して亡ぶるを忘れず、治まりて亂るるを忘れず。是を以て身安くして國家保つ可きなり。易に曰く、其れ亡びなん其れ亡びなんとて、苞桑に繫る、と。

子曰、德薄而位尊、知小而謀大、力小而任重、鮮不及矣。易曰、鼎折足、覆公餗、其形渥、凶、言不勝其任也。
【読み】
子曰く、德薄くして位尊く、知小にして謀大に、力小にして任重ければ、及ばざること鮮し。易に曰く、鼎足を折り、公の餗[そく]を覆す、其の形渥たり、凶なりとは、其の任に勝えざるを言うなり。

子曰、知幾其神乎。君子上交不諂、下交不瀆、其知幾乎。幾者動之微、吉之先見者也。君子見幾而作、不俟終日。易曰、介于石、不終日、貞吉。介如石焉、寧用終日。斷可識矣。君子知微知彰、知柔知剛。萬夫之望。
【読み】
子曰く、幾を知るは其れ神か。君子は上交して諂わず、下交して瀆れず、其れ幾を知れるか。幾は動の微にして、吉の先ず見るる者なり。君子は幾を見て作[た]ち、日を終うるを俟たず。易に曰く、介きこと石のごとし、日を終えず、貞にして吉なり、と。介きこと石の如し、寧ぞ日を終うるを用いん。斷じて識る可し。君子は微を知り彰を知り、柔を知り剛を知る。萬夫の望みなり。

子曰、顏氏之子、其殆庶幾乎。有不善未嘗不知。知之未甞復行也。易曰、不遠復、无祇悔、元吉。
【読み】
子曰く、顏氏の子は、其れ殆ど庶幾からんか。不善有れば未だ嘗て知らずんばあらず。之を知れば未だ甞て復行わざるなり。易に曰く、遠からずして復る、悔に祇[いた]ること无し、元吉なり、と。

天地絪縕、萬物化醇、男女構精、萬物化生。易曰、三人行、則損一人、一人行、則得其友。言致一也。
【読み】
天地絪縕して、萬物化醇し、男女精を構[あわ]せて、萬物化生す。易に曰く、三人行けば、則ち一人を損す、一人行けば、則ち其の友を得、と。一を致すべきを言うなり。

子曰、君子安其身而後動、易其心而後語、定其交而後求。君子脩此三者。故全也。危以動、則民不與也。懼以語、則民不應也。无交而求、則民不與也。莫之與、則傷之者至矣。易曰、莫益之、或擊之、立心勿恆、凶。(第五章)
【読み】
子曰く、君子は其の身を安くして後に動き、其の心を易くして後に語り、其の交わりを定めて後に求む。君子は此の三者を脩む。故に全きなり。危うくして以て動けば、則ち民與せざるなり。懼れて以て語れば、則ち民應ぜざるなり。交わり无くして求むれば、則ち民與せざるなり。之に與すること莫ければ、則ち之を傷[やぶ]る者至るなり。易に曰く、之を益すること莫し、或は之を擊つ、心を立つること恆勿し、凶なり、と。(第五章)

子曰、乾坤其易之門邪。乾陽物也。坤陰物也。陰陽合德而剛柔有體、以體天地之撰、以通神明之德。其稱名也雜而不越。於稽其類、其衰世之意邪。
【読み】
子曰く、乾坤は其れ易の門か。乾は陽物なり。坤は陰物なり。陰陽德を合わせて剛柔體有り、以て天地の撰[こと]を體し、以て神明の德に通ず。其の名を稱すること雜なれども越えず。於[ああ]其の類を稽[かんが]うるに、其れ衰世の意か。

夫易彰往而察來、而微顯闡幽。開而當名辨物、正言斷辭則備矣。其稱名也小、其取類也大。其旨遠、其辭文。其言曲而中、其事肆而隱。因貳以濟民行、以明失得之報。(第六章)
【読み】
夫れ易は往を彰らかにして來を察し、顯を微にして幽を闡[ひら]く。開いて名に當て物を辨え、言を正しくし辭を斷ずれば則ち備わる。其の名を稱するや小にして、其の類を取るや大なり。其の旨遠く、其の辭文[かざ]る。其の言曲にして中り、其の事肆[つらな]りて隱[かく]る。貳に因りて以て民の行を濟[すく]い、以て失得の報を明らかにす。(第六章)

易之興也、其於中古乎。作易者、其有憂患乎。
【読み】
易の興るや、其れ中古に於てするか。易を作る者は、其れ憂患有るか。

是故、履德之基也。謙德之柄也。復德之本也。恆德之固也。損德之脩也。益德之裕也。困德之辨也。井德之地也。巽德之制也。
【読み】
是の故に、履は德の基なり。謙は德の柄なり。復は德の本なり。恆は德の固なり。損は德の脩なり。益は德の裕なり。困は德の辨なり。井は德の地なり。巽は德の制なり。

履和而至、謙尊而光、復小而辨於物、恆雜而不厭、損先難而後易、益長裕而不設、困窮而通、井居其所而遷、巽稱而隱。
【読み】
履は和して至り、謙は尊くして光あり、復は小にして物を辨じ、恆は雜にして厭わず、損は先には難くして後には易く、益は長裕して設けず、困は窮して通じ、井は其の所に居りて遷り、巽は稱りて隱る。

履以和行、謙以制禮、復以自知、恆以一德、損以遠害、益以興利、困以寡怨、井以辨義、巽以行權。(第七章)
【読み】
履は以て行いを和し、謙は以て禮を制し、復は以て自ら知り、恆は以て德を一にし、損は以て害に遠ざかり、益は以て利を興し、困は以て怨みを寡なくし、井は以て義を辨じ、巽は以て權を行う。(第七章)

易之爲書也、不可遠。爲道也屢遷、變動不居、周流六虛、上下无常、剛柔相易、不可爲典要、唯變所適。其出入以度、外内使知懼。又明於憂患與故、无有師保、如臨父母。初率其辭而揆其方、旣有典常。苟非其人、道不虛行。(第八章)
【読み】
易の書爲るや、遠ざく可からず。道爲るや屢々遷り、變動して居[とど]まらず、六虛に周流して、上下すること常无く、剛柔相易わり、典要と爲す可からず、唯變の適く所のままなり。其の出入度を以てし、外内懼れを知らしむ。又憂患と故とを明らかにし、師保有ること无けれども、父母に臨まるるが如し。初め其の辭に率いて其の方を揆[はか]れば、旣にして典常有り。苟も其の人に非ざれば、道虛しく行われず。(第八章)

易之爲書也、原始要終、以爲質也。六爻相雜、唯其時物也。其初難知、其上易知。本末也。初辭擬之、卒成之終。若夫雜物撰德、辨是與非、則非其中爻不備。噫亦要存亡吉凶、則居可知矣。知者觀其彖辭、則思過半矣。
【読み】
易の書爲るや、始めを原ねて終わりを要めて、以て質と爲すなり。六爻相雜るは、唯其の時の物なり。其の初は知り難く、其の上は知り易し。本末なればなり。初めは辭もて之に擬え、卒わりは之を成して終わる。若し夫れ物を雜え德を撰び、是と非とを辨ぜんとすれば、則ち其の中爻に非ざれば備わらず。噫[ああ]亦存亡吉凶を要するは、則ち居ながらにして知る可し。知者其の彖辭を觀れば、則ち思い半ばに過ぎん。

二與四同功而異位、其善不同。二多譽、四多懼。近也。柔之爲道、不利遠者、其要无咎、其用柔中也。
【読み】
二と四とは功を同じくして位を異にし、其の善同じからず。二は譽れ多く、四は懼れ多し。近ければなり。柔の道爲る、遠きに利ろしからざる者なれど、其の要の咎无きは、其の柔中を用うればなり。

三與五同功而異位。三多凶、五多功。貴賤之等也。其柔危、其剛勝邪。(第九章)
【読み】
三と五とは功を同じくして位を異にす。三は凶多く、五は功多し。貴賤の等なり。其の柔は危うく、其の剛は勝えんか。(第九章)

易之爲書也、廣大悉備。有天道焉、有人道焉、有地道焉。兼三材而兩之。故六。六者非它也。三材之道也。道有變動。故曰爻。爻有等。故曰物。物相雜。故曰文。文不當。故吉凶生焉。(第十章)
【読み】
易の書爲るや、廣大悉く備わる。天道有り、人道有り、地道有り。三材を兼ねて之を兩つにす。故に六なり。六とは它に非ざるなり。三材の道なり。道に變動有り。故に爻と曰う。爻に等有り。故に物と曰う。物相雜る。故に文と曰う。文當たらず。故に吉凶生ず。(第十章)

易之興也、其當殷之末世、周之盛德邪。當文王與紂之事邪。是故其辭危。危者使平、易者使傾。其道甚大、百物不廢。懼以終始、其要无咎。此之謂易之道也。(第十一章)
【読み】
易の興るや、其れ殷の末世、周の盛德に當たるか。文王と紂との事に當たるか。是の故に其の辭危うし。危ぶむ者は平かならしめ、易[あなど]る者は傾かしむ。其道甚だ大にして、百物廢れず。懼れて以て終始すれば、其の要は咎无し。此を之れ易の道と謂うなり。(第十一章)

夫乾天下之至健也。德行恆易以知險。夫坤天下之至順也。德行恆簡以知阻。能說諸心、能研諸侯之慮、定天下之吉凶、成天下之亹亹者。
【読み】
夫れ乾は天下の至健なり。德行恆に易にして以て險を知る。夫れ坤は天下の至順なり。德行恆に簡にして以て阻を知る。能く諸を心に說び、能く諸を慮に研き、天下の吉凶を定め、天下の亹亹[びび]を成す者なり。

是故變化云爲、吉事有祥。象事知器、占事知來。
【読み】
是の故に變化云爲、吉事には祥有り。事に象りて器を知り、事を占いて來を知る。

天地設位、聖人成能、人謀鬼謀、百姓與能。八卦以象告、爻彖以情言。剛柔雜居而吉凶可見矣。變動以利言、吉凶以情遷。是故愛惡相攻而吉凶生、遠近相取而悔吝生、情僞相感而利害生。凡易之情、近而不相得則凶。或害之、悔且吝。
【読み】
天地位を設け、聖人能を成し、人謀り鬼謀って、百姓も能に與る。八卦は象を以て告げ、爻彖は情を以て言う。剛柔雜居して吉凶見る可し。變動は利を以て言い、吉凶は情を以て遷る。是の故に愛惡相攻めて吉凶生じ、遠近相取りて悔吝生じ、情僞相感じて利害生ず。凡そ易の情は、近くして相得ざれば則ち凶なり。或は之を害すれば、悔ありて且つ吝なり。

將叛者、其辭慙、中心疑者、其辭枝。吉人之辭寡、躁人之辭多。誣善之人、其辭游、失其守者、其辭屈。(第十二章)
【読み】
將に叛かんとする者は、其の辭慙じ、中心疑う者は、其の辭枝[わか]る。吉人の辭は寡なく、躁人の辭は多し。善を誣うる人は、其の辭游し、其の守を失う者は、其の辭屈す。(第十二章)


周易說卦傳

昔者聖人之作易也、幽贊於神明而生蓍。參天兩地而倚數。觀變於陰陽而立卦、發揮於剛柔而生爻、和順於道德而理於義、窮理盡性以至於命。(第一章)
【読み】
昔者[むかし]聖人の易を作るや、神明を幽贊して蓍を生ず。天を參にし地を兩にして數を倚[た]つ。變を陰陽に觀て卦を立て、剛柔を發揮して爻を生じ、道德に和順して義を理[おさ]め、理を窮め性を盡くして以て命に至る。(第一章)

昔者聖人之作易也、將以順性命之理。是以立天之道、曰陰與陽。立地之道、曰柔與剛。立人之道、曰仁與義。兼三才而兩之。故易六畫而成卦。分陰分陽、迭用柔剛。故易六位而成章。(第二章)
【読み】
昔者聖人の易を作るや、將に以て性命の理に順わんとす。是を以て天の道を立つ、曰く陰と陽、と。地の道を立つ、曰く柔と剛、と。人の道を立つ、曰く仁と義、と。三才を兼ねて之を兩にす。故に易は六畫にして卦を成す。陰を分かち陽を分かち、迭[たが]いに柔剛を用う。故に易は六位にして章を成す。(第二章)

天地定位、山澤通氣、雷風相薄、水火不相射、八卦相錯。數往者順、知來者逆。是故易逆數也。(第三章)
【読み】
天地位を定め、山澤氣を通じ、雷風相薄[せま]り、水火相射[いと]わずして、八卦相錯[まじ]わる。往を數うるは順にして、來を知る者は逆なり。是の故に易は逆數なり。(第三章)

雷以動之、風以散之、雨以潤之、日以烜之、艮以止之、兌以說之、乾以君之、坤以藏之。(第四章)
【読み】
雷は以て之を動かし、風は以て之を散らし、雨は以て之を潤し、日は以て之を烜[かわ]かし、艮は以て之を止め、兌は以て之を說ばし、乾は以て之に君たり、坤は以て之を藏[おさ]む。(第四章)

帝出乎震、齊乎巽、相見乎離、致役乎坤、說言乎兌、戰乎乾、勞乎坎、成言乎艮。
萬物出乎震。震東方也。齊乎巽。巽東南也。齊也者、言萬物之絜齊也。離也者明也。萬物皆相見。南方之卦也。聖人南面而聽天下、嚮明而治、蓋取諸此也。坤也者地也。萬物皆致養焉。故曰致役乎坤。兌正秋也。萬物之所說也。故曰說言乎兌。戰乎乾。乾西北之卦也。言陰陽相薄也。坎者水也。正北方之卦也。勞卦也。萬物之所歸也。故曰勞乎坎。艮東北之卦也。萬物之所成終而所成始也。故曰成言乎艮。(第五章)
【読み】
帝は震に出で、巽に齊い、離に相見、坤に致役し、兌に說言し、乾に戰い、坎に勞し、艮に成言す。
萬物は震に出づ。震は東方なり。巽に齊う。巽は東南なり。齊うとは、萬物の絜齊を言うなり。離とは明なり。萬物皆相見る。南方の卦なり。聖人南面して天下に聽き、明に嚮[む]かいて治むるは、蓋し諸を此に取るなり。坤とは地なり。萬物皆養を致す。故に坤に致役すと曰う。兌は正秋なり。萬物の說ぶ所なり。故に兌に說言すと曰う。乾に戰う。乾は西北の卦なり。陰陽相薄[せま]るを言うなり。坎は水なり。正北方の卦なり。勞卦なり。萬物の歸する所なり。故に坎に勞すと曰う。艮は東北の卦なり。萬物の終わりを成す所にして始めを成す所なり。故に艮に成言すと曰う。(第五章)

神也者、妙萬物而爲言者也。動萬物者、莫疾乎雷、橈萬物者、莫疾乎風、燥萬物者、莫乎熯火、說萬物者、莫說乎澤、潤萬物者、莫潤乎水、終萬物始萬物者、莫盛乎艮。故水火相逮、雷風不相悖、山澤通氣、然後能變化、旣成萬物也。(第六章)
【読み】
神なる者は、萬物の妙にして言を爲す者なり。萬物を動かす者は、雷より疾きは莫く、萬物を橈むる者は、風より疾きは莫く、萬物を燥かす者は、火より熯けるは莫く、萬物を說ばす者は、澤より說ばすは莫く、萬物を潤す者は、水より潤すは莫く、萬物を終え萬物を始むる者は、艮より盛んなるは莫し。故に水火相逮び、雷風相悖らず、山澤氣を通じ、然して後に能く變化して、旣[ことごと]く萬物を成すなり。(第六章)

乾健也。坤順也。震動也。巽入也。坎陷也。離麗也。艮止也。兌說也。(第七章)
【読み】
乾は健なり。坤は順なり。震は動なり。巽は入なり。坎は陷なり。離は麗なり。艮は止なり。兌は說なり。(第七章)

乾爲馬、坤爲牛、震爲龍、巽爲雞、坎爲豕、離爲雉、艮爲狗、兌爲羊。(第八章)
【読み】
乾を馬と爲し、坤を牛と爲し、震を龍と爲し、巽を雞と爲し、坎を豕と爲し、離を雉と爲し、艮を狗と爲し、兌を羊と爲す。(第八章)

乾爲首、坤爲腹、震爲足、巽爲股、坎爲耳、離爲目、艮爲手、兌爲口。(第九章)
【読み】
乾を首と爲し、坤を腹と爲し、震を足と爲し、巽を股と爲し、坎を耳と爲し、離を目と爲し、艮を手と爲し、兌を口と爲す。(第九章)

乾天也。故稱乎父。坤地也。故稱乎母。震一索而得男。故謂之長男。巽一索而得女。故謂之長女。坎再索而得男。故謂之中男。離再索而得女。故謂之中女。艮三索而得男。故謂之少男。兌三索而得女。故謂之少女。(第十章)
【読み】
乾は天なり。故に父と稱す。坤は地なり。故に母と稱す。震は一索して男を得。故に之を長男と謂う。巽一索して女を得。故に之を長女と謂う。坎は再索して男を得。故に之を中男と謂う。離は再索して女を得。故に之を中女と謂う。艮は三索して男を得。故に之を少男と謂う。兌は三索して女を得。故に之を少女と謂う。(第十章)

乾爲天、爲圜、爲君、爲父、爲玉、爲金、爲寒、爲冰、爲大赤、爲良馬、爲老馬、爲瘠馬、爲駁馬、爲木果。
坤爲地、爲母、爲布、爲釡、爲吝嗇、爲均、爲子母牛、爲大輿、爲文、爲衆、爲柄、其於地也爲黑。
震爲雷、爲龍、爲玄黄、爲旉、爲大塗、爲長子、爲決躁、爲蒼筤竹、爲萑葦、其於馬也爲善鳴、爲馵足、爲作足、爲的顙、其於稼也爲反生、其究爲健、爲蕃鮮。
巽爲木、爲風、爲長女、爲繩直、爲工、爲白、爲長、爲高、爲進退、爲不果、爲臭、其於人也爲寡髪、爲廣顙、爲多白眼、爲近利市三倍、其究爲躁卦。
坎爲水、爲溝瀆、爲隱伏、爲矯輮、爲弓輪、其於人也爲加憂、爲心病、爲耳痛、爲血卦、爲赤、其於馬也爲美脊、爲亟心、爲下首、爲薄蹄、爲曳、其於輿也爲多眚、爲通、爲月、爲盗、其於木也爲堅多心。
離爲火、爲日、爲電、爲中女、爲甲胃、爲戈兵、其於人也爲大腹、爲乾卦、爲鱉、爲蟹、爲蠃、爲蚌、爲龜、其於木也爲科上槁。
艮爲山、爲徑路、爲小石、爲門闕、爲果蓏、爲閽寺、爲指、爲狗、爲鼠、爲黔喙之屬、其於木也爲堅多節。
兌爲澤、爲少女、爲巫、爲口舌、爲毀折、爲附決、其於地也爲剛鹵、爲妾、爲羊。(第十一章)
【読み】
乾を天と爲し、圜[えん]と爲し、君と爲し、父と爲し、玉と爲し、金と爲し、寒と爲し、冰と爲し、大赤と爲し、良馬と爲し、老馬と爲し、瘠馬と爲し、駁馬と爲し、木果と爲す。
坤を地と爲し、母と爲し、布と爲し、釡と爲し、吝嗇と爲し、均と爲し、子母牛と爲し、大輿と爲し、文と爲し、衆と爲し、柄と爲し、其の地に於るや黑と爲す。
震を雷と爲し、龍と爲し、玄黄と爲し、旉[ふ]と爲し、大塗と爲し、長子と爲し、決躁と爲し、蒼筤竹[そうろうちく]と爲し、萑葦[かんい]と爲し、其の馬に於るや善鳴と爲し、馵足[しゅそく]と爲し、作足と爲し、的顙と爲し、其の稼に於るや反生と爲し、其の究まりては健と爲し、蕃鮮と爲す。
巽を木と爲し、風と爲し、長女と爲し、繩直と爲し、工と爲し、白と爲し、長と爲し、高と爲し、進退と爲し、果ならずと爲し、臭と爲し、其の人に於るや寡髪と爲し、廣顙と爲し、白眼多しと爲し、利に近づきて市[う]って三倍すと爲し、其の究まりては躁の卦と爲す。
坎を水と爲し、溝瀆と爲し、隱伏と爲し、矯輮と爲し、弓輪と爲し、其の人に於るや加憂と爲し、心病と爲し、耳痛と爲し、血の卦と爲し、赤と爲し、其の馬に於るや美脊と爲し、亟心と爲し、下首と爲し、薄蹄と爲し、曳くと爲し、其の輿に於るや眚多しと爲し、通ずと爲し、月と爲し、盗と爲し、其の木に於るや堅くして心多しと爲す。
離を火と爲し、日と爲し、電と爲し、中女と爲し、甲胃と爲し、戈兵と爲し、其の人に於るや大腹と爲し、乾くの卦と爲し、鱉[べつ]と爲し、蟹と爲し、蠃[ら]と爲し、蚌[ぼう]と爲し、龜と爲し、其の木に於るや科[うつろ]にして上槁ると爲す。
艮は山と爲し、徑路と爲し、小石と爲し、門闕と爲し、果蓏[から]と爲し、閽寺[こんじ]と爲し、指と爲し、狗と爲し、鼠と爲し、黔喙[けんかい]の屬と爲し、其の木に於るや堅くして節多しと爲す。
兌を澤と爲し、少女と爲し、巫と爲し、口舌と爲し、毀折と爲し、附決と爲し、其の地に於るや剛鹵と爲し、妾と爲し、羊と爲す。(第十一章)


周易序卦傳

有天地然後萬物生焉。盈天地之間者唯萬物。故受之以屯。屯者盈也。屯者物之始生也。物生必蒙。故受之以蒙。蒙者蒙也。物之稺也。物稺不可不養也。故受之以需。需者飮食之道也。飮食必有訟。故受之以訟。訟必有衆起。故受之以師。師者衆也。衆必有所比。故受之以比。比者比也。比必有所畜。故受之以小畜。物畜然後有禮。故受之以履。履而泰、然後安。故受之以泰。泰者通也。物不可以終通。故受之以否。物不可以終否。故受之以同人。與人同者物必歸焉。故受之以大有。有大者不可以盈。故受之以謙。有大而能謙必豫。故受之以豫。豫必有隨。故受之以隨。以喜隨人者必有事。故受之以蠱。蠱者事也。有事而後可大。故受之以臨。臨者大也。物大然後可觀。故受之以觀。可觀而後有所合。故受之以噬嗑。嗑者合也。物不可以苟合而已。故受之以賁。賁者飾也。致飾然後亨則盡矣。故受之以剥。剥者剥也。物不可以終盡。剥窮上反下。故受之以復。復則不妄矣。故受之以无妄。有无妄然後可畜。故受之以大畜。物畜然後可養。故受之以頤。頤者養也。不養則不可動。故受之以大過。物不可以終過。故受之以坎。坎者陷也。陷必有所麗。故受之以離。離者麗也。(上篇)
【読み】
天地有りて然る後に萬物生ず。天地の間に盈つる者は唯萬物なり。故に之を受くるに屯を以てす。屯とは盈つるなり。屯とは物の始めて生ずるなり。物生ずれば必ず蒙なり。故に之を受くるに蒙を以てす。蒙とは蒙[おろ]かなり。物の稺[おさな]きなり。物稺ければ養わざる可からず。故に之を受くるに需を以てす。需とは飮食の道なり。飮食すれば必ず訟え有り。故に之を受くるに訟を以てす。訟えには必ず衆の起こる有り。故に之を受くるに師を以てす。師とは衆なり。衆あれば必ず比[した]しむ所有り。故に之を受くるに比を以てす。比とは比しむなり。比しめば必ず畜う所有り。故に之を受くるに小畜を以てす。物畜えられて然る後に禮有り。故に之を受くるに履を以てす。履んで泰、然る後に安し。故に之を受くるに泰を以てす。泰とは通ずるなり。物は以て通ずるに終わる可からず。故に之を受くるに否を以てす。物は以て否に終わる可からず。故に之を受くるに同人を以てす。人と同じくする者は物必ず焉に歸す。故に之を受くるに大有を以てす。大を有する者は以て盈つる可からず。故に之を受くるに謙を以てす。大を有して能く謙なれば必ず豫ぶ。故に之を受くるに豫を以てす。豫べば必ず隨うこと有り。故に之を受くるに隨を以てす。喜びを以て人に隨う者は必ず事有り。故に之を受くるに蠱を以てす。蠱とは事なり。事有りて後に大なる可し。故に之を受くるに臨を以てす。臨とは大なり。物大にして然る後に觀る可し。故に之を受くるに觀を以てす。觀る可くして後に合う所有り。故に之を受くるに噬嗑を以てす。嗑とは合うなり。物以て苟も合うのみなる可からず。故に之を受くるに賁を以てす。賁とは飾るなり。飾りを致して然る後に亨れば則ち盡く。故に之を受くるに剥を以てす。剥とは剥ぐなり。物以て盡くるに終わる可からず。剥ぐこと上に窮まれば下に反る。故に之を受くるに復を以てす。復れば則ち妄ならず。故に之を受くるに无妄を以てす。无妄有りて然る後に畜う可し。故に之を受くるに大畜を以てす。物畜えられて然る後に養う可し。故に之を受くるに頤を以てす。頤とは養うなり。養わざれば則ち動く可からず。故に之を受くるに大過を以てす。物以て過ぐるに終わる可からず。故に之を受くるに坎を以てす。坎とは陷るなり。陷れば必ず麗[つ]く所有り。故に之を受くるに離を以てす。離とは麗くなり。(上篇)

有天地然後有萬物。有萬物然後有男女。有男女然後有夫婦。有夫婦然後有父子。有父子然後有君臣。有君臣然後有上下。有上下然後禮儀有所錯。夫婦之道不可以不久也。故受之以恆。恆者久也。物不可以久居其所。故受之以遯。遯者退也。物不可以終遯。故受之以大壯。物不可以終壯。故受之以晉。晉者進也。進必有所傷。故受之以明夷。夷者傷也。傷於外者必反於家。故受之以家人。家道窮必乖。故受之以睽。睽者乖也。乖必有難。故受之以蹇。蹇者難也。物不可以終難。故受之以解。解者緩也。緩必有所失。故受之以損。損而不已必益。故受之以益。益而不已必決。故受之以夬。夬者決也。決必有所遇。故受之以姤。姤者遇也。物相遇而後聚。故受之以萃。萃者聚也。聚而上者謂之升。故受之以升。升而不巳必困。故受之以困。困乎上者必反下。故受之以井。井道不可不革。故受之以革。革物者莫若鼎。故受之以鼎。主器者莫若長子。故受之以震。震者動也。物不可以終動、止之。故受之以艮。艮者止也。物不可以終止。故受之以漸。漸者進也。進必有所歸。故受之以歸妹。得其所歸者必大。故受之以豐。豐者大也。窮大者必失其居。故受之以旅。旅而无所容。故受之以巽。巽者入也。入而後說之。故受之以兌。兌者說也。說而後散之。故受之以渙。渙者離也。物不可以終離。故受之以節。節而信之。故受之以中孚。有其信者必行之。故受之以小過。有過物者必濟。故受之以旣濟。物不可窮也。故受之以未濟終焉。(下篇)
【読み】
天地有りて然る後に萬物有り。萬物有りて然る後に男女有り。男女有りて然る後に夫婦有り。夫婦有りて然る後に父子有り。父子有りて然る後に君臣有り。君臣有りて然る後に上下有り。上下有りて然る後に禮儀錯く所有り。夫婦の道は以て久しからざる可からざるなり。故に之を受くるに恆を以てす。恆とは久しきなり。物以て久しく其の所に居る可からず。故に之を受くるに遯を以てす。遯とは退くなり。物以て遯に終わる可からず。故に之を受くるに大壯を以てす。物以て壯なるに終わる可からず。故に之を受くるに晉を以てす。晉とは進むなり。進めば必ず傷るる所有り。故に之を受くるに明夷を以てす。夷とは傷るるなり。外に傷るる者は必ず家に反る。故に之を受くるに家人を以てす。家道窮まれば必ず乖[そむ]く。故に之を受くるに睽を以てす。睽とは乖くなり。乖けば必ず難有り。故に之を受くるに蹇を以てす。蹇とは難なり。物以て難に終わる可からず。故に之を受くるに解を以てす。解とは緩なり。緩くすれば必ず失う所有り。故に之を受くるに損を以てす。損して已まざれば必ず益す。故に之を受くるに益を以てす。益して已まざれば必ず決す。故に之を受くるに夬を以てす。夬とは決なり。決すれば必ず遇う所有り。故に之を受くるに姤を以てす。姤とは遇うなり。物相遇いて後に聚まる。故に之を受くるに萃を以てす。萃とは聚なり。聚まりて上る者は之を升ると謂う。故に之を受くるに升を以てす。升りて巳まざれば必ず困しむ。故に之を受くるに困を以てす。上に困しむ者は必ず下に反る。故に之を受くるに井を以てす。井道は革めざる可からず。故に之を受くるに革を以てす。物を革むる者は鼎に若くは莫し。故に之を受くるに鼎を以てす。器を主る者は長子に若くは莫し。故に之を受くるに震を以てす。震とは動くなり。物以て動くに終わる可からず、之を止む。故に之を受くるに艮を以てす。艮とは止むるなり。物以て止まるに終わる可からず。故に之を受くるに漸を以てす。漸とは進むなり。進めば必ず歸る所有り。故に之を受くるに歸妹を以てす。其の歸する所を得る者は必ず大なり。故に之を受くるに豐を以てす。豐とは大なり。大を窮むる者は必ず其の居を失う。故に之を受くるに旅を以てす。旅して容るる所无し。故に之を受くるに巽を以てす。巽とは入るなり。入りて後に之を說ぶ。故に之を受くるに兌を以てす。兌とは說ぶなり。說びて後に之を散らす。故に之を受くるに渙を以てす。渙とは離るるなり。物以て離るるに終わる可からず。故に之を受くるに節を以てす。節して之を信ず。故に之を受くるに中孚を以てす。其の信有る者は必ず之を行う。故に之を受くるに小過を以てす。物に過ぐること有る者は必ず濟[な]す。故に之を受くるに旣濟を以てす。物は窮む可からざるなり。故に之を受くるに未濟を以てして終わるなり。(下篇)


周易雜卦傳

乾剛坤柔。比樂師憂。臨・觀之義、或與或求。屯見而不失其居、蒙雜而著。震起也。艮止也。損・益盛衰之始也。大畜時也。无妄災也。萃聚、而升不來也。謙輕而豫怠也。噬嗑食也。賁无色也。兌見而巽伏也。隨无故也。蠱則飭也。剥爛也。復反也。晉晝也。明夷誅也。井通而困相遇也。咸速也。恆久也。渙離也。節止也。解緩也。蹇難也。睽外也。家人内也。否・泰反其類也。大壯則止、遯則退也。大有衆也。同人親也。革去故也。鼎取新也。小過過也。中孚信也。豐多故也。親寡旅也。離上而坎下也。小畜寡也。履不處也。需不進也。訟不親也。大過顚也。姤遇也。柔遇剛也。漸女歸、待男行也。頤養正也。旣濟定也。歸妹女之終也。未濟男之窮也。夬決也。剛決柔也。君子道長、小人道憂也。
【読み】
乾は剛にして坤は柔なり。比は樂しみて師は憂う。臨・觀の義は、或は與え或は求む。屯は見[あらわ]れて其の居を失わず、蒙は雜わりて著[あらわ]る。震は起こるなり、艮は止まるなり。損・益は盛衰の始めなり。大畜は時なり。无妄は災いなり。萃は聚まりて、升は來らざるなり。謙は輕くして豫は怠るなり。噬嗑は食らうなり。賁は色无きなり。兌は見れて巽は伏すなり。隨は故无きなり。蠱は則ち飭[ととの]うるなり。剥は爛[やぶ]るるなり。復は反るなり。晉は晝なり。明夷は誅するなり。井は通じて困は相遇うなり。咸は速やかなり。恆は久しきなり。渙は離るるなり。節は止まるなり。解は緩くするなり。蹇は難むなり。睽は外なり。家人は内なり。否・泰は其の類に反するなり。大壯は則ち止まり、遯は則ち退くなり。大有は衆きなり。同人は親しむなり。革は故きを去るなり。鼎は新しきを取るなり。小過は過ぐるなり。中孚は信[まこと]なるなり。豐は故多きなり。親寡なきは旅なり。離は上りて坎は下るなり。小畜は寡なきなり。履は處らざるなり。需は進まざるなり。訟は親まざるなり。大過は顚るなり。姤は遇うなり。柔剛に遇うなり。漸は女歸[とつ]ぎ、男を待ちて行くなり。頤は正を養うなり。旣濟は定まるなり。歸妹は女の終わりなり。未濟は男の窮まるなり。夬は決なり。剛柔を決するなり。君子道長じて、小人道憂うるなり。