二程全書卷之三十  外書第一

朱公掞錄拾遺

性靜者可以爲學。淳。
【読み】
性靜なる者は以て學を爲す可し。淳。

學在知其所有、又養其所有。淳。
【読み】
學は其の有る所を知り、又其の有る所を養うに在り。淳。

實是實非能辨、則循實是。天下之事歸於一是。是乃理也。循此理乃可進學至形而上者也。正。
【読み】
實に是實に非能く辨ずるときは、則ち實の是に循う。天下の事は一の是に歸す。是は乃ち理なり。此の理に循えば乃ち學に進む可くして形よりして上なる者に至る。正。

學如不及。猶恐失之。不得放過也。正。
【読み】
學は及ばざるが如くす。猶之を失わんことを恐る、と。放過することを得じ。正。

忠信爲基本、所以進德也。辭修誠意立、所以居業也。此乃乾道。由此二句可至聖人也。淳。
【読み】
忠信を基本とするは、德に進む所以なり。辭修まり誠意立つは、業に居る所以なり。此れ乃ち乾道なり。此の二句に由って聖人に至る可し。淳。

得意則可以忘言。然無言又不見其意。正。
【読み】
意を得るときは則ち以て言を忘る可し。然れども言無ければ又其の意を見ず。正。

心得之、然後可以爲己物。淳。
【読み】
心に之を得て、然して後に以て己が物とす可し。淳。

君子敬以直内、義以方外。爲學本。
【読み】
君子敬以て内を直くし、義以て外を方にす、と。學の本とす。

默而識之、吾不得而見之矣。得見善問者斯可矣。
【読み】
默して之を識すは、吾れ得て之を見ず。善く問う者を見ることを得ば斯れ可なり。

治其器必求其用。學道者當如何爾。
【読み】
其の器を治むるときは必ず其の用を求む。道を學ぶ者は當に如何にすべきのみ。

學始於不欺闇室。
【読み】
學は闇室に欺かざるに始まる。

學者多蔽於解釋注疏。不須用功深。
【読み】
學者多く解釋注疏に蔽わる。須く功を用うること深くすべからず。

大率把捉不定、皆是不仁。
【読み】
大率把捉し定まらざるは、皆是れ不仁なり。

去不仁則仁存。
【読み】
不仁を去るときは則ち仁存す。

仁載此四事。由行而宜之謂義、履此之謂禮、知此之謂智、誠此之謂信。
【読み】
仁は此の四事を載す。行に由って宜しくする之を義と謂い、此を履む之を禮と謂い、此を知る之を智と謂い、此を誠にする之を信と謂う。

神也者、妙萬物而爲言。若上竿弄瓶、至於斲輪、誠至則不可得而知。上竿初習數尺、而後至於百尺。習化其高。矧聖人誠至之事、豈可得而知。淳。
【読み】
神は、萬物に妙にして言を爲す。上竿瓶を弄して、輪を斲[き]るに至るが若き、誠至るときは則ち得て知る可からず。上竿初めて習うこと數尺にして、而して後百尺に至る。習い化すれば其れ高し。矧[いわ]んや聖人誠至るの事、豈得て知る可けんや。淳。

人必以忠信爲本。無友不如己者、無忠信者也。子以四敎。文・行・忠・信。忠信禮之本、人無忠信、則不可以爲學。
【読み】
人必ず忠信を以て本と爲す。己に如かざる者を友とすること無かれというは、忠信無き者なればなり。子四つを以て敎う。文・行・忠・信、と。忠信は禮の本、人忠信無きときは、則ち以て學を爲す可からず。

士大夫必建家廟。廟必東向。其位取地潔不喧處。設席坐位皆如事生。以太祖面東、左昭右穆而已。男女異位、蓋舅婦生無共坐也。姑婦之位亦同。太祖之設、其主皆刻木牌。取生前行第或銜位而已。婦各從夫。每月告朔、茶酒。四時、春以寒食、夏以端午、秋以重陽、冬以長至。此時祭也。每祭訖、則藏主於北壁夾室。拜墳則十月一日拜之。感霜露也。寒食則又從常禮祭之。飮食、則稱家有無。祭器坐席、皆不可雜用。廟門、非祭則嚴扃之、童孩奴妾皆不可使褻而近也。
【読み】
士大夫は必ず家廟を建つ。廟は必ず東に向かう。其の位は地潔くして喧しからざる處を取る。席坐位を設くるは皆生に事うるが如くす。太祖を以て東に面[む]かわしめ、昭を左にし穆を右にするのみ。男女位を異にするは、蓋し舅婦生きるに共に坐すること無ければならん。姑婦の位も亦同じ。太祖の設くる、其の主は皆木牌に刻む。生前の行第或は銜位[がんい]を取るのみ。婦は各々夫に從う。每月告朔、茶酒す。四時、春は寒食を以てし、夏は端午を以てし、秋は重陽を以てし、冬は長至を以てす。此れ時祭なり。每に祭訖[お]わるときは、則ち主を北壁の夾室に藏む。墳を拜するは則ち十月一日に之を拜す。霜露に感ずればなり。寒食には則ち又常禮に從って之を祭る。飮食は、則ち家の有無に稱う。祭器坐席、皆雜に用う可からず。廟門、祭に非ざれば則ち嚴しく之を扃[と]ぢて、童孩奴妾皆褻[な]れて近づかしむ可からず。

仁者在己、何憂之有。凡不在己、逐物在外、皆憂也。樂天知命故不憂、此之謂也。若顏子簞瓢、在他人則憂。而顏子獨樂者、仁而已。
【読み】
仁は己に在り、何の憂うることか之れ有らん。凡そ己に在らずして、物を逐って外に在るは、皆憂うるなり。天を樂しみ命を知る故に憂えずとは、此れ之の謂なり。顏子簞瓢の若き、他人に在っては則ち憂う。而るに顏子獨り樂しむ者は、仁なるのみ。

作詩者未必皆聖賢。當時所取者、取其意思止於禮義而已。其言未必盡善。如比君以碩鼠狡童之類。
【読み】
詩を作る者は未だ必ずしも皆聖賢ならず。當時取る所の者は、其の意思禮義に止まるを取るのみ。其の言未だ必ずしも盡く善ならず。君に比するに碩鼠狡童を以てするの類の如し。

詩有取其意思可取者、如無衣之詩。亦有時而迫切取興、有一事含數件事者、如瞻彼日月、悠悠我思。
【読み】
詩に其の意思取る可きを取る者有り、無衣の詩の如し。亦時にして迫切にして興を取る有り、一事に數件の事を含む者有り、彼の日月を瞻れば、悠悠たる我が思いというが如し。

詖辭偏蔽、淫辭陷溺深。邪辭信其說至於耽惑。遁辭生於不正、窮著便遁。如墨者夷之之辭。此四者楊・墨兼有。
【読み】
詖辭[ひじ]は偏蔽、淫辭は陷溺すること深し。邪辭は其の說を信じて耽惑に至る。遁辭は不正に生じて、窮著すれば便ち遁る。墨者夷之が辭の如し。此の四つの者は楊・墨兼ねて有り。

不以文害辭、文、文字之文。舉一字則是文、成句是辭。詩爲解一字不行、却遷就他說。如有周不顯、自是作文當如此。
【読み】
文を以て辭を害せずとは、文は、文字の文なり。一字を舉ぐるは則ち是れ文、句を成すは是れ辭なり。詩一字を解して行われざるが爲に、却って遷って他說に就く。有周不顯の如き、自づから是れ文を作ること當に此の如くなるべし。

子見南子。子路不說。以孔子本自見衛君行道、反以非禮見迫、孔子歎予所否者天厭之。天喪予之意。否、否泰之否、天厭吾道也。
【読み】
子南子に見ゆ。子路說びず。孔子本自ら衛の君に見えて道を行い、反って非禮を以て迫らるるを以て、孔子予が否なる所ならば天之を厭わんと歎ず。天予を喪ぼすの意なり。否は、否泰の否、天吾が道を厭うなり。

性與天道、此子貢初時未達、此後能達之。故發此歎辭。非謂孔子不言。其意淵奧如此。人豈易到。
【読み】
性と天道とは、此れ子貢初めの時未だ達せず、此れ後に能く之に達す。故に此の歎辭を發す。孔子言わずと謂うには非ず。其の意淵奧なること此の如し。人豈到り易からんや。

曰、山梁雌雉、時哉時哉。色斯舉矣、翔而後集。子路聞之、竦然共立後、三嗅而作。文如此順。恐後人編簡脫錯。嗅字又不知古作甚字。又近唄字(薄賣反)
【読み】
曰く、山梁の雌雉、時なるかな時なるかな。色のままに斯れ舉がり、翔[かけ]りて而して後に集[い]る。子路之を聞いて、竦然として共立して後、三たび嗅いで作[た]つ、と。文此の如く順[つい]づるならん。恐らくは後人編簡脫錯するならん。嗅の字も又古甚[なん]の字作[た]るかを知らず。又唄の字(薄賣反)に近からん。

日知其所亡、月無忘其所能、今人不爲也。
【読み】
日々に其の亡き所を知り、月々に其の能くする所を忘るること無きこと、今の人せざるなり。

信之不篤、執德無由弘。
【読み】
之を信ずること篤からざれば、德を執ること由って弘きこと無し。

立則見其參於前也、在輿則見其倚於衡也、然後可以祈益。
【読み】
立つときは則ち其の前に參[まじ]わるを見、輿に在るときは則ち其の衡に倚るを見て、然して後に以て益を祈る可し。

無衣、若以王道出軍行師、我則修我戈矛、與子同仇。
【読み】
無衣に、若し王道を以て軍を出し師を行[や]らば、我れ則ち我が戈矛を修めて、子と仇を同じくせんとなり。

七月、豳風大意、憂思深遠、有終久底意。不惟豳國當如此。又成王中變、自然發起。周公言終久意思。一之日、二之日、語辭如此。今人尙道甚時如何、又如何。不可謂變月言日。女心傷悲、采蘩女功之時、悲則思慮意、當女功事、思慮一家之所須、君子之奉、殆及君子同享。此不須執辭。此是終久底意思。
【読み】
七月、豳風[ひんふう]の大意、憂思深遠、終久底の意有り。惟豳國は當に此の如くなるべきにあらず。又成王中ごろ變じて、自然に發起す。周公終久の意思を言う。一の日、二の日、語辭此の如し。今の人尙甚の時如何、又如何と道う。月を變じて日と言うと謂う可からず。女の心傷み悲しむ、蘩[はん]を采る女功の時、悲しむは則ち思慮の意、女功の事に當たって、一家の須つ所、君子の奉を思慮し、殆ど君子と同じく享す。此れ須く辭を執るべからず。此は是れ終久底の意思なり。

鴟鴞、惡鳥。謂之旣取我子、無毀我室、言惜巢之甚。在鳥如此。在人則是不壞王室。不必以子爲管・蔡、鴟鴞是管・蔡。此一篇闕文難解。
【読み】
鴟鴞[しきょう]は、惡鳥なり。之を旣に我が子を取る、我が室を毀ること無かれと謂うは、巢を惜しむことの甚だしきを言う。鳥に在っては此の如し。人に在っては則ち是れ王室を壞らざれ、と。必ずしも子を以て管・蔡とせず、鴟鴞は是れ管・蔡なり。此の一篇闕文にて解し難し。

出車喓喓草蟲、意是南征西夷怨。薄伐西戎時如此。
【読み】
出車に喓喓[ようよう]たる草蟲とは、意うに是れ南征して西夷怨むならん。薄[いささ]か西戎を伐つ時此の如し。

采薇彼爾、戍役。戍役維何。維常之華。言與將帥相承副如常棣之華。路、路車也。君子、將帥也。君子所依、小人所腓、喩君子之憑依士衆、小人則腓也。易咸其腓。腓、腳肚動貌。作止、柔止、喩時。
【読み】
采薇に彼の爾[さか]んなるとは、戍役なり。戍役は維れ何ぞ。維れ常の華なり、と。言うこころは、將帥と相承副すること常棣の華の如し、と。路は、路車なり。君子は、將帥なり。君子の依る所、小人の腓[おお]わる所とは、君子は士衆に憑依し、小人は則腓するに喩う。易に其の腓[こむら]に咸ず、と。腓は、腳肚動く貌。作[お]いたり、柔らかなりとは、時に喩う。

皇華、送之以禮樂。君不能自行。故遣使以諭誠意於四方。若無忠信、安得誠意。言此詩是如此。不必詩中求。
【読み】
皇華は、之を送るに禮樂を以てす。君自ら行うこと能わず。故に使を遣わして以て誠意を四方に諭す。若し忠信無くんば、安んぞ誠意を得ん。言うこころは、此の詩是れ此の如し、と。必ずしも詩中に求めざれ。

九罭遵渚、不宜刺朝廷。言公之不歸、於女信安乎。得無以我公歸乎。
【読み】
九罭[きゅうよく]に渚に遵うとは、宜しく朝廷を刺るべからざるなり。言うこころは、公の歸らざる、女に於て信に安らかならんや。我が公を以[い]て歸ること無きことを得んや、と。

詩若還以樂天知命處之、則一時都無事。其中也有君子情意不到處。
【読み】
詩若し還って天を樂しみ命を知るを以て之に處せば、則ち一時都て事無し。其の中に君子の情意到らざる處有り。

詩可以怨。譏刺總是。
【読み】
詩は以て怨む可し。譏刺は總て是れなり。

小弁與舜之怨別。舜是自怨。小弁直怨我罪伊何。
【読み】
小弁[しょうはん]と舜の怨りとは別なり。舜は是れ自ら怨む。小弁は直に我が罪伊[こ]れ何ぞと怨む。

大要則止乎禮義。其情則是國人之情。
【読み】
大要は則ち禮義に止まる。其の情は則ち是れ國人の情。

考槃、觀其名早已可見君子之心、處之已安、知天下決然不可復爲。雖然如此退處、至於其心、寤寐閒永思念不得復告於君。畎畝不忘君之意。
【読み】
考槃は、其の名を觀て早く已に君子の心を見る可く、之に處すること已に安んじて、天下決然として復爲す可からざることを知る。然も此の如く退處すと雖も、其の心に至っては、寤寐の閒も永く復君に告ぐることを得ざることを思い念う。畎畝も君を忘れざるの意なり。

候人言不稱其君臣相遇。薈兮蔚兮、草木藂茂貌。山有薈蔚之草木、便朝躋而采之。室有婉孌之少女、人便斯飢而思之。薈蔚言其材、婉孌言其德。
【読み】
候人は其の君臣相遇うに稱わざるを言う。薈[わい]たり蔚たりとは、草木藂茂するの貌。山に薈蔚たる草木有れば、便ち朝に躋[のぼ]って之を采る。室に婉孌[えんれん]たる少女有れば、人便ち斯に飢えて之を思う。薈蔚は其の材を言い、婉孌は其の德を言う。

白華、自是漚之爲菅。白茅、自是爲束。各自爲用。如后妾各自有職分。之子却遠此義理。雲結爲雨露、所以均被菅茅。王之遇妃妾、貴賤亦當均被。我天運艱難、故之子不猶。碩人、幽王也。樵彼桑薪、薪之善者也。申后宜待之以禮、今反薄。鼓聲聞於外、我之誠意反不能感動於君、此有鶖得所之不若也。鴛鴦戢翼、其常如此。扁石、登高以升車。今舍此履卑。如舍申適褒。
【読み】
白華は、自ら是れ之を漚[ひた]して菅とす。白茅は、自ら是れ束ぬることをす。各々自ら用を爲す。后妾各々自ら職分有るが如し。之の子は却って此の義理に遠ざかる。雲結んで雨露と爲るは、均しく菅茅に被らしむる所以なり。王の妃妾に遇う、貴賤亦當に均しく被らしむべし。我が天運艱難、故に之の子猶[はか]らず。碩人は、幽王なり。彼の桑薪を樵[きこ]るとは、薪の善き者なり。申后宜しく之を待つに禮を以てすべく、今反って薄し。鼓して聲外に聞こゆとは、我が誠意反って君を感動すること能わず、此れ鶖[しゅう]所を得るに若かざること有るなり。鴛鴦[えんおう]翼を戢[おさ]むとは、其の常此の如し。扁石は、高きに登るに車に升るを以てす。今此を舍てて卑きを履む。申を舍てて褒に適くが如し。

丘中有麻、大都言丘、言阿、言山、多喩朝廷。丘中是物所生聚處、麻是亦生其閒。不謂丘中更豐美、但言丘中有麻。麻能衣人、有用底物。喩賢者有益於人。言朝廷當有賢者、今彼留乃小人、賢者却諮嗟不見用。將其來施施、思其來。當有賢者以施惠澤也。麥、人所賴以食。亦喩賢者。却反在郷國。故思其來食。李、徒能悅人口、而不足以濟人。如小人在位、徒能悅人、而無實效及於民。又貽我佩玖、止以其玩好而不切於用賢者、則如麻麥之衣食人。
【読み】
丘中有麻、大都丘と言い、阿と言い、山と言うは、多くは朝廷に喩う。丘中は是れ物の生じ聚まる所の處、麻は是れ亦其の閒に生ず。丘中更に豐美なることを謂わずして、但丘中に麻有りと言う。麻は能く人に衣して、用うること有る底の物。賢者の人に益有るに喩う。言うこころは、朝廷當に賢者有るべく、今彼に乃の小人を留めて、賢者却って諮嗟して用いられず、と。將[ねが]わくは其れ來りて施施たれとは、其の來らんことを思ってなり。當に賢者以て惠澤を施すこと有るべし。麥は、人の賴りて以て食する所。亦賢者に喩う。却って反って郷國に在り。故に其の來りて食せんことを思う。李は、徒能く人口を悅ばしめて、以て人を濟うに足らず。小人位に在って、徒能く人を悅ばしめて、實效民に及ぼすこと無きが如し。又我に佩玖[はいきゅう]を貽[おく]れとは、止其の玩好のみを以て賢者を用うるに切ならざるときは、則ち麻麥の人に衣食するに如からんや、と。

丘中有麻、不是所宜有處。(一本無不字。)
【読み】
丘中に麻有るは、是れ宜しく有るべき所の處にあらず。(一本に不の字無し。)

碩人頎頎、碩人敖敖、疑頎頎敖敖兩句先言莊公。衣褧衣、非婦人服。說於農郊、言其勤政。已下始言莊姜。翟茀以朝、勸勉莊公。使大夫夙退、無使君勞。不說使驕上僭、却言其勤政。見莊姜賢處。含怒不妒爭意。施罛濊濊、鱣鮪發發、言罛非取魚之意、不能得大魚、興莊姜不見答。徒有葭菼揭揭、似庶姜孽孽。驕且上僭。故庶士有朅。言國人閔而憂之也。罛、小器也。鱣鮪、大魚也。葭菼、冗雜貌。罛中又隱無子意。
【読み】
碩人頎頎[きき]、碩人敖敖、疑うらくは頎頎敖敖の兩句先づ莊公を言うならん。褧衣[けいい]を衣るは、婦人の服に非ず。農郊に說[やど]るとは、其の政を勤むるを言う。已下始めて莊姜を言う。翟茀[てきふつ]して以て朝して、莊公を勸め勉む。大夫をして夙に退いて、君をして勞せしむること無からしむ。驕りて上に僭せしむることを說かず、却って其の政を勤むることを言う。莊姜の賢なる處を見る。怒りを含んで妒[ねた]み爭わざるの意なり。罛[あみ]を施[もう]くること濊濊[かつかつ]たり、鱣鮪[てんい]發發たりとは、言うこころは、罛は魚を取るの意に非ず、大魚を得ること能わず、莊姜答えられざるに興[たと]う。徒葭菼[かたん]揭揭[けつけつ]たる有り、庶姜孽孽[げつげつ]たるに似れり。驕りて且つ上に僭す。故に庶士朅[けつ]たる有り。言うこころは、國人閔れんで之を憂うるなり。罛は、小器なり。鱣鮪は、大魚なり。葭菼は、冗雜の貌。罛の中又子無き意を隱す。

自牧歸荑。卑以自牧之意。荑、柔順意。自牧歸順、信美且異。此非是女能如此美、乃賢美人貽之。如此深美之、所以切責之。序言衛君無道、夫人無德。
【読み】
牧自り荑[つばな]を歸[おく]る。卑しくするに牧自りするの意を以てす。荑は、柔順の意。牧自り順を歸る、信に美しくして且つ異なり。此れ是の女能く此の如く美なるに非ず、乃ち賢美人之を貽[おく]る。此の如く深く之を美むるは、切に之を責むる所以なり。序に言う、衛君道無く、夫人德無し、と。

式微。式、辭。微衛君之故、故字、以其職而言。以其爲方伯連帥、故暴露於中野。微衛君之躬、指其人也。又切指其人者、以仁人君子望之。泥中、泥塗之中也。大率詩意貴優柔不迫切。此乃治詩之法。以爲君若不在此、我胡爲在此。斥黎君也。乃是脅君以歸、又迫切時幾乎罵。
【読み】
式微。式は、辭なり。衛君の故に微[あら]ずばの、故の字は、其の職を以て言う。其の方伯連帥爲るを以て、故に中野に暴露す。衛君の躬に微ずばとは、其の人を指すなり。又切に其の人を指す者は、仁人君子を以て之を望めばなり。泥中は、泥塗の中なり。大率詩の意優柔にして迫切せざるを貴ぶ。此れ乃ち詩を治むるの法なり。以爲えらく、君若し此に在らざれば、我れ胡ぞ此に在ることをせん、と。黎君を斥[そし]るなり。乃ち是れ君を脅すに歸ることを以てして、又迫切なること時に罵るに幾し。

旄丘、地名、前高後下。誕之節兮、言葛節短也。延蔓相屬。叔伯何故却不相救卹。何字之(一作文。)意、黎在衛之西、狄在衛之北。我黎之臣子非無車、但汝不與我同故也。
【読み】
旄丘[ぼうきゅう]は、地の名、前高く後下し。誕[さか]れる節あるは、葛の節短きを言うなり。延蔓相屬す。叔伯何が故に却って相救卹[きゅうじゅつ]せざる。何の字の(一に文に作る。)意、黎は衛の西に在り、狄は衛の北に在り。我が黎の臣子車無きに非ず、但汝我と與に同じくせざる故なり。

中谷有蓷。蓷菼葦、當在水、不當在谷中。是失所意。脩字非修長之修、疑同周禮脩脯之脩。過於乾底意。暵、暴也。其乾猶未甚、但遇爾艱難、我便不善。去濕則其性之濕都無。言其恩意已絕。啜其泣矣、何嗟及矣、嗟時也。
【読み】
中谷に蓷[たい]有り。蓷は菼葦[たんい]、當に水に在るべく、當に谷中に在るべからず。是れ所を失するの意なり。脩の字は修長の修に非ず、疑うらくは周禮脩脯の脩に同じからん。乾くに過ぎる底の意なり。暵[かん]は、暴[さら]すなり。其の乾くこと猶未だ甚だしからず、但爾の艱難に遇って、我れ便ち善からず。濕いを去るときは則ち其の性の濕い都て無し。其の恩意已に絕ゆることを言う。啜[せつ]として其れ泣く、何ぞ嗟[なげ]くこと及ばんとは、時を嗟くなり。

三英粲兮、粲然光明貌。英乃若五紽類。自是衣服禮數制度、非三德也。
【読み】
三英粲たりとは、粲然として光明なる貌。英は乃ち五紽[ごた]の類の若し。自づから是れ衣服禮數制度、三德に非ざるなり。

芄蘭、蔓生草、柔弱不能自立、須依附方成枝葉。興惠公柔弱童子、佩成人之服。雖佩人君成人之服、其才能却不我知。垂帶悸兮、臨朝悸悸然執心不定。甲、長也。才能却不能君長我庶民。
【読み】
芄蘭[がんらん]は、蔓生の草、柔弱にして自ら立つこと能わず、須く依附して方に枝葉を成すべし。惠公は柔弱の童子にして、成人の服を佩びるに興う。人君成人の服を佩びると雖も、其の才能却って我を知らず。帶を垂るること悸たりとは、朝に臨んで悸悸然として心を執ること定まらざるなり。甲は、長なり。才能却って我が庶民に君長たること能わざるなり。

兔爰、兔奔走意。詩序閔周由桓王失信、故諸侯背叛、構怨連禍、而使王師傷敗、却周人受其禍難。羅本以罝兔。今却雉離(徐本離作罹。)於羅。如諸侯不軌、周人受害。
【読み】
兔爰[とえん]は、兔奔走するの意。詩の序に周桓王信を失するに由りて、故に諸侯背き叛き、怨みを構え禍いを連ねて、王の師をして傷れ敗らしめて、却って周人其の禍難を受くることを閔れむ。羅は本以て兔を罝[あみ]せんとす。今却って雉羅[あみ]に離[かか](徐本離を罹に作る。)る。諸侯不軌にして、周人害を受くるが如し。

雄雉于飛、泄泄其羽、雙飛之意。此男怨之辭。言雄雉尙得其配匹、己反不如、我之懷思、自罹此阻隔。次章女怨。下上其音、相應和之辭。日月取其迭往迭來之意。又日月陰陽相配而不相見、又旦暮所見、動人情思。總意包其閒。百爾君子責爲政者。汝豈不知德行。戰國閒惟是報怨、不然貪人土地、未嘗有以義興師動衆。言汝但不忮不求、何所用而不臧。忮、報怨也。求、貪土地也。若以義發師、婦人何怨之有。婦人猶勉之、正也。若謂夫從役、婦便怨、成何義理。
【読み】
雄雉于[ここ]に飛ぶ、泄泄[えいえい]たる其の羽ありとは、雙[なら]び飛ぶの意なり。此れ男怨むの辭。言うこころは、雄雉すら尙其の配匹を得るに、己反って如らず、我が懷い思う、自ら此の阻隔に罹る、と。次の章は女怨むなり。下上其の音ありとは、相應和するの辭。日月は其の迭[たが]いに往き迭いに來るの意を取る。又日月陰陽相配して相見ず、又旦暮見る所、人の情思を動かす。總意其の閒に包む。百[およ]そ爾君子とは政を爲むる者を責む。汝豈德行を知らざらんや。戰國の閒惟是れ怨みを報い、然らざれば人の土地を貪って、未だ嘗て義を以て師を興して衆を動かすこと有らず。言うこころは、汝但忮[そこな]わず求[むさぼ]らずんば、何の用いる所にして臧[よ]からざらん、と。忮は、怨みを報ゆるなり。求は、土地を貪るなり。若し義を以て師を發せば、婦人何の怨むことか之れ有らん。婦人猶之を勉むるは、正しきなり。若し夫役に從い、婦便ち怨むと謂わば、何の義理を成さん。

狡童・褰裳、此兩篇都只一意、別無異義。然謂君爲狡童、於義有害。離騷之中、憂君之心則至。然謂之不合道者、後面比君爲禽。又況目之曰狡童、言不與我、卽是鄭國人臣罪當誅。天王聖明、文王之心以紂爲聖明。何可比君爲禽。又況目之狡童。但作詩者未必皆聖人。孔子各有所取、此則取其不能與賢人圖事。
【読み】
狡童・褰裳[けんしょう]、此の兩篇は都て只一意、別に異義無し。然れども君を謂いて狡童と爲すは、義に於て害有り。離騷の中、君を憂うるの心は則ち至れり。然れども之を道に合わずと謂う者は、後面君を比して禽とすればなり。又況んや之を目づけて狡童と曰って、我と與にせずと言うは、卽ち是れ鄭國の人臣罪當に誅すべし。天王聖明とは、文王の心紂を以て聖明とす。何ぞ君を比して禽とす可けん。又況んや之を狡童と目づけんや。但詩を作る者未だ必ずしも皆聖人ならず。孔子各々取る所有るは、此れ則ち其の賢人と與に事を圖ること能わざるに取る。

淸人一篇、却是詠歌其事、含情意在其閒。消・彭・軸、莫也是地名。左旋右抽、中軍作好、不必言射、猶言高克之進不以禮。
【読み】
淸人の一篇、却って是れ其の事を詠歌して、情意を含んで其の閒に在り。消・彭・軸は、莫[あるい]は是れ地の名ならんか。左に旋らし右に抽し、中軍好を作すとは、必ずしも射を言わず、猶高克が進むに禮を以てせずと言うがごとし。

摽有梅、汲汲惟恐不及時。
【読み】
摽有梅[ひょうゆうばい]は、汲汲として惟時に及ばざらんことを恐る。

有女同車、前說忽不娶齊女。後言齊女、却失却本意。忽不娶齊、謂齊大非偶、却不因色。此則是設辭、下言彼美結。他詩中似如此者亦多。
【読み】
有女同車、前說忽齊女を娶らず。後に齊女と言うは、却って本意を失却す。忽齊を娶らざるは、齊の大偶に非ざるを謂い、却って色に因らず。此れ則ち是れ辭を設けて、下に彼の美と言って結ぶ。他の詩中此の如きに似る者亦多し。

丰、以諸事豐備。此詩主意、言男則須言女。是俟我於巷、非不下我、又俟我於堂、非不有禮。將、迎、不可訓作送。但女家因事不得將迎也。衣錦、裳錦卽是丈夫。若婦人則惟欲其顯。安有惡其文之著。古之錦疑今之綾。是褧錦相副之物、如男女相配。叔兮伯兮、故駕予與行。都主男女怨思失期意。
【読み】
丰[ふう]は、諸事豐備なることを以てす。此の詩の主意、男を言うときは則ち須く女を言うべし。是れ我を巷に俟つは、我に下らざるに非ず、又我を堂に俟つは、禮有らざるに非ず。將は、迎、訓じて送と作す可からず。但女家事に因りて將迎することを得ざるなり。錦を衣て、錦を裳にするは卽ち是れ丈夫。若し婦人ならば則ち惟其の顯なることを欲せん。安んぞ其の文の著なるを惡むこと有らん。古の錦は疑うらくは今の綾ならん。是れ褧錦[けいきん]相副うるの物、男女相配するが如し。叔伯、故に駕せよ予れ與に行かんという。都て男女期を失わんことを怨み思う意を主とす。

東門之楊、言婚自昏時。今則明星煌煌而不至。楊、最得陽氣之先者。言人反不及時。
【読み】
東門の楊は、婚は自ら昏時なることを言う。今は則ち明星煌煌として至らず。楊は、最も陽氣を得るの先なる者。人反って時に及ばざることを言う。

凡說婚姻男女多言東。東取生育之意。人君多言南、凶喪多言北。又有各就其國所有而言者、如周詩多言南。
【読み】
凡そ婚姻男女を說くには多く東を言う。東は生育の意に取る。人君には多く南を言い、凶喪には多く北を言う。又各々其の國の有る所に就いて言う者有り、周の詩多く南を言うが如し。

羔裘豹袪、不是相稱。猶君臣民須一體、今反不相卹。民則惟惠之懷。言豈無他人、惟子之故。
【読み】
羔裘[こうきゅう]豹袪[ひょうきょ]は、是れ相稱わず。猶君臣民須く一體なるべくして、今反って相卹えざるがごとし。民は則ち惟惠みを之れ懷[おも]う。豈他人無けんや、惟子が故なりと言う。

汾沮洳。沮洳、水浸下濕之地、雖有生物、衆人亦棄之不采。而君去采之。言其儉嗇太過。衆人棄之如此、彼其之子反美愛之無度。公路・公行、非公道如此。非衆人所共取卽非公道。公族、公類。公路、衆人所共由之路。
【読み】
汾[ふん]の沮洳[しょじょ]。沮洳は、水浸す下[ひく]く濕[うるお]えるの地、生物有りと雖も、衆人亦之を棄てて采らず。而るに君之を采り去る。其の儉嗇太だ過ぎたるを言う。衆人之を棄つること此の如くなれども、彼の其の之の子反って美として之を愛すること度無し。公路・公行は、公道に非ざること此の如し。衆人共に取る所に非ざるは卽ち公道に非ず。公族は、公の類。公路は、衆人共に由る所の路なり。

伐檀。檀、材可適用者。言君子雖不得進、亦自致身於淸潔之地。檀美材、須是作梁棟、用至於輪輻、非檀可爲。
【読み】
伐檀。檀は、材用に適う可き者なり。言うこころは、君子進むことを得ずと雖も、亦自ら身を淸潔の地に致す、と。檀の美材、須く是れ梁棟に作るべく、用て輪輻に至るは、檀のす可きに非ず。

東門之墠。除地曰墠。茹蘆可以染色。言以禮則坦平如墠、以色則艱阻如阪。所以致民如此者、正謂其室家則邇、其人甚遠。大抵丰、東門之楊、盡是已許昏後、以禮不足、不能成昏、至於過時後、上又不能使人殺禮。故使人至淫奔。婦人脯脩棗栗若以禮時、則是踐履此室家之道。豈不思欲得以禮如此。但子不我卽。故待禮不得也。
【読み】
東門の墠[せん]。地を除[はら]うを墠と曰う。茹蘆[じょりょ]は以て色を染む可し。言うこころは、禮を以てするときは則ち坦平なること墠の如く、色を以てするときは則ち艱阻阪の如し。民此の如きことを致す所以の者は、正に謂えらく、其の室家は則ち邇くして、其の人甚だ遠ければなり、と。大抵丰、東門之楊は、盡く是れ已に許昏の後、禮足らざるを以て、昏を成すこと能わずして、時を過ぐるに至る後、上又人をして禮を殺がしむること能わず。故に人をして淫奔に至らしむ。婦人の脯脩棗栗若し禮時を以てせば、則ち是れ此の室家の道を踐み履まん。豈禮を以てすること此の如きことを得んと欲することを思わざらんや。但子我に卽かず。故に待禮得ざるなり。

葛屨、儉嗇便機巧計較所得也。糾糾、牢固意。言牢做葛屨、亦以履霜。摻摻、貴者。言衣服亦分貴賤。禮、諸母不漱裳。要之襋之、補綻意。提提、據字義勞意。宛然左辟、右插衣。古者短右袂、謂便於事。此皆賤者之事。却佩象揥貴者之服、此等總生於褊心。
【読み】
葛屨[かっく]は、儉嗇機巧を便なりとして計較して得る所なり。糾糾は、牢固の意。牢く葛屨を做し、亦以て霜を履むことを言う。摻摻[さんさん]は、貴き者。衣服亦貴賤を分かつことを言う。禮に、諸母裳を漱がず、と。之を要し之を襋[きょく]すとは、綻びを補うの意。提提は、字義に據るに勞するの意。宛然として左に辟くは、右に衣を插す。古右の袂を短くするは、事に便なるを謂う。此れ皆賤しき者の事。却って象揥[てい]貴者の服を佩びるは、此れ等は總て褊心より生ず。

無衣、武公始幷晉國而能請命於天子之使。故美其可美也。當時使來到國。故請之。七與六、衣中一箇數目。無以六爲節。此惟美其能請命一事、以簒國殺君不以爲羞、至於衣服僭侈何難。然其心不安、至於請命然後安。此意思却可取。又聖人不獨取其如此、亦以見當時之善。雖大惡有如此詩亦可取。魯風詩非無大惡。然聖人錄其頌、不錄其風、此則爲君諱也。觀其頌之善止於此、其他則可知。
【読み】
無衣は、武公始めて晉の國を幷せて能く命を天子の使に請う。故に其の美む可きを美むるなり。當時使來りて國に到る。故に之に請う。七と六とは、衣の中一箇の數目。六を以て節とすること無し。此れ惟其の能く命を請う一事を美め、國を簒い君を殺すを以て以て羞とせざれば、衣服に至っては僭侈何ぞ難からん。然れども其の心安んぜず、命を請うに至って然して後に安んず。此の意思却って取る可し。又聖人獨其の此の如くなるを取らず、亦以て當時の善を見す。大惡と雖も此の如きこと有れば詩も亦取る可し。魯風の詩大惡無きに非ず。然れども聖人其の頌を錄して、其の風を錄せざるは、此れ則ち君の爲に諱めばなり。其の頌の善此に止まることを觀て、其の他は則ち知る可し。

揚之水、白石鑿鑿、同介甫說。素衣朱襮、見其美於外。如桓叔在下、反見其德澤於民、使晉人從之。
【読み】
揚たる之の水、白石鑿鑿たりは、介甫が說に同じ。素衣朱襮[しゅはく]は、其の美を外に見すなり。桓叔下に在りて、反って其の德澤を民に見して、晉人をして之に從わしむるが如し。

采苓。苓是甘草。喩讒最好。若首陽之上却無。
【読み】
采苓。苓は是れ甘き草。讒に喩うるに最も好し。首陽の上の若きは却って無し。


参考文献
『和刻本漢籍 二程全書』(中文出版社)
『二程集』(里仁書局)