二程全書卷之九  遺書二先生語第八

傳不習乎、不習而傳與人。
【読み】
習わざるを傳えんやとは、習わずして人に傳與するなり。

學則不固、連上說。
【読み】
學も則ち固からずとは、上に連ねて說く。

有馬者借人乘之、吾力猶能補史之闕文。當史之職而能闕疑以待後人、是猶有馬者借人乘之也。
【読み】
馬有る者は人に借して之に乘らしむとは、吾が力猶能く史の闕文を補うがごとし。史の職に當たりて能く疑を闕いて以て後人を待つは、是れ猶馬有る者人に借して之に乘らしむるがごとし。

能言不怍者難。
【読み】
能く言いて怍[は]ぢざる者は難し。

君子義以爲質四句、只是一事、以義爲本。
【読み】
君子は義以て質と爲すという四句は、只是れ一事、義を以て本と爲す。

可使之往、不可陷以罔。
【読み】
之をして往かしむ可し、陷して以て罔[し]う可からず。

君子矜而不爭、矜尚之矜。
【読み】
君子は矜にして爭そわずとは、矜尚の矜なり。

南宮适以禹・稷比孔子。故夫子不答也。
【読み】
南宮适[なんきゅうかつ]禹・稷を以て孔子に比す。故に夫子答えざるなり。

果哉、末之難矣、果敢之果、不知更有難事、他所未曉、輕議聖人。孔子擊磬、何嘗無心。荷蕢於此知之。
【読み】
果たせるかな、之れ難きこと末[な]しとは、果敢の果、更に難き事有ることを知らず、他未だ曉[さと]らざる所ありて、輕々しく聖人を議す。孔子磬[けい]を擊つに、何ぞ嘗て心無けん。蕢[かじか]を荷うもの此に於て之を知れり。

辟世辟言辟色、非有優劣。只說大小次第。
【読み】
世を辟け言を辟け色を辟くは、優劣有るに非ず。只大小の次第を說くのみ。

靈公問陳。孔子遂行、言語不相投。
【読み】
靈公陳を問う。孔子遂に行[さ]って、言語相投ぜず。

不占而已、有吉凶便占。無常之人更不待占。
【読み】
占わざるのみとは、吉凶有れば便ち占う。常無き人は更に占うことを待たず。

三代直道而行、毀譽公。
【読み】
三代の直道にして行うは、毀譽公なり。

踐迹、如言循途守轍。善人雖不循守舊迹、亦不能入聖人之室。
【読み】
迹を踐むとは、途に循い轍を守ると言うが如し。善人は舊迹を循守せずと雖も、亦聖人の室に入ること能わず。

論篤是與、言篤實時與君子與色莊。
【読み】
論篤きままに是れ與すとは、篤實時に君子と色莊とに與するを言う。

魯・衛之政兄弟也、言相近也。
【読み】
魯・衛の政は兄弟なりとは、相近きを言うなり。

知及・仁守・莊涖・動禮、爲政始末。
【読み】
知及・仁守・莊涖・動禮は、政の始末と爲す。

民之於仁也、甚於水火。不肯爲仁、如蹈水火。
【読み】
民の仁に於るや、水火よりも甚だし。肯えて仁を爲さざるは、水火を蹈むが如し。

致遠恐泥、不可行遠。
【読み】
遠きに致さば恐らくは泥まんとは、遠きに行く可からざるなり。

先傳後倦、君子敎人有序。先傳以小者近者、而後敎以大者遠者。非是先傳以近小、而後不敎以遠大也。
【読み】
先づ傳え後に倦むとは、君子人を敎うるに序有り。先に傳うるに小なる者近き者を以てして、而して後に敎うるに大なる者遠き者を以てす。是れ先に傳うるに近小を以てして、而して後に敎うるに遠大を以てせざるには非ず。

吾其爲東周乎、東遷以後、諸侯大夫強僭。聖人豈爲是乎。匏瓜繫而不食、匏瓜無所爲之物、繫而不動。
【読み】
吾れ其れ東周をせんとは、東遷以後、諸侯大夫強僭す。聖人豈是をせんや。匏瓜[ほうか]繫かりて食らわずとは、匏瓜はする所無き物、繫かりて動かず。

子樂、弟子各盡其誠實、不少加飾。故孔子知由之不得其死。
【読み】
子樂しむは、弟子各々其の誠實を盡くして、少しも飾を加えざればなり。故に孔子由が其の死を得ざることを知れり。

性相近也、生質之性。
【読み】
性は相近しとは、生質の性なり。

小知・大受、不可以小知君子、而可以當大事。
【読み】
小知・大受とは、小を以て知る可からざるは君子にして、而して以て大事に當つ可し。

天下有道、丘不與易也、其誰以易之、誰肯以夫子之道易己所爲。
【読み】
天下道有らば、丘與に易えじ、其れ誰か以[とも]に之を易えんとは、誰か肯えて夫子の道を以て己が爲す所に易えんとなり。

佛肸召。欲往而不往者何也。聖人示之以迹。子路不諭九夷・浮海之類。(示之、一作示人。)
【読み】
佛肸召ぶ。往かんと欲して往かざる者は何ぞや。聖人之に示すに迹を以てす。子路九夷・海に浮ぶを諭らざるの類なり。(示之は、一に示人に作る。)

堯曰、予小子履。(少湯字。)
【読み】
堯曰く、予れ小子履。(少湯の字。)

周公謂魯公三句、反履說。不獨不施(呂本・徐本施作弛。)其親、又當使大臣不怨、至公不可忘私、又當全故舊。
【読み】
周公魯公に謂うの三句、反履して說く。獨其の親を施[す](呂本・徐本施を弛に作る。)てざるのみにあらず、又當に大臣をして怨みざらしむべく、至公私を忘る可からず、又當に故舊を全くすべし。

大德・小德、如大節小節。
【読み】
大德・小德は、大節小節の如し。

雖有周親、不如仁人、至親不如仁賢。
【読み】
周親有りと雖も、仁人に如かずとは、至親も仁賢に如かずとなり。

因不失其親、信本不及義、恭本不及禮。然信近於義者、以言可復也。恭近於禮者、以遠恥辱也。因恭信不失其所以(一無以字。)親近於禮義。故亦可宗也。如言禮義不可得見、得見恭信者斯可矣。
【読み】
因ること其の親を失わずとは、信は本義に及ばず、恭は本禮に及ばず。然れども信義に近き者は、言復す可きを以てなり。恭禮に近き者は、恥辱に遠ざかるを以てなり。恭信に因りて其の禮義に親近する所以(一に以の字無し。)を失わず。故に亦宗とす可し。禮義は得て見る可からず、恭信の者を見ることを得ば斯れ可なりと言うが如し。

子張・子夏論交、子夏・子張告人各有所以。初學與成德者事不同。
【読み】
子張・子夏の交わりを論ずる、子夏・子張人に告ぐるに各々所以有り。初學と成德の者の事同じからず。

貧與賤、不以其道得之、不去也、不以其道得去貧賤、如患得之。
【読み】
貧しきと賤しきとは、其の道を以てせずして之を得るとも、去らずとは、其の道を以てせずして貧賤を去ることを得るは、之を得んことを患うるが如し。

卿以下必有圭田、祭祀之田也、祿外之田也。
【読み】
卿より下には必ず圭田有りとは、祭祀の田なり、祿外の田なり。

餘夫二十五畝、一夫上父母下妻子、以五口至八口爲率、受田百畝。如有弟、是餘夫也。俟其成家別受田也。
【読み】
餘夫は二十五畝とは、一夫上は父母下は妻子、以て五口より八口に至るまでを率ねと爲し、田百畝を受く。弟有るが如きは、是れ餘夫なり。其の家を成すを俟って別に田を受くるなり。

廛而不征、市宅之地已有廛稅、更不征其物。
【読み】
廛[てん]して征せずとは、市宅の地は已に廛稅有り、更に其の物を征せざるなり。

法而不廛、稅有常法、不以廛故而厚其稅。
【読み】
法ありて廛せずとは、稅に常法有り、廛の故を以てして其の稅を厚くせざるなり。

廛無夫里之布、廛自有稅、更無此二布。
【読み】
廛に夫里の布無しとは、廛に自づから稅有り、更に此の二布無きなり。

國有道不變塞、所守不變、所行不塞。
【読み】
國道有れば變塞せずとは、守る所を變えず、行く所を塞がざるなり。

廣居・正位・大道、所居者廣、所位者正、所道者大。天下至中至大之所。
【読み】
廣居・正位・大道は、居る所の者廣く、位する所の者正しく、道[みちび]く所の者大なり。天下は至中至大の所なり。

配義與道、浩氣已成、合道與義。道、本也。義、用也。(本、一作體。)
【読み】
義と道とに配すとは、浩氣已に成って、道と義とに合す。道は、本なり。義は、用なり。(本は、一に體に作る。)

集義所生者、集衆義而生浩然之氣。非義外襲我而取之也。
【読み】
義を集めて生[な]る所の者とは、衆義を集めて浩然の氣を生す。義外より我を襲って之を取るに非ず。

参考文献
『和刻本漢籍 二程全書』(中文出版社)
『二程集』(里仁書局)