二程全書卷之六十四  伊川先生文六



婚禮

納采
納采、謂婿氏爲女氏所采。故致禮以成其意。使辭曰、吾子有惠貺某室也。某
(婿父。)有先人之禮、使某也敢納采。
【読み】
納采は、婿氏女氏の爲に采する所を謂う。故に禮を致して以て其の意を成す。使辭して曰く、吾子某の室に惠み貺[たま]うこと有り。某(婿父。)先人の禮有り、某をして敢えて納采せしむ、と。

問名
問名、謂問所娶女子之名。若今之小名也。使者請辭曰、某旣受命、將加諸卜。敢請女爲誰氏。
【読み】
問名は、娶る所の女子の名を問うを謂う。今の小名の若し。使者請い辭して曰く、某旣に命を受けて、將に卜に加えんとす。敢えて請う女誰氏とかする、と。

納吉
納吉、謂婿氏旣得女名、以告神而卜之、得吉兆、又往告女氏。猶今之言定。使辭曰、吾子有貺命、某加諸卜占曰吉。使某也敢告。
【読み】
納吉は、婿氏旣に女の名を得て、以て神に告して之を卜して、吉兆を得、又往いて女氏に告ぐるを謂う。猶今の言定のごとし。使辭して曰く、吾子命を貺うこと有り、某卜占に加うるに吉なりと曰う。某をして敢えて告させしむ、と。

納徵
徵、證也、成也。用皮帛以證成娶婦之禮。使辭曰、吾子有命、貺室某也。某有先人之禮、某物使某也請納徵。
【読み】
徵は、證なり、成るなり。皮帛を用いて以て證して婦を娶るの禮を成すなり。使辭して曰く、吾子命有り、室を某に貺う。某先人の禮有り、某の物某をして請いて納徵せしむ、と。

請期
請期、實告婚期也。必先禮請以示謙。使辭曰、吾子有貺命。某旣申受命矣。惟是三族之不虞、使某也請吉日。女氏對曰、某旣前受命矣。惟命之從
(一作是聽。)。使又曰、某使某聽命于吾子。女氏固辭。使曰、某使某受命。吾子不許、某敢不告期曰某日。(日猶言甲乙之類。)
【読み】
請期は、實に婚の期を告ぐるなり。必ず先づ禮請して以て謙を示す。使辭して曰く、吾子命を貺うこと有り。某旣に申[かさ]ねて命を受く。惟是れ三族の不虞、某をして吉日を請わしむ、と。女氏對えて曰く、某旣に前に命を受く。惟命に從わん(一に是れ聽かんに作る。)、と。使又曰く、某某をして命を吾子に聽かしむ、と。女氏固辭す。使曰く、某某をして命を受けしむ。吾子許さずんば、某敢えて期某の日と曰うことを告げじ、と。(日は猶甲乙と言うの類のごとし。)

成婚
期日、婿氏告迎于廟。初婚
(禮雖云初婚、然當量居之遠近。)、婿受命于所尊(謂醮而受告戒之命。)、出乘前引婦車(受命而出、乘馬前引婦車、迎婦之車也。今或用擔子。)、執燭前馬(使徒役持火炬居前照道。今用燭四或二。)。賓將至(賓、婿也。)、女氏之擯、俟于大門之外、主人俟于門内。賓降(下車也。)、擯進揖請事。賓對(今以介對。)曰、某(稱婿父。)命某(婿名。)以茲初婚、將請承命。擯對曰、主人固以恭俟。擯揖入門、主人揖賓。及階主人揖升、介以賓升。介南面、贊賓就位(東面。)、再拜、贊卽席内告具。主人肅賓而先。賓從之見于廟(見女氏之先祖。)。至于中堂、見女之尊者、徧見女之黨於東序。贊者延賓出就位(贊者以女氏之子姪爲之。)。卒食、興辭(介以賓辭。)。主人請入戒女氏、奉女辭于廟、至于中堂。母南面于房外、女出于母左。父西面醮女而戒之、母施衿結帨(今謂之整冠飾。)、戒諸西階之上。擯者出、婿降立于庭中、北面。婦降自西階。婿揖前導、立于車前。旣升、而先俟於門外(先之者、導之也。門外、婿家大門外也。)。婦至。主人(婿也。)揖婦以入。及寢門、揖入。婿退就次。及期(期謂早暮之節。)、贊者引婿入(贊者婿氏之女相。)、立東席、西面、姆侍奉婦立西席、東面。贊揖婿再拜(男下女也。)、姆侍扶婦答拜。遂卽席、女之從者沃婿盥于南、婿之從者沃婦盥於北(沃盥、以水濯手也。於坐席之南北。)。婿搢笏舉婦蒙首(蓋頭也。)。復位、贊者進酌(用常爵。)、三爵、用巹。姆助婦舉、卒食。相者以婿婦興說服。女之從者受婿服、婿之從者受婦服。燭出(康成云、禮畢。)、女侍待呼于外。夙興、婦纚筓衣服以俟見。質明、贊見婦于舅姑、進拜、奠贄還又拜。見屬之尊者長者於東偏、南面東上。屬自爲別(是爲見已、不復特見。)。若異宮、則見諸父各就其寢。幼者賤者、皆見於堂下、西面北上。舅姑入于室、婦盥饋。舅姑饗婦于堂之西偏。卒食、婦降自阼階(饗禮謂嫡婦。)。翌日、婿拜于婦氏之門。
【読み】
期日、婿氏迎うることを廟に告す。初婚(禮に初婚と云うと雖も、然れども當に居の遠近を量るべし。)、婿命を所尊に受け(醮[しょう]して告戒の命を受くるを謂う。)、出て乘って前[すす]めて婦の車を引き(命を受けて出て、馬に乘って前めて婦の車を引くとは、婦の車を迎うるなり。今或は擔子を用う。)、燭を執って馬を前む(徒役をして火炬を持して前に居して道を照らさしむ。今燭四つ或は二つを用う。)。賓將に至らんとして(賓は、婿なり。)、女氏の擯[ひん]、大門の外に俟ち、主人門内に俟つ。賓降りて(車より下るなり。)、擯進み揖して事を請う。賓對えて(今介を以て對う。)曰く、某(婿の父を稱す。)(婿の名。)に命じて茲の初婚を以て、將に請いて命を承らしむ、と。擯對えて曰く、主人固より以て恭しく俟つ、と。擯揖して門に入り、主人賓を揖す。階に及んで主人揖して升り、介賓を以[い]て升る。介南面して、賓を贊けて位(東面。)に就いて、再拜せしめ、贊けて席内に卽かしめて具わることを告ぐ。主人賓を肅[すす]めて先だつ。賓之に從って廟に見ゆ(女氏の先祖に見ゆ。)。中堂に至って、女の尊者に見え、徧く女の黨を東序に見ゆ。贊くる者賓を延いて出て位に就かしむ(贊くる者は女氏の子姪を以て之を爲す。)。食を卒えて、興きて辭す(介賓を以て辭す。)。主人請い入って女氏を戒め、女の辭を廟に奉じて、中堂に至る。母房外に南面し、女母の左に出づ。父西面して女に醮して之を戒め、母衿を施し帨[せい]を結び(今之を整冠飾と謂う。)、西階の上に戒む。擯する者出て、婿降りて庭中に立って、北面す。婦西階自り降る。婿揖して前に導いて、車の前に立つ。旣に升って、先んじて門外に俟つ(之に先んずる者は、之を導けばなり。門外は、婿家の大門の外なり。)。婦至る。主人(婿なり。)婦を揖して以て入る。寢門に及んで、揖して入る。婿退いて次に就く。期に及んで(期は早暮の節を謂う。)、贊くる者婿を引いて入る(贊くる者は婿氏の女相。)、東席に立って、西面せしめ、姆侍婦を奉じて西席に立って、東面せしむ。贊婿を揖して再拜せしめ(男女に下るなり。)、姆侍婦を扶けて答拜せしむ。遂に席に卽いて、女の從者沃[そそ]いで婿南に盥[あら]い、婿の從者沃いで婦北に盥う(沃いで盥うとは、水を以て手を濯うなり。坐席の南北に於てす。)。婿笏を搢[はさ]んで婦の蒙首を舉ぐ(蓋頭なり。)。位に復って、贊くる者進酌し(常爵を用う。)、三爵して、卺[きん]を用う。姆婦を助けて舉げて、食を卒わらしむ。相者婿婦を以て興きて服を說[ぬ]がしむ。女の從者は婿の服を受け、婿の從者は婦の服を受く。燭出て(康成が云く、禮畢わる、と。)、女侍呼ぶことを外に待つ。夙に興きて、婦纚筓[りけい]衣服して以て見ゆることを俟つ。質明に、贊婦を舅姑に見えしめ、進み拜して、贄[し]を奠[お]き還って又拜す。屬の尊者長者を東偏に見え、南面東上す。屬自づから別を爲す(是れ已に見るが爲に、復特に見えず。)。若し異宮なれば、則ち諸父に見ゆるに各々其の寢に就く。幼者賤者は、皆堂下に見え、西面北上す。舅姑室に入れば、婦盥饋す。舅姑婦を堂の西偏に饗す。食を卒えれば、婦阼階自り降る(饗禮は嫡婦を謂う。)。翌日、婿婦氏の門に拜す。

奠菜
三月預祭祀、事舅姑。復三月然後奠菜。祝稱婦之姓曰某氏來婦、敢奠菜於舅某子、姑某氏。
(此段、義有未詳。)
【読み】
三月にして祭祀に預り、舅姑に事う。復三月にして然して後に奠菜す。祝婦の姓を稱して某氏の來婦、敢えて舅某子、姑某氏に奠菜すと曰う。(此の段、義未だ詳らかならざること有り。)


葬說(幷圖)
【読み】
葬說(幷びに圖)

卜其宅兆、卜其地之美惡也。非陰陽家所謂禍福者也。地之美者、則其神靈安、其子孫盛。若培壅其根而枝葉茂。理固然矣。地之惡者則反是。然則曷謂地之美者。土色之光潤(一作澤。)、草木(一作生物。)之茂盛、乃其驗也。父祖子孫同氣、彼安則此安、彼危則此危。亦其理也。而拘忌者惑以擇地之方位、決日之吉凶。不亦泥乎。甚者不以奉先爲計、而專以利後爲慮。尤非孝子安厝之用心也。惟五患者不得不愼、須使異日不爲道路、不爲城郭、不爲溝池、不爲貴勢所奪、不爲耕犁所及(一本所謂五患者、溝渠、道路、避村落、遠井窯。)。五患旣愼、則又鑿地必至四五丈、遇石必更穿之、防水潤也。旣葬、則以松脂塗棺槨、石灰封墓門。此其大略也。若夫精畫、則又在審思慮矣。其火葬(一作焚。)者、出不得已。後不可遷就同葬(一作焚。)矣。至於年祀浸遠、曾高不辨、亦在盡誠。各具棺槨葬之、不須假夢寐蓍龜而決也。葬之穴、尊者居中、左昭右穆、而次後則或東或西、亦左右相對而啓穴也。出母不合葬、亦不合祭。棄女還家、以殤穴葬之。
【読み】
其の宅兆を卜すること、其の地の美惡を卜するなり。陰陽家の所謂禍福という者に非ず。地の美なる者は、則ち其の神靈安く、其の子孫盛んなり。其の根を培壅して枝葉茂るが若し。理固に然り。地の惡しき者は則ち是に反す。然らば則ち曷をか地の美なる者と謂う。土色の光潤(一に澤に作る。)、草木(一に生物に作る。)の茂盛は、乃ち其の驗なり。父祖子孫氣を同じくして、彼安きときは則ち此れ安く、彼危うければ則ち此れ危うし。亦其の理なり。而るに拘忌の者惑わすに地の方位を擇び、日の吉凶を決することを以てす。亦泥まざるや。甚だしき者は先に奉ずるを以て計とせずして、專ら後を利するを以て慮りとす。尤も孝子安厝[あんそ]の用心に非ず。惟五患は愼まざることを得ず、須く異日道路と爲らず、城郭と爲らず、溝池と爲らず、貴勢の爲に奪われず、耕犂の爲に及ぼさざれしむべし(一本に所謂五患は、溝渠、道路、村落を避け、井窯を遠ざく。)。五患旣に愼んで、則ち又地を鑿ること必ず四五丈に至り、石に遇えば必ず更に之を穿って、水潤を防ぐ。旣に葬っては、則ち松脂を以て棺槨に塗り、石灰にて墓門を封ず。此れ其の大略なり。若し夫精畫するときは、則ち又審らかに思慮するに在り。其の火葬(一に焚に作る。)する者は、已むことを得ざるに出づ。後遷す可からずして就いて同じく葬る(一に焚に作る。)。年祀浸遠くして、曾高辨ぜざるに至るも、亦誠を盡くすに在り。各々棺槨を具えて之を葬るに、須く夢寐蓍龜を假りて決すべからず。葬の穴、尊者中に居し、昭を左にし穆を右にして、次後は則ち或は東或は西、亦左右相對して穴を啓く。出母は合葬せず、亦合祭せず。棄女家に還るは、殤の穴を以て之を葬る。




葬法決疑

古者聖人制卜葬之禮、蓋以市朝遷變、莫得預測、水泉交浸(一作侵。)、不可先知、所以定吉凶、決善惡也。後代陰陽家流、競爲詭誕之說、葬書一術、遂至百二十家。爲害之大、妄謬之甚、在分五姓。
【読み】
古聖人卜葬の禮を制するは、蓋し市朝遷變、預め測ることを得ること莫く、水泉交浸(一に侵に作る。)、先知す可からざるを以て、所以に吉凶を定め、善惡を決するなり。後代陰陽家の流、競って詭誕の說を爲して、葬書の一術、遂に百二十家に至る。害を爲すこと大に、妄謬の甚だしき、五姓を分かつに在り。

五姓之說、驗諸經典、本無證據。古陰陽書亦無此說。直是野俗相傳、竟無所出之處。惟堪輿經黃帝對天老、乃有五姓之言。且黃帝之時、只有姬・姜二三姓、其諸姓氏盡出後代。何得當時已有此語。固謬妄無稽之言。其所謂五姓者、宮・商・角・徵・羽是也。天下萬物、悉配屬之、行事吉凶、依此爲法。至如以張・王等爲商、武・庾等爲羽、是則同韻相求。及其以柳姓爲宮、以趙姓爲角、又非四聲相管。其閒亦有同是一(徐本一作二。)姓、分屬宮・商、複姓數字、徵・角不辨。都無憑據、只信其臆說爾。
【読み】
五姓の說、諸を經典に驗ぶるに、本證據無し。古の陰陽の書にも亦此の說無し。直に是れ野俗相傳えて、竟に出る所の處無し。惟堪輿經に黃帝天老に對うるに、乃ち五姓の言有り。且黃帝の時、只姬・姜の二三姓有って、其の諸々の姓氏は盡く後代に出づ。何ぞ當時已に此の語有ることを得ん。固に謬妄にして稽うること無きの言なり。其の所謂五姓は、宮・商・角・徵・羽是れなり。天下の萬物、悉く配して之に屬し、行事の吉凶、此に依って法を爲す。張・王等を以て商とし、武・庾等を羽とするが如きに至っては、是れ則ち同韻相求むるなり。其の柳姓を以て宮とし、趙姓を以て角とするに及んでは、又四聲相管するに非ず。其の閒亦同じく是れ一(徐本一を二に作る。)姓、分かちて宮・商に屬し、複姓の數字、徵・角辨ぜざる有り。都て憑據無く、只其の臆說を信ずるのみ。

夫姓之於人也、其始也亦如萬物之同形者、呼其白黑小大以爲別爾。後世聖人乃爲之制、因生賜姓、胙土命氏。其後子孫因邑因官、分枝布葉、而庶姓益廣。如管・蔡・郕・霍・魯・衛・毛・耼・郜・雍・曹・滕・畢・原・豐・郇、本皆姬姓、華・向・蕭・亳・皇甫、本皆子姓。其餘皆爾。不可勝舉。今若用其祖姓、則往往數經更易、難盡尋究。況復葬書不載古姓。若用今姓、則皆後代所受、乃是吉凶隨時變改也。人之分宗、譬如木之異枝。木之性、有所宜之地也。取其枝而散植之、其性所宜、寧有異乎。若一祖之裔、姓音不同、同葬一地、遂言彼凶而此吉、決無是理。設有人父本宮姓、子以功勳更賜商姓、則將如何用之。今二人同言、則必擇其賢者信之。葬禮聖人所(徐本所作新。)制、五姓俗人所說。何乃舍聖制而從俗說。不亦愚乎。
【読み】
夫れ姓の人に於る、其の始めは亦萬物の形を同じくする者、其の白黑小大を呼んで以て別を爲すが如きのみ。後世聖人乃ち之が制を爲して、生に因って姓を賜い、土に胙[むく]いて氏に命ず。其の後子孫邑に因り官に因り、枝を分かち葉を布いて、庶姓益々廣まる。管・蔡・郕[せい]・霍・魯・衛・毛・耼[たん]・郜[こう]・雍・曹・滕・畢・原・豐・郇[しゅん]の、本皆姬姓にして、華・向[しょう]・蕭・亳[はく]・皇甫の、本皆子姓なるが如し。其の餘も皆爾り。勝げて舉す可からず。今若し其の祖姓を用いば、則ち往往に數々更易を經て、盡くは尋究し難からん。況んや復葬書に古姓を載せざるをや。若し今の姓を用いば、則ち皆後代受くる所、乃ち是れ吉凶時に隨って變改せん。人の宗を分かつは、譬えば木の枝を異にするが如し。木の性、宜しき所の地有り。其の枝を取って之を散植せば、其の性の宜しき所、寧ろ異なること有らんや。一祖の裔、姓音同じからずして、同じく一地に葬るが若き、遂に彼凶にして此れ吉と言わば、決して是の理無し。設し人父は本宮姓、子功勳を以て更に商姓を賜うこと有らば、則ち將如何にか之を用いん。今二人同じく言わば、則ち必ず其の賢者を擇んで之を信ぜん。葬禮は聖人の制する所(徐本所を新に作る。)、五姓は俗人の說く所。何ぞ乃ち聖制を舍てて俗說に從わん。亦愚ならずや。

昔三代之時、天下諸侯之國、卿大夫之家、久者千餘歲、其下至數百歲不絕。此時葬者(徐本葬者作亦。)未有五姓也。古之時、庶人之年不可得而見矣。君卿大夫、史籍所可見者、往往八九十歲、百歲者不少矣。自唐而來、五姓葬法行於世矣。數世百歲之家鮮矣。人壽七八十歲者希矣。苟吉凶長短、不由於葬邪、則安用違聖人之制而從愚俗所尙。吉凶長短、果由於葬邪。是乃今之法、徒使人家不久長、壽命短促、大凶之道也。進退無取。何足言哉。
【読み】
昔三代の時、天下の諸侯の國、卿大夫の家、久しき者は千餘歲、其の下は數百歲に至って絕えず。此の時葬る者(徐本葬者を亦に作る。)未だ五姓有らず。古の時、庶人の年は得て見る可からず。君卿大夫、史籍に見る可き所の者、往往に八九十歲、百歲の者少なからず。唐自りして來[このかた]、五姓の葬法世に行わる。數世百歲の家鮮し。人壽七八十歲の者希なり。苟に吉凶長短、葬に由らざらんやとならば、則ち安んぞ聖人の制に違って愚俗の尙ぶ所に從うことを用いん。吉凶長短、果たして葬に由らんや。是れ乃ち今の法は、徒に人家久長ならず、壽命短促ならしめて、大凶の道なり。進退取るべき無し。何ぞ言うに足らんや。

夫葬者藏也。一藏之後、不可復改。必求其永安。故孝子慈孫、尤所愼重。欲地之安者、在乎水之利。水旣利、則終無虞矣。不止水一事、此大概也。而今之葬者謂、風水隨姓而異。此尤大害也。愚者執信、將求其吉、反獲其凶矣。
【読み】
夫れ葬は藏むるなり。一たび藏むるの後は、復改む可からず。必ず其の永安を求む。故に孝子慈孫、尤も愼み重んずべき所なり。地の安からんことを欲する者は、水の利に在り。水旣に利なれば、則ち終に虞り無し。止水の一事のみ、此れ大概なり。而るに今の葬る者謂く、風水は姓に隨って異なり、と。此れ尤も大なる害なり。愚者執信して、將に其の吉を求めんとして、反って其の凶を獲るなり。

至於卜選時日、亦多乖謬。按葬者逢日食則舍於道左、待明而行。是必須晴明、不可用昏黑也。而葬書用乾艮二時爲吉。此二時皆是夜半。如何用之。又曰、己亥日葬凶(徐本凶作大凶。)。今按春秋之中、此日葬者二十餘人、皆無其應。宜忌者不忌、而不宜忌者反忌之。顚倒虛妄之甚也。下穴之位、不分昭穆、易亂尊卑。死者如有知、居之其安乎。如此背謬者多矣。不欲盡斥、但當棄而勿用、自從正法耳。
【読み】
時日を卜選するに至って、亦乖謬多し。按ずるに葬る者日食に逢えば則ち道の左に舍して、明くるを待って行くといえり。是れ必ず晴明を須って、昏黑を用う可からず、と。而るに葬書に乾艮の二時を用うるを吉とす。此の二時は皆是れ夜半なり。如何ぞ之を用いん。又曰く、己亥の日葬れば凶(徐本凶を大凶に作る。)、と。今按ずるに春秋の中に、此の日葬る者二十餘人、皆其の應無し。宜しく忌むべき者忌まずして、宜しく忌むべからざる者反って之を忌む。顚倒虛妄の甚だしきなり。穴を下すの位、昭穆を分かたざれば、尊卑を亂り易し。死者如し知ること有らば、之に居して其れ安んぜんや。此の如き背謬の者多し。盡く斥[さ]すことを欲せず、但當に棄てて用うること勿くして、自ら正法に從うべきのみ。


記葬用柏棺事
【読み】
葬に柏棺を用うる事を記す

古人之葬、欲比化不使土親膚。今奇玩之物、尙保藏固密、以防損汚。況親之遺骨、當如何哉。世俗淺識、惟欲不見而已。又有求速化之說。是豈知必誠必信之義。且非欲其不化也。未化之閒、保藏當如是爾。
【読み】
古人の葬、化するが比[ため]に土をして膚に親づかしめざらんことを欲す。今奇玩の物すら、尙保藏固密にして、以て損汚を防ぐ。況んや親の遺骨、當に如何にすべきや。世俗の淺識、惟見ざらんことを欲するのみ。又速やかに化せんことを求むるの說有り。是れ豈必ず誠にし必ず信ずるの義を知らんや。且つ其の化せざらんことを欲するには非ず。未だ化せざるの閒、保藏當に是の如くすべきのみ。

吾自少時、謀葬曾祖虞部已下、積年累歲、精意思索、欲知何物能後骨而朽。後聞、咸陽原上有人發東漢時墓、柏棺尙在。又韓修王城圯、得古柏木。皆堅潤如新。諺有松千柏萬之說。於是知柏最可以久。然意猶未已。因觀雜書、有松脂入地、千年爲茯苓、萬年爲琥珀之說。疑物莫久於此、遂以柏爲棺、而塗以松脂。特出臆計、非有稽也。不數月、嵩山法王寺下郷民、穿地得古棺。裹以松脂。乃知古人已用之矣。
【読み】
吾れ少かりし時自り、曾祖虞部已下を葬らんことを謀って、年を積み歲を累ね、意を精しくして思索して、何物か能く骨に後れて朽ちることを知らんと欲す。後に聞く、咸陽原上に人東漢の時の墓を發く有り、柏棺尙在り、と。又韓王城の圯[い]を修して、古の柏木を得。皆堅潤にして新たなるが如し、と。諺に松千柏萬の說有り。是に於て柏最も以て久しかる可きことを知る。然れども意猶未だ已まず。因りて雜書を觀るに、松脂地に入って、千年にして茯苓と爲り、萬年にして琥珀と爲るという說有り。此より久しきこと莫からんことを疑って、遂に柏を以て棺と爲して、塗るに松脂を以てす。特に臆計に出て、稽うること有るに非ず。數月ならずして、嵩山法王寺下の郷民、地を穿ちて古棺を得。裹むに松脂を以てす。乃ち知る、古人已に之を用うることを。

自是三十四年、七經葬事。求安之道、思之至矣。地中之事、察之詳矣。地中之患有二、惟蟲與水而已。所謂毋使土親膚、不惟以土爲汚、有土則有蟲。蟲之侵骨、甚可畏也。世人墓中多置鐵以辟土獸。希有之物尙知備之。蟲爲必有。而不知備、何也。惟木堅縫完、則不能入。求堅莫如柏、求(徐本求作欲。)完莫如漆。然二物亦不可保。柏有入土數百年而不朽者、有數十年而朽者。人多以爲柏心不朽、而心之朽者、見亦多矣。(後闕。)
【読み】
是れ自り三十四年、七たび葬事を經る。安きを求むるの道、之を思うこと至れり。地中の事、之を察すること詳らかなり。地中の患え二つ有り、惟蟲と水とのみ。所謂土をして膚に親づかしむること毋かれというは、惟土を以て汚るとするのみならず、土有れば則ち蟲有り。蟲の骨を侵すこと、甚だ畏る可し。世人墓中に多く鐵を置いて以て土獸を辟く。希有の物すら尙之に備うることを知る。蟲は必ず有りとす。而るに備うることを知らざるは、何ぞや。惟木堅く縫完きときは、則ち入ること能わず。堅きを求むるは柏に如くは莫く、完きを求むるは(徐本求を欲に作る。)漆に如くは莫し。然れども二物も亦保つ可からず。柏土に入ること數百年にして朽ちざる者有り、數十年にして朽ちる者有り。人多く以て柏の心朽ちずとすれども、心の朽ちる者、見ること亦多し。(後闕く。)


作主式(用古尺。)
【読み】
主を作る式(古尺を用う。)

作主用栗、取法於時月日辰。趺方四寸、象歲之四時。高尺有二寸、象十二月。身博三十分、象月之日。厚十二分、象日之辰(身趺皆厚一寸二分。)。剡上五分爲圓首、寸之下勒前爲頷而判之。一居前、二居後(前四分、後八分。)。陷中以書爵姓名行(曰故某官、某公、諱某、字某、第幾神主。陷中長六寸、闊一寸。一本云長一尺。)、合之植於趺(身出趺上一尺八分、幷趺高一尺二寸。)。竅其旁以通中、如身厚三之一(謂圓徑四分。)、居二分之上(謂在七寸二分之上。)、粉塗其前、以書屬稱(屬謂高曾祖考、稱謂官或號行。如處士秀才幾郎幾翁。)、旁題主祀之名(曰孝子某奉祀。)。加贈易世、則筆滌而更之(水以灑廟牆。)。外改中不改。
【読み】
主を作るに栗を用い、法を時月日辰に取る。趺は方四寸、歲の四時に象る。高さ尺有二寸、十二月に象る。身の博さ三十分、月の日に象る。厚さ十二分、日の辰象る(身趺は皆厚さ一寸二分。)。上五分を剡[けづ]って圓首と爲し、寸の下前を勒して頷と爲して之を判つ。一は前に居き、二は後に居く(前は四分、後は八分。)。陷中には以て爵姓名行を書して(故の某の官、某の公、諱は某、字は某、第は幾く神主と曰う。陷中は長さ六寸、闊[ひろ]さ一寸。一本に云う、長さ一尺、と。)、之を合わせて趺に植[た]つ(身趺の上に出ること一尺八分、趺を幷せて高さ一尺二寸。)。其の旁らに竅して以て中を通し、身の厚さ三の一の如くにして(圓徑四分を謂う。)、二分の上に居き(七寸二分の上に在るを謂う。)、其の前に粉塗して、以て屬稱を書し(屬は高曾祖考を謂い、稱は官或は號行を謂う。處士秀才幾く郎幾く翁というが如し。)、旁らに祀に主たるの名を題す(孝子某奉祀と曰う。)。贈を加え世を易うるときは、則ち筆滌して之を更む(水以て廟牆に灑ぐ。)。外は改むれども中は改めず。






祭禮(羅氏本有此、諸本皆無之。恐未必先生所著。姑附於此。)
【読み】
祭禮(羅氏本に此れ有り、諸本に皆之れ無し。恐らくは必ずしも先生著する所にあらず。姑く此に附す。)

四時祭
凡祭、灑掃廳事、設几案於階下、設盥盆帨手巾。祭前一日、視滌濯、五更起、安排如法、具時果竝菜三飣或五飣、盞盤匙筯訖、次設香卓、次設盥盆茅縮。更祭服、焚香請曰、孝孫某、今以仲春之祭、共請太祖某官、高祖某官、曾祖某官、祖某官、考某官、降赴神位。奠酒焚香跪。執事者過酒、左手把盤、右手以酒澆酹
(徐本酹作酬。)於灌盆茅縮處、俛伏興、再拜、左避位、遂行獻。執事者注酒、下食二味、或一味、隨人家貧富。頃之再拜。亞獻如前、三獻如前。事畢、焚香曰、祭事已畢。揖執事者徹饌。祭祖妣亦如前式。
【読み】
凡そ祭には、廳事を灑掃して、几案を階下に設け、盥盆帨手巾を設く。祭の前一日、視て滌濯し、五更に起き、安排法の如くにして、時果竝びに菜三飣[てい]或は五飣、盞盤[さんばん]匙筯「しちょ」を具え訖わって、次に香卓を設け、次に盥盆茅縮を設く。祭服を更め、香を焚いて請いて曰く、孝孫某、今仲春の祭を以て、共[うやうや]しく太祖某の官、高祖某の官、曾祖某の官、祖某の官、考某の官に請いて、神位を降赴す、と。酒を奠り香を焚いて跪く。執事の者酒を過ぎ、左の手に盤を把り、右の手に酒を以て灌盆茅縮の處に澆酹[ぎょうらい](徐本酹を酬に作る。)し、俛[ふ]し伏し興きて、再拜して、左に位を避けて、遂に獻を行う。執事の者酒を注ぎ、食を下すこと二味、或は一味、人家の貧富に隨う。頃[しばら]くあって再拜す。亞獻も前の如くし、三獻も前の如くす。事畢わって、香を焚いて曰く、祭事已に畢われり、と。執事の者を揖して饌を徹す。祖妣を祭るも亦前式の如し。

始祖(冬至祭)
祭始祖、灑掃廳事、如時祭。只設一位、以妣配。祝執辭、出主人之左、東向讀之曰、維年月日、孝遠孫某、敢昭告於某氏之祖妣。今以陽至之始、追惟報本、禮不敢忘。謹備淸酌庶羞之奠。尙享
(徐本享作饗。)。三獻如前式。
【読み】
始祖を祭るには、廳事を灑掃すること、時祭の如くす。只一位を設けて、妣を以て配す。祝辭を執って、主人の左に出て、東向して之を讀んで曰く、維れ年月日、孝遠孫某、敢えて昭らかに某氏の祖妣に告す。今陽至るの始めを以て、本に報ずることを追い惟って、禮敢えて忘れず。謹んで淸酌庶羞の奠を備う。尙わくは享けたまえ(徐本享を饗に作る。)、と。三獻前式の如くす。

先祖(立春祭)
祭先祖者、自始祖而下、高祖而上、非一人也。故設二位曰、維年月日、孝遠孫某、今以生物之始、恭請先祖祖妣以下、降居神位。餘如前式。
【読み】
先祖を祭る者は、始祖自りして下、高祖よりして上、一人に非ず。故に二位を設けて曰く、維れ年月日、孝遠孫某、今生物の始めを以て、恭しく先祖祖妣以下に請いて、神位を降居せしむ、と。餘は前式の如し。

(季秋祭)
祭禰曰、孝子某、今以成物之始、恭請考君某官、妣某官某封某氏、降居神位。餘如前式。
【読み】
禰を祭るには曰く、孝子某、今成物の始めを以て、恭しく考君某の官、妣某の官某の封某の氏に請いて、神位を降居せしむ、と。餘は前式の如し。


参考文献
『和刻本漢籍 二程全書』(中文出版社)
『二程集』(里仁書局)